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家電製品の新潮流 特産品連携やストーリーで売る 日経BPヒット総研 渡辺和博

日経BPヒット総合研究所

2016/4/7

パナソニックが2016年6月1日に発売する炊飯器「SR-SPX6」。銘柄米41種類に合わせて炊き方を調整する
日経BPヒット総合研究所

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を斬るコラム「ヒットのひみつ」。今回のテーマは、家電製品です。地方の食材に合わせたレシピを提供する調理家電、デザイン性に優れた加湿器など、こだわりのものづくりを売りにする家電製品が増えてきました。そのストーリーは消費者に届くのでしょうか。

家電製品に地域連携という新しい方向性が生まれている。全国各地の食材とコラボすることで商品の価値を高めようとするものだ。

パナソニックが2016年6月1日に発売する炊飯器「SR-SPX6」は、全国各地の銘柄米41種類について炊きかたを調整する機能がある。昨年度初めて特Aランクの評価を得た青森県の「晴天の霹靂(へきれき)」など品種に合わせて、炊飯の給水時間や加熱時間などを自動で変える。

コシヒカリやつや姫といった定番の銘柄米だけでなく、毎年のように新しい銘柄米が登場している。近年、温暖化の影響で東北や北海道など、より北の地域での開発が盛んだ。パナソニックが銘柄米の炊き分け機能を付けたのは、小売価格で10万円以上にもなる炊飯器を買う層は、食べる米にもこだわるとの考えからだ。

ふるさと納税がヒットしたりお取り寄せブームに乗ったりするかたちで都市部の消費者が地方の食材を喜ぶ市場の傾向に沿ったものだといえる。これまで、売り先として海外の特定エリアを想定した「ご当地家電」というものはあった。今回取り上げた例は国内市場、それも都市部の市場をみたものだ。

■オーブンやレンジも特産品でプロモーション

こうした動きは15年から見えはじめていた。シャープが15年7月に発売したオーブンレンジ「ヘルシオ AX-XP1WF-R」は、青森県佐井村と連携して、同村の特産品「ヒラメの豊盃粕漬け」をこのレンジで焼くためのレシピを公開し、スマホのアプリを通じて最適なレシピをダウンロードし、レンジに組み込む機能を付けた。

東芝は、電子レンジ「石窯ドーム」のプロモーションとして、全国に料理教室を展開するABCクッキングスクールと連携し、全国の各地のブロックごとにご当地の食材や名物料理などをベースにしたレシピを開発し、ユーザーに提供している。

大手家電メーカーの地域連携の試みは、商品のハード面での進化によって付加価値を付けることが難しくなっている状況の現れともいえる。ソフト面の充実であたらしく消費者にとっての価値を生み出す試みのひとつだ。

■デザインに優れた一芸家電が台頭

こうした大手の取り組みとは別に、昨年の秋からこの春にかけての家電業界の話題の1つに、デザイン性を高めた一芸家電のヒットが挙げられる。

カドーの加湿機「HH-C610S」は縦に並んだ2本のパイプ状のユニークデザインと“一芸”とした抗菌性が受けてインターネット上で口コミが広がりヒット商品となった。価格は4万5900円と超音波式の加湿機としては破格に高いにもかかわらずだ。

カドーの加湿機「HH-C610S」

また、これまで扇風機や空気清浄機で話題となったヒット商品を送り出してきたバルミューダは、単機能のオーブントースター「ザ・トースター」を発売し、2万2900円とこのカテゴリーでは他社の数倍の価格であるにもかかわらず大きな話題となった。デザインと、加湿機能を備えてトーストがふっくらと焼き上がるという一芸が評価されたためだ。

バルミューダの「ザ・トースター」

こうしたファブレスの家電メーカーはどれもシンプルな機構を持ちインテリアとしての役割も果たす分野の商品に限って勝負している。そのデザインやストーリーに消費者が共感するならば高価格でも買うだろうという戦略だ。

今後、一芸を売りにして商品が持つものづくりのストーリーを共感してもらうという考え方は、大手家電メーカーの商品にもヒントを与えるとみられる。単なる機能競争や価格競争を抜け出すために、所有する喜びを提供する工芸品のような方向である。

■こだわりのパナソニック、ストーリーは消費者に届くか

実は、冒頭に挙げたパナソニックの炊飯器はその兆しを感じる作り方をしている。IH加熱方式を採用しているのだが、この方式では本体に組み込まれたコイルと、発熱体となる内釜の隙間を精密に制御しないと加熱に微妙なばらつきが生じる。ただ、アルミ合金の一枚板からプレスで成型する内釜や、多くの部品を組み立てる本体は、量産品である以上わずかな製品ごとのばらつきは避けられない。そこで同社は内釜と本体の間のギャップを0.2mm単位で調整するためのパーツを用意し、製品出荷時に1台ずつ調整するという。

おそらくそのわずかなギャップのばらつきは、炊きあがったごはんの味にどれくらい影響したか、消費者は気付かないレベルだろう。しかし、こうした職人芸的なものづくりをすることで、そのストーリーを消費者に共感してもらえれば、新たな価値となる。問題はそのストーリーが消費者に届くかどうかにある。

渡辺和博(わたなべ・かずひろ)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員。86年日本経済新聞社入社。IT分野、経営分野、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職。全国の商工会議所等で地域振興や特産品開発の講演やコンサルを実施。消費者起点をテーマにヒット商品育成を支援。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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