深夜番組「クレイジージャーニー」 常人離れの旅人
刺激的な映像、随所に
バラエティー番組「クレイジージャーニー」(TBS系、金曜午前0時10分)は独自の視点と情熱を持って世界を巡る人々を"クレイジージャーニー"と呼び、スタジオにゲストとして招いて話を聞く。普通の人には考えられない行動力と、世界の珍しい映像が魅力だ。
世界各地のスラム街などに潜入取材をしている危険地帯ジャーナリスト(丸山ゴンザレス)や、1年の約半分を手つかずの自然が広がるアラスカで過ごす写真家(松本紀生)、マサイ人の戦士の第2夫人として嫁いだ女性(永松真紀)らが登場。常人離れした旅の体験を語る。
番組スタッフがロケに同行したVTRをはじめ、ゲストが公開する写真や映像には未知の世界が広がり、衝撃を受ける。2015年の1月に特番として放送され、同年4月からレギュラー化された。放送作家や他局のテレビ関係者を含め、業界内での注目度も高い。
この番組ができたきっかけについて、演出の横井雄一郎氏は「学生時代は僕自身もバックパッカーで、見てみたいけれど怖くて行けない路地裏とかに興味があったんです」と話す。横井氏は過去には『リンカーン』、現在は『水曜日のダウンタウン』を担当しており、MCの松本人志と仕事をしてきている。
「これまでに出ていただいたゲストの方々の著書はもともと読んでいたものも多かったんですが、彼らが知る世界を好奇心旺盛な松本さんに見せたらどんな反応をするんだろうと。きっと驚くし、面白いことを言ってくれるんじゃないかと思ったんです(笑)」
ゲスト発掘のために、旅関連の本のチェックは欠かさない。俗世間とはかけ離れている価値観を持っていたり、あふれ出る思いが伝わってきたときには、「出版社に電話をするなどしてすぐに会いに行きます」。テレビに関心がなく、偏屈な人も多いが、情熱で説得する。放送からもうすぐ1年がたつ今は、番組の認知度も上がり、交渉も以前よりはしやすくなってきたそうだ。
VTRを作るときは、現実をそのまま映すようにしている。ディレクターの1人が旅に同行して撮影するときには、危険をはらむ交渉でカメラを向けられないようなときにも、音だけは録音しておく。アフリカの民族が牛の血を飲む姿や、見渡す限りのケシ(アヘン)畑など、ショッキングに映る光景も中にはある。
「僕らから見たら衝撃的かもしれないけれど、現地では日常のこと。不快かどうかのラインはありますが、規制をかけすぎたら逆に失礼じゃないかなと。牛の血はアフリカの部族では定番の栄養源ですし、日本では犯罪となることも、現地ではそうせざるをえない現実がある。それをドキュメンタリーではなく、間口の広いバラエティーでやれることに意義を感じています」
MCは松本のほかに、バナナマンの設楽統と小池栄子。ゲストとのトークでは、大自然の中でのトイレ事情など、生活感のある話題が楽しい。しゃべりのうまいMC3人が、VTRを受け身で見て、聞き手に回っているスタジオの様子も新鮮だ。「最近はゲストの体験がすごすぎて、3人とも絶句するというパターンが出てきて。"すごかったですね"ではなく、シーンと間があったあとに"はぁ?"となるときがあって、その瞬間はうれしいですね(笑)」
心がけているのは、ゲストや現地の文化をリスペクトすること。海外ロケでは日本の常識が通用しないことも多いが、ゲストのネットワークを借りて、安く安全にロケをするノウハウも蓄積されてきたという。視聴者層は、20~30代が中心で、特に男性が多い。「今はいい意味で刺激的なものを出せているかなと。この味わいを薄くするのは嫌ですね。今の強度をブレさせずに作っていきたいです」
(「日経エンタテインメント!」4月号の記事を再構成。敬称略、文・内藤悦子)
[日経MJ2016年4月1日付]
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