荒れ相場に強い銘柄探る ベータ値活用でリスク抑制

世界景気の減速懸念や円高進行などを背景に、2016年に入ってから株式相場は乱高下を繰り返している。好業績にもかかわらず相場全体に引っ張られる形で下げている個別株も目立つ。全体に左右されずに値動きが底堅い銘柄を見分ける方法はあるのか。参考になるのが「β(ベータ)値」という指標だ。

ベータ値は個別株の動きが相場全体とどの程度相関があるかをみるものだ。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの指数と同じ動きなら「1」。1より大きければ相場全体よりも値動きが大きく、1より小さくなるほど変動が小さくなる。

例えば、日経平均を基準にした場合、日経平均が1%上昇するとき、ベータ値が2の銘柄の株価は2%上昇することになる。反対にベータ値が0.5の銘柄は0.5%しか上昇しない。ベータ値がマイナスなら相場とは反対の方向に動くことを示す。ベータ値は3年、5年などさかのぼる期間によって数値は異なる。個別銘柄のベータ値は日本経済新聞の電子版などで確認ができる。

一般にベータ値が低いとされるのは食品や医薬品など景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄だ。実際、日経平均の調整色が強まった過去90日間を対象にしたベータ値をみると、山崎製パンが0.39、サントリー食品インターナショナルが0.50と、食品株の底堅さがうかがえる。ファミリーマートやエービーシー・マートなど一部の小売り株もベータ値が低い。

逆にベータ値が高いのは景気敏感株。自動車株をはじめとする輸出関連株や、市況関連株などだ。輸出比率の高いマツダは1.53、鉄鋼市況の低迷に直面する神戸製鋼所は1.40などと高い。スマートフォン(スマホ)減速の波を受けるアルプス電気も1.55と高めだ。これらの銘柄は年明け以降の下げ相場で日経平均以上に株価が大きく下落したことを意味する。

ベータ値は今後の相場がどのような方向に動くかを踏まえて活用することが重要だ。アベノミクス下の上昇相場では高ベータ値の銘柄の方が高いリターンを得られた。足元の相場が方向感を欠くなか、今後も選挙をにらんだ経済対策や世界景気の影響を受けて不安定になるとの見方も多い。ロータス投資研究所代表の中西文行氏は「ベータ値の低い銘柄を保有しておくと、リターンを安定させることが期待できる」と指摘する。

先々、相場が本格的に反転するとみて高いベータ値の銘柄を買う場合は、想定に反して相場が下がれば損失が大きくなるリスクを考慮する必要がある。また高ベータ値銘柄は業績動向など個別材料により大きく反応する傾向がある。3月期決算発表が今後本格化するが、株価のチャート分析などに詳しい公認会計士の足立武志氏は「決算発表時はベータ値が高い銘柄への投資は注意が必要だ」と話す。

ベータ値は使いこなせれば、リスクを抑えた運用に役立つが、過去の株価からはじき出した数字なので、将来、値動きが変わる可能性もある。相場の先行き不透明感が高まっている局面では「高ベータ株と低ベータ株を半々ずつ持つのも一つの手」(中西氏)だろう。(福井環)

[日本経済新聞朝刊2016年4月2日付]

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