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バブル世代の女性3人、「佐渡」に心ひかれて

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NIKKEI STYLE

「日本海側」の日本をこよなく愛するエッセイストの酒井順子さん。縁もゆかりもない佐渡で、島の広報にたずさわる田中雅子さん。生まれ故郷の佐渡に戻り、酒造りに励む5代目蔵元の尾畑留美子さん。ともにバブル期を経験した同世代の3人がいま、佐渡にひかれる理由はなにか――。2月27日に行われたトークイベントを訪れた。

「離島」という言葉には、どこか旅人の心をくすぐる響きがある。東京23区の1.4倍の面積を持つ日本最大(沖縄本島を除けば)の離島、佐渡。豊かな自然と文化が色濃く残る島に5万8000人ほどの人たちが暮らしている。

佐渡といえば、金山やトキ、たらい船などで知られ、全国的にも知名度の高い観光地だが、いまひとつ地味なイメージがあるかもしれない。しかしそんな佐渡を愛し、その魅力にはまっているのが、エッセイストの酒井順子さん、佐渡出身の「真野鶴」蔵元、尾畑留美子さん、そして東京生まれの東京育ちながら、現在、島のPRを行う田中雅子さんだ。何が彼女たちをひきつけるのか。同世代、バブル期を経験した女性3人が、それぞれの立場から佐渡の魅力を語るイベントが開催された。

冷たい風が吹きつける2月最後の週末。会場となった下北沢の書店「本屋B&B」は立ち見客が出るほどの盛況ぶり。会場には尾畑酒造の「真野鶴」も用意され、お酒を片手に楽しめるリラックスした雰囲気のなか、トークが始まった。

生活の中に息づく伝統芸能、「陰影」の心地よさ

「この中で佐渡に行ったことがある人はいますか?」という問いかけに多くの手が上がった。これまで5回ほど足を運んでいるという酒井さんは、「佐渡はいろんな顔を持つ魅力の宝庫。癖になる島です」と言葉に力を込める。出会いは10数年前。名物の「沢根だんご」を食べてみたいと訪れたのを機に、独自の文化を持つこの地に魅せられた。

酒井さんは、佐渡の魅力はまず、豊富な食のイベントやお祭りの楽しさだと強調。なかでも印象的だったのが、地元の女性たちがそばや野菜料理をふるまうイベント、「大崎そばの会」だという。料理に舌鼓を打って終わりではない。地元の人たちが、浄瑠璃などの伝統芸能を披露してくれる。先ほどそばをふるまってくれたご婦人たちも、演者となって楽しげに踊る。しかも皆、かなりの芸達者なのだそう。

実は、佐渡は芸事が非常に盛んな場所らしい。その昔は遠流(おんる)の地であり、都から流されてきた人のなかには世阿弥など著名な芸術家も多かった。今でも島のあちこちに30もの能の野外舞台があり、能や狂言、人形芝居や鬼太鼓など、伝統芸能は島民の生活に根付いている。『夕鶴』をはじめ、佐渡を舞台に描かれた民話も多い。酒井さんが紹介したのは、お面をかぶった演者らが奇妙な踊りで五穀豊穣を願う「つぶろさし」の祭り。確かに民話の世界に入り込んだかのような不思議な雰囲気だ。

地域によってさまざまな顔を見せてくれるのも佐渡の特徴だ。黄色いカンゾウの花が咲き乱れる大野亀は「"あの世感"を持つ幻想的な場所で心ひかれる。陰と陽のような違いを感じられるのも佐渡の良さ」(酒井さん)。

日本海側が持つ独自の魅力をテーマにした『裏が、幸せ。』の著書も持つ酒井さんは、「島という閉ざされた場所だからこそ、保護された文化や地域の魅力がある。発展すればいいという時代ではなくなってきた今、日本海側が持つ"ほの暗さ"や"陰影"のようなものを、あらためて心地よいと感じる人たちは多いのではないか」と語った。

