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パリの共働き夫も、家事は嫌い

共働きでも子だくさん パリで働く妻と夫のリアル(後編)

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NIKKEI STYLE

出生率2.01、24~49歳の女性の就業率80%超。フランスの共働きカップルはどのように仕事と家庭の両立を実現しているのだろうか。後編では、家事育児分担の実態と夫の本音、男女役割意識の変遷を探った。

毎週日曜、11歳を筆頭に3人の子どもを育てるマリオン・オレットさん(37)は、1週間の家事プランを立てる。ファストフード会社で管理職を務めており、家事プランを立てておけば「1週間、仕事に集中できる」という。

「色の濃い洗濯ものは火曜日に洗い、白物は水曜日……」

「月曜から金曜の今週のメニューは……」

「子どもの手伝いは、次男がお皿を置く係、長女は片付ける係……」

「ベビーシッター代は1日30ユーロ(約3750円)だから今週分の150ユーロを用意して……」

夫のオリビエ・オレットさん(38)も金融機関の管理職として忙しい日々を送る。二人の家事育児の分担を尋ねたところ、いきなり論争が始まった。

「洗濯は私しかしないし、1週間分の買い物も私。ベビーシッターさん、掃除の人の手配も私。妻:夫は6対4くらいでしょ」とマリオンさんが言うと、オリビエさんは猛反論。

「君は、月3回くらい出張があるじゃないか。そのとき子どもの面倒をみるのは僕だ。それを考えると、5対5だ」

渋々受け入れたマリオンさん。フランスでは男性が家事育児を担うイメージがあるが、それでも3歳未満の子どもがいる共働き家庭では、妻の家事育児時間は夫の約2倍である(下の図)。ただし、日本では6歳未満の子どもを育てる共働き夫婦を見ると、妻の家事育児時間は夫の6倍に上る。

「まさか。現代の家族でも?」と驚くマリオン。

「日本人と結婚すればよかった」と笑うオリビエ。

夫婦の家事育児分担をめぐる論争は、他の家庭でも繰り広げられた。研究者同士のカップルで事実婚のまま8歳、6歳、2歳と3人の子どもを育てるアマンディン・シェレイベルさん(38)と、ジェラミー・ジャクボウイッチさん(37)。

「思うに、僕が2割で、彼女が8割くらいかな」とジェラミーが言うと、すかさずアマンディンが「1対9くらいじゃないの」と返す。彼の担う2割の中身を尋ねたところ「末の子をお迎えに行って、それからお風呂に入れて……」と、ここで言葉が詰まる。

「まあ、子育ては半々だから、2対8でいいわ」と笑うアマンディン。

どこの家庭でも、女性のほうが家事育児の負担は大きい。だが、さほど大きな不満が聞かれないのは、そもそも家事負担が大きくないからだ。男性が子供の送り迎えのどちらかを担い、料理をするのは珍しくない。経済的に少し余裕のある家庭なら、掃除はヘルパーに頼み、夕方はベビーシッターにお迎えと夕食づくりを頼んでいる。

日本では幼い子供のいる共働き家庭というと、妻が仕事に家事育児に奔走するイメージがあるが、パリではそうした悲壮な姿は見られない。フランスではそもそも、仕事時間が短い。

法定で定められている労働時間は週35時間で、残業を含めても週48時間までとされている。裁量労働制の管理職は、週35時間を超えて働くケースがほとんどだが、その分、法定による年5週間の有給休暇に上乗せされ、年間6~7週ほど有給休暇がとれるケースが多い。しかも有給休暇の消化は法律で定められているから、皆しっかり休む。夏休みは3週間ほど連続でバカンスを楽しみ、クリスマス休暇は2週間、その他、季節ごとに1週間の連続休暇を取るのは、ごくごく一般的なことだ。

それに加えて、女性の家事育児の負担が小さい。男性も家事育児を担うことに加えて、家事外注費が安くて利用に抵抗感がないことも要因だろう。仕事をする「有償労働時間」と家事育児をする「無償労働時間」の合計をOECD諸国で比較すると、男女ともにフランスはもっとも短く、日本は最も長い(下の図)。日仏で出生率に大きな開きが生じる理由は、こうしたところにも伺える。

