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キングペンギン オスのペアも動員!子育ての悩ましさ

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NIKKEI STYLE

今年に入り、相変わらず乱暴な天気に翻弄されました。2月には日中大雨が降り、夜になり急速に気温が下がり、雨が凍り付きました。僕も初めての体験でしたが、車が1cmくらいの厚さの氷に包まれました。ワイパーも全部ラッピングされたようになりまるで氷細工のようになりました。

  さて動物園では、飼育している動物は基本的にすべての種の繁殖を目指します。これは絶滅危惧種とか希少種、人気動物とかということではありません。動物はその動物が住んでいる環境が自分たちの暮らしていく場所なんだと認識しないと次の代に引き継ぎません。つまり繁殖をしません。その代で絶えていきます。

動物園は所詮ヒトのエゴで動物を閉じ込めている場所で、その原罪は持ち続けるのですが、預かった命に対する責任として、繁殖を目指します。その動物が少なくとも飼育環境を自分の暮らす場所だと認めてくれた結果だからです。

その意味で日本人という生き物の暮らす環境はどうなのでしょう?舵取りはうまくいっているのかな、なんて考えてしまします。動物園では人工授精などの最新技術を駆使して繁殖を目指すいわば力業の繁殖の方向性もあるのですが、今一度、本来の繁殖の意味に立ち戻り飼育環境を見返す必要がある場合も多くあるように思います。

主導権はメスに

今年も昨年生まれたキングペンギンのヒナ2羽が無事に成長しています。一羽はキウイのような茶色の産毛が抜け大人の仲間入りです。もう一羽も4月下旬には大人の仲間入りをします。キングペンギンは集団の中でペアを形成して繁殖をします。卵は一つだけしか産みません。

巣を作らずに脚の上に卵を載せ、お腹の皮膚を布団のように卵に掛けて温めます。54日くらい抱卵してヒナが孵(かえ)ります。ペアは交代で抱卵します。抱卵を交代してもらうと魚を獲りに海に向かいます。ペンギンの育雛(いくすう)はペアの協働がなければ成立しません。一羽で抱卵育雛をこなすことは餌を取りに行かなくてもすむ飼育下であっても、親鳥の負担が重すぎます。

さてここで問題が生じます。旭山動物園では十数羽の繁殖可能個体がいるのですが、メスの数が少ないのです。オスが多い方が効率的にペアーの形成ができると考えがちですがそうはいきません。ペアーの形成は基本的にどの生き物も雌に選択権があります。オスはいくらたくさんいても増えることはできません。メスしか生むことはできないから当然と言えば当然です。

あのライオンも狩りをするのはメスの仕事で一見オスがメスを支配しているように見えますが、群れを持てるオスは限られています。オスは激しく時として相手を殺して群れを持てるのですが、その原因はメスを巡る争いです。メスがオスを争わせているといえます。メスにするとより強いオスを受け入れることで、より強い子を育め、安定した縄張りが維持できることになります。

アンコウという魚は性成熟したオスが見つからないため謎の生き物でした。未成熟な小さなオスしかいないのです。性成熟したメスの腹部には小さなイボ状の膨らみがありそれがオスでした。小さなオスはメスの体にかみつき、メスの体液だけを栄養源とします。まるでパラサイト(寄生虫)です。

そのうちにあらゆる機能が退化してメスの皮膚に覆われてしまい最終的には精巣だけになってしまいます。メスの産卵時に射精するだけの何ともオスとしては悲しいですが、オスの究極の姿です。

メスにしたら出会いや、駆け引きを必要としないので合理的です。メスが自立してメスだけで生きていけるようになるとメスがどんどん強くなると…そう考えるとアンコウだからと他人事ではなくなるかもしれませんね。子を産むメスはとても強いのです。

話が脱線しましたが、キングペンギンもメスに選択権があり、僕から見て何が基準なのか分からないのですが、旭山では産卵可能なメスはすべて同じ個体=個体識別番号No.2を選ぶのです。No.2はこっちにふらふらあっちにふらふらと交尾をするのですが、抱卵を交代するメスは一羽だけです。