故郷への愛を発見できる場所

「真野鶴」5代目蔵元の尾畑留美子さんは、1995年に地元に戻ったUターン組。東京で映画会社の宣伝プロデューサーとして活躍していたが、「最後はどこで生きたいかを考えたとき、やっぱり佐渡しかないと思った」。現在は、地域性を生かした酒造りに打ち込むほか、2014年からは「学校蔵プロジェクト」をスタートした。少子化で廃校になった小学校を仕込み蔵として再生し、酒造りのほか、学びと交流の場として発信。毎年6月にはゲストを呼び、地方から日本の未来を考える「特別授業」と題したワークショップを実施している。

佐渡から東京に出たときは「戻らないつもりだった」という尾畑さんだが、「故郷をいったん離れたことで、その魅力に気付けた」と話す。

「佐渡が好きな理由も、嫌いな理由も"島だから"。移動は船だし、やっぱり不便。でも、嫌いなところはお金や工夫で解決できる。逆に、人や景色、文化といった佐渡の大好きなところは、お金で買えないものばかり。そう考えると、佐渡に生まれてよかったと心から思う。お金に換えられない魅力が、佐渡にはある」

尾畑さんが東京で佐渡愛を発見したように、田中さんもまた佐渡に関わることで、故郷である東京への思いに気付いた。佐渡との関わりは2年前から。佐渡市役所が募集していた広報戦略官の民間人登用に応募し、採用された。

「島のPRの仕事をするまでは、特に佐渡に思い入れはなかったけれど、実際に関わるなかでこの場所が大好きになった」。けれども、「ここに一生住むかと言われたら、やっぱり違う」と田中さんは言う。

「地元の人たちの故郷愛を間近で見るうち、自分にとっての故郷って何だろうと思うようになった。私はどこで生きるべきか、どこに思いをぶつけるべきかと考えた時に、やっぱり答えは故郷の東京だと気付いた」

外から見ることで、故郷の良さに気付くことができたという2人に対し、「東京で生まれ育ち、外に出たことがない私は故郷愛が薄いかも」と酒井さん。「一度、外へ出て故郷をみる経験は、自分の足元を確かめるために大切だと、年齢を経て思うようになった」と、かみしめるように話した。

3人の心をとらえて離さない佐渡は、自分にとっての故郷への思いを再発見できる場所。「自分らしい生き方」に思いをはせることのできる豊かさを持った土地。それが佐渡の魅力なのかもしれない。

酒井順子 
 エッセイスト。昭和41年生まれ。立教大学観光学部卒。高校在学中から雑誌『オリーブ』にコラムを執筆。平成16年『負け犬の遠吠え』(講談社)で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。平成27年刊の「裏が、幸せ。」(小学館)では、佐渡を含む「裏日本」の知られざる魅力を紹介しつつ、「一周遅れのトップランナー」としての日本海側の可能性に迫る。
尾畑留美子
 尾畑酒造専務、1892年創業の「真野鶴」5代目蔵元。昭和40年、佐渡島の旧真野町(現佐渡市)で尾畑酒造の次女として生まれる。佐渡高、慶応大法卒。日本ヘラルド映画(当時)に入社し宣伝プロデューサーとして「氷の微笑」「レオン」などを手掛ける。平成7年、酒蔵を継ぐため佐渡島に戻る。きき酒マイスター、日本酒造組合中央会需要開発委員。他、農水省、総務省などの委員をつとめる。2015年『学校蔵の特別授業』(日経BP社)発行。
田中雅子
 PRプランナー。昭和42年生まれ。都立新宿高校、早稲田大学教育学部卒。博報堂に入社後、PR専門職として大手自動車会社や化粧品メーカー、飲料メーカーなどを20年間担当。退社後、平成26(2014)年から佐渡市広報戦略官(非常勤職員)として佐渡のPRに携わる。

(ライター 西尾英子)

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