さあ新年度、お得な「会社の制度」の確認を経済コラムニスト 大江英樹

会社員の皆さん、いよいよ春がやってきました。春は新入社員という新しい息吹が入ってきます。また多くの企業は新年度に入るのでリセット感のある時期です。仕事の面でも気分が新たになりますが、プライベートの面でもいろいろなことを見直す良い時期といえるかもしれません。

今回は自分が勤めている「会社の制度」について確認することを提案したいと思います。日本の企業は近年、変化してきてはいるものの、いまだ従業員に対する福利厚生やサービスはかなり手厚いものがあります。そんな「制度」をあまりよく知らないという人が意外と多いのです。

例えば健康保険ですが、サラリーマンの場合は保険料を会社が半分負担しています。さらに傷病手当金という制度もあり、病気やケガで会社を休んだ場合、1年半にわたって給料の3分の2が支給されます。健康保険の場合、本人負担は実際にかかった治療費の3割ですが、高額な治療費がかかったとしても高額療養費制度で自己負担の上限が10万円を超えることはまずありません。しかも企業によっては健保組合が負担することによってさらに本人負担が少なくなるケースもあります。

こういった制度がどうなっているのかをよく調べることによって、現在入っている民間の医療保険などを減らすことができます。その分を貯蓄や投資に回すことで老後資金の準備ができるのです。

企業年金や退職金も同様です。自社の退職給付制度をきちんと理解している人は一体どれぐらいいるでしょう。公的年金に加えて自社の退職給付制度を理解しておかないと、適切に老後資金を自分で準備することはできないはずです。

不幸にして死亡した場合の備えとなる生命保険も重要です。会社に団体定期生命保険があれば、保険料はかなり安いので、それだけ入っていれば他の民間の生命保険に入る必要はないかもしれません。また、公的年金には遺族年金という制度がありますし、会社から弔慰金が出る場合もあります。そういったものを総合的に判断して必要な生命保険に必要なだけ入ればいいわけで、これによってもかなり無駄な出費を防ぐことができます。

また、個人の資産形成にあたっても会社がお金の補助や利子補給をしている場合があります。財形貯蓄などでは残高に対して一定の補助金が付与されることもありますし、従業員持ち株会などは本人の掛け金に対して10%以上も奨励金を付与しているところが珍しくありません。

マイナス金利という時代にあってはメリットが薄れつつありますが、会社からの融資制度もなお利用価値はあるでしょう。

「会社の制度」は社員の福利厚生を目的としたものなので、民間のさまざまな金融サービスに比べてかなりメリットは大きいのです。会社の福利厚生というと、契約保養所の利用ぐらいにしか目が行かない人も多いかもしれませんが、実際にはこのように幅広くメリットを受けられる制度が存在しています。

給料といった報酬以外に社員が享受できる利益のことを「フリンジ・ベネフィット」(付加給付)といいますが、日本の企業は昔に比べて小さくなったとはいうものの、やはりまだまだ有利な制度は残っています。若いうちからこうした“社員だからこそ受けられる経済的利益”をうまく活用することによって、老後に向けた資金の準備を無理なく行うことができるようになります。

新入社員のとき、あるいは年度替わりに会社からこうした「福利厚生事業」を記した冊子などが配布されることがあると思いますが、保養所一覧だけ見て、あとは放ったらかしというのではなく、新年度を機に一度きちんと読んでみることをおススメしたいと思います。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は4月21日付の予定です。
大江英樹(おおえ・ひでき) 野村証券で個人の資産運用や確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学会の会員で、行動ファイナンスからみた個人消費や投資行動に詳しい。著書に「定年楽園」(きんざい)など。近著は「投資賢者の心理学」(日本経済新聞出版社)。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。
オフィス・リベルタス ホームページhttp://www.officelibertas.co.jp/
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