つまりNo.2としてはペアーの相手は一羽だけなのです。そうなると他のメスは一羽だけでの抱卵となり消耗が激しく命の危険もあるため、その卵は取り上げて孵(ふ)卵器に入れ孵化させヒトが育てる(人工育雛)ことになります。

オス同士のペアも抱卵

しかし人工育雛をした個体は、成長してもヒトに対して求愛したり、キングペンギンとして生きることが難しくなってしまいます。人工育雛は最終手段です。

そこで目をつけたのがオス同士のペアの存在です。キングペンギンは野生では時に数万羽の集団(コロニー)を作り繁殖をします。密集することでヒナが受ける寒さのリスクやトウゾクカモメなどに襲われる確率を下げています。オスが争ってメスを獲得する方法では密集集団は維持できません。メスに選ばれなかったオス同士が擬似的にペアを組むことで争いを避けコロニーが維持される一面があるからなのだと僕は考えます。

旭山動物園でも毎年数組のオス同士ペアが誕生します。お互いに相手がメスだと信じていると思われます。お互いに相手をメスだと思い交尾をしようとするからです。いつまでたっても卵は現れずいつの間にかペアは解消していきます。

そこで結果的にオスのいないメスが産卵するだろう時期に合わせて、オス同士ペアのどちらかに擬卵(偽物の卵)を無理矢理抱かせます。するとどうでしょう、卵を抱かされたオスは相手の産んだ卵をもらえたと勘違いし、相方はオオオ!ついに愛の結晶を生んでくれたと勘違いし 、本物のペアのように交代で抱卵をはじめるペアが現れます。

本物の卵は孵卵器に入れ、ひなが卵の殻を内側からくちばしでつつく「嘴(はし)打ち」が始まった段階で、擬卵とすり替えます。するとオオオ!愛の結晶が孵(かえ)ったとなります。一昨年までに2羽のヒナがオス同士ペアに育てられました。もちろんすべてのオス同士ペアがこのように上手に育雛できるわけではなく、途中での失敗例もあります。

キングペンギンは無防備なというか不思議な一面があって、ヒナが成長しヒナだけの集団(クレイシ)を形成するようになると親子の認識が厳格になり、自分の子にしか餌を与えない(半消化状態の魚を吐き戻す)のですが、卵や小さなヒナの頃は、卵が入れ替わろうがヒナが入れ替わろうが全く気にせずに抱卵や育雛を続けます。

さらに何らかの原因で卵や雛を失った個体などは、無差別に卵やヒナを欲しがる傾向があります。抱卵交代や育雛交代の時などに誤って卵やヒナが親から離れてしまうと、他の個体も含めて奪い合いになり卵が割れてしまったりヒナが圧死してしまうことがあります。これは飼育下でも野生化でも認められる現象です。巣すら構えない占有する意識の希薄さが密集集団を維持する重要な要素なのかもしれません。

今シーズンのヒナの1羽はまたまた変則的なペアが無事に育て上げています。旭山としては待望のNo.2ではないオスNo.10を選んだメスが現れたのです。しかしそのメスは産卵に至りませんでした。そこで擬卵を与えたところ見事抱卵をし抱卵交代も順調でした。

やはりNo.2を選び、単独メスでの産卵となった個体の卵を、今回はメスがまだ未成熟個体であることが不安材料としてあったため、孵卵器でヒナを孵し孵化数日は人工で育て体力をつけてからから、擬卵と交換しました。心配をよそに母性というか親性が目覚めペアでしっかりと育雛ができました。

人工育雛ではなくキングペンギンがキングペンギンのヒナを育てること、その当たり前のことが生き生きとした姿につながり、見る人の心を打つのだと考えます。キングペンギンの持つ習性や感性を理解し、可能性を探る日々が続きます。よりキングペンギンらしく暮らせるように。きっと終点はないのだと思います。

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