どうしても断りたいとき、角を立てずにNoを言うには
A. お互い、引き受けるのが大変なことは分かっている状況で、お願いしたり、されたりしているのですよね。働く女性が増えている現在では「仕事が忙しい」だけではなかなか断る理由にならないのが現状でしょう。
頼む側からすれば、例えば相手が「親御さんの介護を抱えている」とか、「自身の体調不良」といった事情があれば無理にお願いはできません。とはいえ、こうした事実がないのにそれを理由に断ったりしては、後に必ず墓穴を掘るようなことになるのでNGです。
お願いをする、されるというやり取りは一方通行ではありませんから、「相手の立場に立って、思いやりを持って対応する」というマナーの観点が必要になります。まずは「このようなお話をいただいて、ありがとうございます」と感謝することからスタートします。さらに「大変心苦しいのですが、今年はどうしても難しいです。お役に立てず申しわけありません」とお断りします。具体的な理由は挙げずに「今年はどうしてもやむを得ない事情があり、お受けするとかえってご迷惑をおかけしてしまう」という言い方で伝えてもよいでしょう。
ただ、役員が決まらないと相手も困るわけですから、「もしかすると、○○さんだったらお願いできるかもしれません」など、可能な範囲で代わりの候補者を提案するなど情報を提供して、相手の負担を軽減できるように協力する姿勢をとると、単に断る・断られるの関係ではなくなりますね。さらに「年間を通じてお引き受けすることはできないのですが、何かあればご協力させていただきます」と前向きの姿勢を伝えられればベターでしょう。
A. まずはできるだけ早く、現在の状況を正確に上長に伝えること。「仕事を任せてもらってありがとうございます」という言葉を添えたうえで、現状で何が難しいのかを具体的に伝えましょう。もし仕事に影響するような家庭の事情があるなら、それもきちんと伝えます。
さらに、その仕事に対して会社が求めているものは何か、自分に対して求められていることは何かをあらためて確認します。ここで重要なのは、「自分が大変だから……」という自分視点から離れて、「会社の目的を達成するためには」という観点に立つこと。この姿勢もマナーのひとつです。これによって、より建設的な議論がしやすくなります。「今の状況では組織の目標達成が難しくなる可能性がある。そのためにどうすべきか」を考えていくことです。その結果、追加の仕事におけるすべての負担が自分にくる状況を回避できる、代替案の提案につながります。
大切な心持ちは、嫌だな、大変だなと思うことに対して真っ向から拒否する姿勢をみせないこと。相手の立場や状況を考える思いやりの気持ちをもって議論することで、最終的に自分にとってもプラスとなる結果が得られることでしょう。
A. きっぱり断って、それで縁がなくなってもいい相手ならそれまでですが、そうできない相手もいますよね。子ども関係のお付き合いだったり、あるいはイベントに付き合うのは気が向かないけども、お茶を飲んで話すぐらいの関係は保ちたい、という場合も。
例えば経済的な理由で断るのも一つの方法です。子どもの学費や、家族の介護にかかる費用などを負担に感じているという方は昨今、たくさんいらっしゃいます。「お恥ずかしい話だけど、今は自由になるお金が少ないので」という言い方で断ってみては。それで相手が離れていってしまうなら、その程度の関係だったということです。
ぜひ認識していただきたいのは、「自分自身を大事にする」ということもマナーだということです。自分が無理をしてストレスをため、元気でなくなったら、相手を思いやることはできません。自分自身がどうしたいのか、自分にとって何が大切なのかを考えてみてください。
春は出会いと別れの季節。古い関係に終わりがくれば、新しい人間関係が始まる前兆です。逆も言えます。新年度から新しい人間関係が始まるにあたり、古い関係に終わりがくるということもあります。関係が終わるときには葛藤を伴うこともありますが、それを悪いことだとは考えないようにしましょう。「断捨離」ではありませんが、古いものが終わることで必ず新しい関係が始まるものです。
「断るのは悪いこと」という意識もこの際、手放しましょう。相手の立場に立ちつつ、自分の気持ちも伝えて断れば、必ず将来にプラスの関係が残っていくものです。マナーはみんなが幸せになるために存在するものなのです。
マナーコンサルタント・美道家。英国の民間企業WitH Ltd.ウイズ・リミテッド日本支社代表を務めたのち、ウイズ株式会社、HIROKO ROSE株式会社、一般社団法人マナー教育推進協会を設立。企業・一般向け研修、コンサルティングのほかTVドラマや映画のマナー指導などでも幅広く活躍中。インターネットライブマナー講座もスタート。『お仕事のマナーとコツ』(学研)、『できる大人の気くばりのルール』(KADOKAWA)など著書多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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