マネー研究所

Money&Investment

守りに強いバランス型投信 金利低下で成績悪化も

2016/4/2

 1本のファンドで様々な資産に分散投資するバランス型投資信託は、値下がりリスクを抑えて安定したリターンが期待できるというのがうたい文句。世界の市場が大荒れだった1、2月は、損失を嫌う投資家の期待に応えられたのか。運用成績を点検してみた。

 新興国景気の減速や米景気への先行き不安、原油安の長期化などを背景に、年初から世界の資産市場は大きく揺れた。日経平均株価は年明けから2カ月間で3000円下落、円の対ドル相場は7円ほど上昇し、多くの投信は運用成績が急速に悪化した。

 グラフAはこの間の分類別にみた投信の基準価格の騰落率だ。日銀のマイナス金利導入を機に、相場が盛り上がった国内不動産投信(REIT)と国内債券で運用する投信は上昇し、国内外の株式型は2ケタの下落と明暗を分けた。

 バランス型の下落率は株式型の半分以下。複数資産に投資して値動きのブレを抑えるという分散効果はそれなりに発揮できていた。

 中でも抵抗力をみせたのが、市場環境に応じて資産配分比率を変える可変型のバランス型投信だ。アセット・アロケーション型ともいわれ、下落率は4.8%と、配分比率を変えない固定型を2ポイント近く下回った。

 では具体的にどんな可変型の投信が健闘したのか。楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストに主なファンドを挙げてもらった(表B)。

 多くのファンドに共通するのは、相場の局面に応じて資産配分を大胆に変更する点だ。例えばリアル・リターン・ファンドは株式の組み入れ比率を9割程度から2割程度に上げ下げする。昨年来、運用チームはリスク資産相場は過熱気味とみて、株式の持ち高を減らして米国の長期債にシフトしたのが奏功した。

 バランス・イノベーションは運用モデルに従い日次で資産配分を見直している。株式組み入れ比率はゼロになることもある。

 下げ相場への抵抗力をみるうえでは「余分なリスクを負っていないかも重要なポイント」(篠田氏)。これらのファンドは大半が為替の変動リスクを避けるため、外貨資産の運用に為替ヘッジを活用し、円高の影響を吸収した。

■金価格上昇が寄与

 投資する資産の選択も結果を大きく左右した。スマート・ファイブは国内外の株式、債券に加え金が運用対象で、金価格の上昇が大きく寄与。スリーウェイオープンはもともと国内債券の比重が高く、マイナス金利導入後の債券相場の上昇が追い風になった。

 可変型に踏ん張ったファンドが多かったのは、値下がりリスクが嫌いな投資家には喜ばしい結果といえる。ただ、注意が必要なのは、これらの多くが資産の目減りを避けることを意識した「守りに強い」ファンドである点だ。逆に資産価格の上昇局面では相場に追いつけず、リターンが限定的になるケースもある。

 その一例が、一定期間の基準価格の下落率を一定範囲内に抑えるという「下値抑制型」ファンド。昨年来の相場下落局面で確かに下げは限定的だったが、その後の相場の戻りを取れず、基準価格をじりじりと切り下げているものもある。守りには強くても「攻めに弱い」ファンドの典型だ。

 バランス型投信を購入する際は、そのファンドが投資している資産の中身やリスク水準、値動きの特徴をしっかり理解したうえで選ぶ必要がある。

 独立系投信コンサルタントの吉井崇裕氏は、「バランス型投信は一段と運用が難しくなっている」と指摘する。問題なのは資産の中で大きな比重を占める債券だ。他の資産との相関が低く、ファンド全体のリスクを抑制し、さらに安定的な収益源になるという重要な役割を果たしてきた。

 ところがマイナス金利政策の導入で今では日本や一部欧州の国では長期国債もマイナス金利。債券の利息収入は期待しにくく、値上がり余地も乏しくなっている。この結果、多くのバランス型は今後、リターンが低下していく懸念がある。

 個人投資家はどう対応したらいいのだろう。1つの方法が運用期間の長期化だ。リターン低下を時間で補うという考え方で、1年や2年で結果を求めず、5年、10年単位で資産を増やすことを心掛けることだ。

■運用1本に絞らず

 一方、吉井氏が提案するのは運用をバランス型1本に頼らず、他のファンドを組み合わせる方法だ。

 その一例を示したのがグラフC。可変型のトレンド・アロケーション・オープン(トレアロ、三菱UFJ国際)と、野村グローバル・ロング・ショート、AR国内バリュー株式ファンド(みずほ投信投資顧問)という2本のヘッジファンド型投信に資金を3分の1ずつ振り向ける。

 ヘッジファンド型はバランス型と異なる値動きをすることが多く、運用リスクを抑えるとともに、リターンも補完する。吉井氏の試算では、この3本に過去4年間、等金額投資すると、リスクはAR1本に投資した時の半分以下で、年率リターンは3.4%とトレアロ単独のリターンを0.5ポイント強上回った。

 超低金利からマイナス金利の世界に移り、資産運用はますます難度が高まっている。個人にとっては難儀な時代だが、ここで運用をあきらめ資金を預貯金に放置していては資産は増えない。資産運用は一段の工夫と努力が求められている。(編集委員 北沢千秋)

[日本経済新聞朝刊2016年3月30日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL