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1999年にフランスの自動車大手、ルノーと資本提携、見事に復活を遂げ、グローバル化のお手本とされる日産自動車。カルロス・ゴーン社長の"女房役"を務め、現在は産業革新機構の会長兼最高経営責任者(CEO)を兼務する志賀俊之副会長にグローバル人材の育成方法やグローバル企業で活躍するための条件を聞いた。

 日産は人材のダイバーシティー(多様化)を進めていますね。

「マーケティングや財務、法務などの専門分野には外国人社員が多い。経営幹部は51人いる執行役員のうち約4割にあたる23人が外国人で、11の国籍のメンバーがいる。4割というのはだいたい幕内の外国人力士と同じ割合らしい。ただし、ビジネスの世界に外国人枠はない。日本人は実力で上位をめざさなければいけない」

日産自動車副会長 志賀俊之氏

日産自動車副会長 志賀俊之氏

グローバル人材をどう育成していますか。

「日産は開発やマーケティングなどの機能ごとに、グローバルとローカルで人材を管理して育成している。グローバルに活躍できると判断した人材は幹部会議で審査し、次にどういう仕事を与えるかを決める。発掘して抜てきし、チャレンジさせて評価する。これを繰り返すことで、社員が仕事を通じて昇格のチャンスをつかんでいく仕組みだ」

「日本企業は優秀な人材を部署の秘蔵っ子として抱え込んでしまいがちだ。これでは特定の部署である程度育ったとしても、結果的にタフな経験が少なくなる。優秀な人材は意識的に他の部門を経験させ、鍛えながら育てていく」

人材の見える化ですね。

「『キャリアコーチ』と呼ぶ人材発掘の専門担当を置いて、いろいろな会議に出て優秀な人材を発掘している。以前はカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)が社内で『これは』という人物を見つけては、写真を会議室の壁に貼りだしていた。こうした取り組みを15年続けている。部長クラスや若手の役員はかなり層が厚くなってきた」

日本人は英語でのコミュニケーションが障壁になるケースも多いです。

「暗黙の了解に慣れている日本人は、文化や考え方の違う人に自分の考えを伝えることがそもそも苦手だ。それを英語でやるのは二重のハードルになる。日産は外国人がひとりでも加わる会議は英語で行うが、必要な場合は通訳を加える。企画会議などでは細かな表現の違いが重要になることも多い。言葉の問題で日本人が萎縮したり、意図が伝わらなくて議論が思わぬ方向にずれたりすることは避けなければならない」

日本人と外国人で仕事への意識に違いを感じますか。

「日本人は周囲からある程度評価されはじめると、自分に出世のチャンスがあるんじゃないかと考えて守りに入ってしまいがちだ。傷つかないように上手に仕事をこなし、泥仕事を避けるようになる。それではグローバルの競争に勝ち残れない」

「外国人が目いっぱいリスクをとって大きな仕事に取り組もうとするのは、常に自らのキャリアのトラックレコードを塗り替えようと意識するからだ。同じ会社で最後まで勤め上げることは考えず、成果をひっさげて次のキャリアにつなげていく。これが成果の差につながるところで、日本人がリーダーシップを発揮しにくい理由でもある。『大過なく出世できれば』という考え方はもはや通用しない」

グローバル企業で活躍するための心がけとは。

「まずは組織のなかで明確な目標を持つことだ。漫然と『仕事ができる人間になりたい』というだけでなく、海外法人のトップをやりたいとか、本体のCEOをめざすとか。目標ができればそれに対して知識とスキルを磨かなければいけないし、修羅場の経験も必要だ。タフな仕事から逃げずにチャレンジしてほしい」

「日本人は仕事の約束を守り、プロセスを考えて結果を出す実行力はきわめて高い。英語のスキルや意識の部分で負けてしまうとすれば非常に残念だ。やはりそこは競争で、勉強して自らを鍛えるしかない」

志賀俊之氏(しが・としゆき)
1976年大阪府立大学経済学部卒、日産自動車入社。主に海外営業畑を歩み、企画室で仏ルノーとの提携を推進。2000年常務執行役員、05年最高執行責任者、13年副会長。15年6月から産業革新機構会長兼最高経営責任者(CEO)を兼ねる。

(中山修志)

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