ところで、男性も家事育児を担うことで「仕事と家庭の両立」という悩みを抱えることになる。大学に勤めるジェラミーさんは、第三子を迎えに行くため毎日18時ごろ職場を後にする。子どもが寝た後に仕事をすることもあるが、どうしても集中力は落ちてしまう。「十分仕事をしているか分からない」という葛藤を抱える。毎年夏のバカンスは3週間ほどとるものの、パソコンを持参して仕事をしてしまう。「インターネットがつながらないと空気がないくらい困ってしまう」という。

「家事育児は女性がしなくては」という意識も残る

本記事の前編では、子育てのために週4日勤務を選ぶのは大半が女性であり、職場で男女差が開く要因のひとつとなっていることを紹介した。実は家庭においても、週4日勤務は男女の役割分担を固定化することにつながるようだ。

マイリス・フィジェルさんの夫ギョーム・フィジェルさん(40)は金融機関の上級管理職。二人は、グランゼコールと呼ばれるエリート養成校の同級生だ。卒業と同時に二人とも最初から管理職として就職し、社会人としては同じスタートを切った。ところが、フルタイムでバリバリ働く夫と、出産後は週4日勤務を続ける妻との間で収入の差は開き、妻の現在の収入は夫の2分の1以下にとどまる。その分家事育児の分担は2倍以上だという。

ただし妻の側に聞くと、「子どもと一緒にいることが私の喜び」と葛藤はさほどない。「彼にとっては社会的地位が大切だけど、私にとって仕事はそれほど重要ではない」(マイリスさん)。一方の夫に聞くと「(家計のために)妻が稼ぐ必要があるわけではないけど、何があるか分からないからセキュリティー上、二人で働くことは大切だ」と言う。「それに仕事をしているほうが妻も華やいでいられるから、働いてほしい」と続ける。

地方公務員のデルフィーヌ・ベルランさん(47)と夫のジャック・ベルランさん(46)もまた同じ大学の同級生だった。夫は交通システムを設計・製造販売するシストラの管理職で、収入は妻の3倍に及ぶ。

「まずは彼の仕事が第一、家計を支えているから。でも私も仕事を通して成長したいから働かないという選択肢はなかった」とデルフィーヌさん。夫に聞くと「実は彼女には専業主婦として家にいてほしかった。僕の母親も完全に専業主婦だったしね。でも彼女が仕事をしたいなら尊重する、幸せであってほしいから」と言う。

夫婦で同じ大学を出ても、妻が出産を機に週4日勤務を続けるうちに、いつの間にか「家計の中心は夫が担う」ことになる。そして「いくら男女平等であると頑張っても、子どもが病気のときは母親が面倒をみるし、女性のほうが家事もする」(マイリスさん)ことを受け入れている。仕事もするけど家事育児もしなくてはという意識は、女性のほうが強いのだ。

70年代、フランスで男女平等を求めて戦った親世代とは違い、30~40代のカップルは、ゆるやかな「男女役割分担」をさほど抵抗なく受け入れて、子育てをしながら無理なく仕事を続ける道を選んでいるように映る。

「専業主夫」を受け入れるのは難しい

女性が子どもを産んでも働き続けるのは当たり前のフランスであっても、男性のほうが「稼ぎ手は自分だ」という思いは強い。では、もしも妻が海外転勤となったらどうするのか。パリで話を聞いた4組のカップルの夫は、いずれも「専業主夫としてついていくなんて考えられない」と首を横に振った。金融機関で部下60人を持つギョームさんは「私にとっては、社会的地位も大切だ」という。シストラで管理職を務めるジャックさんは「僕の部下は1000人だから」と誇らしげな表情を浮かべた。フェミニズムの嵐が吹き荒れたフランスでも、マッチョな精神は根強く残っている。

では、女性社員のキャリア支援にとりわけ力を入れるフランス企業ではどうだろう。女性の海外赴任の事例を聞いてみた。

ダノンでは、出産休暇から戻った後にキャリアが上がっていくよう「タレントデビュー」の取り組みを世界各国で行っている。そうした施策の波に乗ったのが、現在、エビアンのブランド戦略を担当するディレクター、イザベル・サルタン-ガセットさん(38)。同社で社会起業家の支援を手がけていたとき、西アフリカ・セネガル赴任を前に妊娠が分かった。夫のほうに仕事を辞めてもらって夫婦でセネガルに渡り、現地で第一子、そして第二子を出産。夫は現地で仕事をみつけて再就職したという。「家族と共に生活ができたうえ、セネガルで昇格するチャンスも手にした」とイザベルさんは満足げだ。

