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投資は知的で格好いい社会貢献(藤野英人) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

2016/4/5

「投資とは両親が娘の嫁入り用の桐(きり)たんすを作るために桐の木を育てるようなもの。投資先の会社も愛情と時間をかけて育てなければならない」

昔、日本では女の子が生まれると桐(きり)の木を植えるという習慣がありました。桐の木が成長したら切って、女の子のお嫁入りに桐たんすにして、花嫁道具として持たせました。娘の幸せを願う両親の愛情の表れなんですね。

桐は成長が早い。苗から15~20年後にたんすを作ることができるくらいの成木になります。桐は「木と同じ」という字を書きます。草のごとく成長が早いのに木のように見える、ということだそうです。

桐たんすはどの時代もそれなりに高価なものなので庶民がおいそれとは買えません。そこで、苗から植えて、時間をかけて材料そのものを育てていったわけです。手間暇をかけて、雨の日も風の日も大切に育てました。そこには娘への愛情もたっぷり詰まっているに違いありません。

実際に桐の木を育てて娘をお嫁に出すのにはそれなりの時間がかかります。かつて女の子は10代後半でお嫁に行くことが多かったのかもしれませんが、それにしても20年近い歳月があるわけです。その間には家族にもいろいろな変化があります。昔は病気で亡くなる人も少なくありませんでした。お父さんとお母さんが不仲になったり、環境の激変で収入がほとんどなくなったりすることもあったでしょう。

そのようなことを乗り越えて、桐の木を切って、桐たんすに変えていくわけです。桐の木自身も病気にかかったり、天候によって枯れたりすることもあります。女の子も桐の木も「育てていく」作業が必要です。

この桐の木を植えていくことが私の考える投資です。ここで言いたいポイントはいくつかあります。

1)投資は愛である

2)投資は時間をかける必要がある

3)投資は我慢が必要である

4)投資は育てることである

桐の木を育てていくためには、木を育てようという意思と愛情が必要です。またそこには娘への愛があります。育てていくには愛情が最大の肥料だと思います。また途中で切ってしまうと、まさに元も子もなくなります。早く切ってしまったら成木にはなりません。時間をかけていく必要があるのです。

それが私が考える「投資の本質」です。投資とは桐たんすを作るために桐の木を育てるようなものなのです。

このような話をよく私は個人投資家向けセミナーでお話しします。そうすると必ず、このような反論があります。

「藤野さん、この話は美しすぎる。それは理想論だしきれいごとだ。投資というのはお金でお金を稼ぐ行為だし、投資とはそもそも悪ではないか」。実際にそのような質問をするとうんうん、とうなずくような人もたくさんいます。投資とはお金でお金を稼ぐ行為で、はしたない行動だと思っている人はとても多いのです。

そこで私がお伝えするのはこうです。

「そのように投資を考えるのは個々人の自由です。しかし、投資はお金をお金で稼ぐ行為だという考えはあなたの考えです。投資をどのように考えてもいいけれども、投資をきれいなものにするのも汚いものにするのもあなたの考えと行動ですよね。投資を悪にしているのは、あなたの心ではないですか」

投資とは知的で格好いい社会貢献だ、というのが私の考える投資のあり方です。もちろん、投資はその逆だ、という考え方もあるでしょう。

私たちは投資をするときに多くの会社訪問をします。社長や会社の役員、経営者にたくさん質問をして、意見交換をします。工場に行くことも多く、現場の人とも対話をします。そして、それらの会社の長期的な成長シナリオを聞いて、世の中のためになる会社を発見するわけです。世の中のためになる会社は、多くの人がその商品やサービスを気にいるので、売り上げと利益が上がります。当たり前ですが、顧客の支持や満足がない会社が成長することはありません。

会社自身がそれぞれの会社の桐の木を育てているのです。私たち投資家にとっては会社そのものが桐の木です。そのような桐の木をファンドの中でたくさん育てていくことが私たちの考える投資です。私たちが運用している「ひふみ投信」「ひふみプラス」という株式投信は運用してから間もなく8年が経過します。桐の木にたとえれば、まだまだ伸び盛りの段階です。

おかげさまで過去、数々の賞を受けて、とてもよい成果を上げています。なぜそのようなことができたか。それは、私たちの考える投資が桐の木を育てていくようなことであると考えて、徹底的に会社を調べて投資を通じて応援してきたからだと思います。

この考え方を押し付ける気持ちはまったくありませんが、このような考え方もあるんだということを知っていただけるとうれしいです。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏と楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が交代で執筆します。
藤野 英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。「JF中小型オープン」は1年間の上昇率219%を記録。驚異的なパフォーマンスを上げ、「カリスマファンドマネジャー」と呼ばれた。2000年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス創業。CIOに就任。09年取締役、15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。著書に「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社)など多数。

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