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がんになって考えたこと 坂本龍一さん

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

2年前に中咽頭がんと診断され、集中治療・療養に専念していた音楽家の坂本龍一さん(64)が仕事に完全復帰し、米アカデミー賞(監督賞・撮影賞・主演男優賞)に輝いた「レヴェナント:蘇えりし者」や「母と暮せば」の映画音楽や東日本大震災復興支援のためのコンサート(東北ユースオーケストラ)など精力的な音楽活動を再始動させている。

突然のがん宣告、人生観・音楽活動、映画音楽の秘話……

突然のがん宣告をどう受け止め、集中治療・療養期間をどう過ごしていたのか?

病気や治療は人生観や音楽活動になんらかの変化をもたらしたのか?

このほど来日した坂本さんが「東北ユースオーケストラ」の合宿所(千葉県長柄町)で単独インタビューに応じてくれた。

「自分にとっては第二の人生のスタート」「気がついたら病気になる前よりもずっとタフになっていた」――。坂本さんは2年連続で米アカデミー賞監督賞を獲得したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督や山田洋次監督との共同作業の舞台裏や秘話を織り交ぜながら、現在のありのままの心境を約3時間にわたって告白した。インタビューの内容を前編・後編の2回にかけて掲載する。

もともと健康には自信、のどに異物感があり検査

――2014年6月下旬に病院で中咽頭がんと診断されました。どう受け止めましたか。

「実は自覚症状が以前からあったんです。のどに異物感というか不快感がありました。そこで2014年3月ごろに日本で人間ドックに入って検査を受けたんですが、特にのどに異常は見つからなかった。だから自分がまさかがんだとは思ってもいませんでした。その後、のどの異物感が増してきたのでニューヨークの専門医で検査してみたら、中咽頭がんだと宣告されてビックリしてしまった。健康には人一倍気を使ってきたつもりなのでかなりショックでした」

「健康にはもともと自信があったんです。それまで大病をしたこともないし、若いころは暴飲暴食して、徹夜しても全然平気だったので、自分の体は頑丈にできているんだと思い込んでいた。40歳を過ぎて目が遠くなってきたので初めて老化を自覚し、食事とか整体とか、人に説教をするくらいに健康には気を使ってきましたから、自分ががんになるなんて考えもしなかった。がんになった原因は自分なりに調べてみましたが、無数にあって特定はできません。免疫力は高い方がいいけれど、それだけではがんは防げない」

数カ月の集中治療、天から与えられた休養期間

――放射線治療を拒否するという報道もありましたが。

「どうしてそうなるんでしょうね。笑ってしまいますが、まったく誤解です。ニューヨークの病院で治療を数カ月受けました。のどが患部ですからうまく食事ができず、体重が最も多いときよりも10キロ以上減りました。ヒゲや髪の毛も部分的に抜けてしまった。でも治療効果が良好でしたから、集中治療は予定通りで終わり、いまは経過を観察しています。病院では入院せずに治療しました。なかには通勤しながら治療を受ける人もいるほどです。その方が入院するよりも病気からの回復が早いような気がします」

――食事や健康法、ライフスタイルは変えましたか。

「免疫力の回復を最優先しています。治療で痛めつけられた体をどう回復させるかは個人に任されていて特に食事制限もなかった。『とにかく体重を戻せ、肉をたくさん食べろ』なんて言われる。高タンパクをとって筋肉をつけろということでしょう。僕はがんと診断された直後から完全菜食主義にして、その後は少し緩めて魚介類まで食べています。でも肉は食べません。いまのところ体調は良好。仕事を始めてから約40年間は休む暇がなかったので、これは天から与えられた休養期間だと思うことにしました」

山田監督と小百合さんから突然オファー、「僕でいいんですか?」

――でも病み上がりに、映画音楽の大きな仕事が重なりましたね。

「本当はもっと時間をかけてゆっくりと復帰したかったんです。結果として、映画の大作2つをほぼ並行して作業することになってしまい、本当に大変でした。映画の仕事はいつ来るか分かりませんから、これは天命だと思います。山田洋次監督から『母と暮せば』の音楽をオファーされたのはがんが発覚する2カ月前。初対面でしたが、東京のコンサート会場の楽屋に吉永小百合さんと一緒にいらして、いきなり依頼されたので面食らいました」

「もともと僕は『寅さん』シリーズが大好きだったし、山田監督と吉永さんにぜひにと頼まれて、それを断れる日本人なんていないんじゃないでしょうか。でも僕は元松竹の大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』に出演し、映画音楽も担当した"大島組"の人間でしょう。『僕でいいんですか?』という感じでした。大勢のファンがいる全国区の山田監督に比べたら、僕なんてぜいぜい新宿区くらいなものですから、その大役が自分に務まるかどうか自信がなかったんです」

アカデミー賞監督からラブコール、病み上がりに重なった大仕事

――「レヴェナント:蘇えりし者」の映画音楽はどんなふうにオファーが来たんですか。

「病気療養中にイニャリトゥ監督から突然、電話がかかってきて次の映画の音楽を頼まれたときには相当に悩みました。しかし、一生に1度あるかどうかの機会ですから受けることにしました。でも『母と暮せば』を2015年4月から、『レヴェナント:蘇えりし者』を同5月からほぼ同時に制作し始めて、頭の中が混乱して変になってしまいそうだった。こんなに仕事が集中したのは人生で初めての経験です。『よりによってこんなすごい大きな仕事が病み上がりに同時に来るなんて……』と思いましたが仕方ありません」

――イニャリトゥ監督とは面識はあったんですか。

「昔から僕の音楽のファンだったらしくて、カンヌ国際映画祭で監督賞に輝いた『バベル』(2006年)でも僕の曲を使ってくれていた。『バベル』の後にロサンゼルスで僕のコンサートに家族連れで来てくれたのが顔を合わせた最初です。僕もイニャリトゥ監督のことがデビュー作から大ファンだったし、特に監督賞など4部門で米アカデミー賞をとった『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)には本当に度肝を抜かれましたから、彼から頼まれたときはとてもうれしかったです」

ガンの再発を覚悟した瞬間……、「第二の人生」「以前よりもタフに」

――映画音楽の制作はどう乗り切ったのですか。

「こんなに大変な仕事をしたら、絶対にガンが再発して死んでしまうかもしれないと覚悟しました。イニャリトゥ監督の要求は厳しくて、『メロディーではなくて、音の重なりを欲しい』なんて注文してくる。仕事の分量も膨大だった。まだ病気から回復しきっていない僕は1日8時間しか集中力がもたず、時間が足りなくなり、ノイローゼ気味になってしまった。『もうクビにしてくれ』という感じでした。よく乗り切れたと思います。途中で信頼できる助っ人を頼みましたが、あの時点では自分の持てる力を精いっぱい出し切ったと思っています」

「病気になる前は体力も精神力も能力も過剰なくらい自信を持っていましたけど、今回の仕事はその自信をすっかりなくしてしまうくらい大変でした。映画のなかの主人公のレオナルド・ディカプリオさんと同じように、大雪原をハアハアとあえぎながら戻ってきたという感じ。でも気がついたら、以前よりもタフになっていた。だから病気から復帰した現在は『第二の人生がスタートした』という気持ちでいます」

(後編は4月2日に公開予定です)

なぜ「田中さん」は西日本に多いのか (日経プレミアシリーズ)

著者:小林 明
出版:日本経済新聞出版社
価格:918円(税込み)

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