アクサ生命の日本法人で執行役員を務めるアンソフィー・ルースさん(51)は、子ども3人を「専業主夫」の夫とともに育てる。末っ子の12歳の息子に障がいがあるため、夫婦でとことん話し合って決めたという。執行役員として重責を担うアンソフィーさんは、毎晩8時ごろまで仕事をする。帰宅したら、料理好きの夫の手料理が用意されている。「もう20年もフライパンを握ったことがない」と笑うが「洗い物は私の担当」だとか。

夫は、弁護士やフランス語教師の資格を持つものの、日本ではなかなか生かす場面がなく、スポーツ協会の会長などボランティア活動をしている。夫婦で話し合った役割分担とはいえ「専業主夫は複雑なようだ」とアンソフィーさんは言う。たまに夫婦げんかになると、「僕のやりたいことを止められている」「君はアクサで稼いでいるから」といったせりふが出ることもあるという。それでも「息子がここまで成長できたのは、彼のおかげ」と感謝の言葉を口にする。12歳の息子も、食事の前にお皿を出すといった役割分担をこなせるようになってきたと目を細める。

「私たちは特別な例」だとアンソフィーさんは言うが、同社にはもう一人、パリから赴任している女性管理職がいる。ザズィ・エスメラルダさん(39)の場合は、他の会社に勤める夫の日本赴任に合わせて、アクサに日本での勤務を願い出たところ、日本法人でブランド&クリアコミュニケーション課シニアスペシャリストとして迎えられることになった。子育て中の女性管理職が海外赴任をする例は少しずつ増えている。そのとき、夫婦はそれぞれのキャリアをどうするか。会社はどんな配慮をするのか。フランスのカップルも企業もまた、新たな課題を抱えている。

子どもを産んでも「失うもの」が少ない

子どもを育てながら仕事を続けることに、不安やためらいはなかったか――。

パリで子どもを3人育てながら共働きをする女性たちに聞いたところ、答えは100%「ノン」。質問の意味がよく分からないという戸惑いの表情すら見られた。

『パリの女は産んでいる』の著書がある、パリ在住の翻訳家でエッセイストの中島さおりさんによると「子どもを産んでも仕事を辞めなくなったのは、80年代のこと。今の子育て世代は、先輩たちも普通にやっていることで当たり前だと思っている」という。さらに「子どもと家にいるだけでは退屈だ」というせりふを耳にすることも珍しくなく、「専業主婦は格好悪い」といったイメージまであるという。

先述したように、そもそも仕事時間が日本より少ないから、両立はさほど難しくない。加えて週4日勤務といった短時間勤務が浸透している。これが職場や家庭での男女差につながりがちだという課題はあるものの、バランスのとれた生活を支えているのは事実だ。家事育児の外注費用も低く、女性がすべてを抱え込んで奔走することも少ない。加えていうなら、出産を機に「お父さんとお母さん」に変わる日本の夫婦と違い、いつまでも「男と女」でいようとするカップルのあり方にも違いがある。

ロレアルで化粧品Vichyインターナショナルのマーケティングを統括する事業部長を務めるミリアム・ベッカー-シュナイダーさん(42)は、毎週土曜の夜は3人の子供をベビーシッターに託して、夫と「恋人気分で」デートをする。ディナーを楽しんだ後、映画を見にいくこともある。子供たちは「アメを食べながら好きなアニメを存分に見せてもらえるから、大喜びでお留守番をする」と笑う。

よくよく考えると、フランスの女性は子どもを産んでも「失うもの」がさほどない。子どもを産んで諦めたものを聞くと「週末のスポーツ」「友達とスパに行くこと」といった答えも聞かれたが、それほど大きな悩みではない。翻って日本をみると、職場でのキャリアの中断、育児を一手に引き受けることでの物理的・精神的な負担、一人の時間が持てない、女性として見られなくなる……など、女性は子どもを持つことで様々なものを失うことになる。

「仕事も子育ても」という選択肢をどうしたら前向きに捉えることができるのか。不安やためらいを拭い去ることができるのか。パリのカップルたちから見えてきたことが、ひとつのヒントになりそうだ。

(淑徳大学教授、ジャーナリスト 野村浩子)

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