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アニメ「おそ松さん」 人気の理由を哲学者が読み解く

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日経ウーマンオンライン
 「哲学」ってむずかしいことだと思っていませんか。「哲学」とは、「ものごとの正体を知ること」。哲学者の小川仁志さんが、身近なことを題材に分かりやすく哲学の視点から読み解きます。今回は、大人気TVアニメ「おそ松さん」。ちまたを騒がす6つ子の人気に迫ります。

赤塚イズムを受け継ぐ6つ子たち

赤塚不二夫原作のアニメ「おそ松くん」が、その後を描いた「おそ松さん」としてブレークしています。6つ子とハチャメチャな脇役たちが繰り広げるナンセンスな世界観。なぜ今これがウケているのでしょうか?

もちろん元が昭和のギャグ漫画であるため、「おそ松さん」では単に6つ子たちが大きくなったという設定だけでなく、かなり現代的な要素を取り入れて、今の人たちに受け入れられるように工夫されています。

だとしてもこんな、なんのこっちゃ意味のわからないアニメが若い女性に受けているというからには、もっと深い理由がありそうです。意味のわからないものの正体を探る分析ツールとしては、哲学が最適です。なにしろ哲学は物事の本質=正体を探るのが仕事ですから。そこでこのコラムでは、「おそ松さん現象」を様々な角度から哲学してみたいと思います。

「おそ松さん」って、なんでウケてるの?

まずこの世界観全体を分析しておきましょう。つまり、「おそ松さん」がウケている要素についてです。色々あると思いますが、ここでは3つ挙げたいと思います。ナンセンス、ブラックユーモア、女子会ノリです。

まずナンセンスについて。笑いの基本はそもそもナンセンスなので、その意味では「おそ松さん」は笑いの王道を行っているといっていいでしょう。考えてみれば赤塚不二夫センセイの漫画はギャグの古典ですから、王道に決まっているわけですが。

では、どうしてナンセンスが笑いの基本なのか? それはフランスの哲学者ベルクソン※による「笑い」の定義を見ればわかります。

※アンリ・ベルクソン(1859-1941)。フランスの哲学者。生命進化の根源的な力として、「エラン・ヴィタール(生命の跳躍)」概念を提起。笑いについて論じたり、ノーベル文学書を受賞するなど多彩な才能を発揮した。

彼は、笑いの本質を「機械的なこわばり」という概念でとらえています。たとえば、走っていて石につまずいた人と、職場で椅子に座ろうとして尻もちをついた人の例を挙げ、次のようにいいます。

「職場での笑劇の犠牲者は、だから、走って倒れた人と類似の状態にある。それは同じ理由からして滑稽である。どっちの場合でも、笑うべきことは、注意深いしなやかさと生きた屈伸性とがあってほしいそのところに、一種の機械的なこわばりがある点だ」と。

つまり、もっと注意深く、柔軟に生きてさえいれば避けることのできた事態が、機械的な動作を続けたことによって、ある種の「こわばり」をもたらしたというのです。そのこわばりが滑稽なシーンをもたらすのです。言い換えるとそれは、意外性がもたらすおかしさだということができます。

だから、こう来ると思わせておいて、意外な展開をさせる。それによって、「おいおい」とか「そっちかい」と突っ込みたくなる笑いが生まれるのです。こうした笑いの基本を押さえつつ、今人気のお笑いのパロディなどを取り入れている点も、「おそ松さん」がウケている理由の1つでしょう。とにかく明るい安村さんの「はいてますよ」のパロディは、私も思わず笑ってしまいました。

職業は"ニート"です

次に、ブラックユーモアです。ニート、就活難、ブラック企業といった社会の暗い部分を笑い飛ばす痛快さ。これもウケている原因です。就職できない(あるいはしようともしない)ニートの6つ子たちの日常は、普通でいえば笑っていられる状況じゃないのですが、そこを肯定的に描いているところに、ドイツの哲学者ニーチェ※のいう能動的ニヒリズムのようなものを垣間見ることができます。

※フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)。ドイツの哲学者。人生の苦しみを「超人」思想で乗り越えよと説く。同じことの繰り返しである「永遠回帰」を克服するには、運命から逃げるのではなく、むしろそれを受け入れるよりほかないという。

ニーチェの能動的ニヒリズムは、社会に対してルサンチマン(憤り)を抱きながらも、それを受け入れることで乗り越えていこうとする思想です。どれだけ社会からはじき出されようが、図太く生きていこうとする6つ子の姿に、ニーチェ的な生き方を感じざるを得ません。社会が閉塞する中、『ニーチェの言葉』がベストセラーになったのは記憶に新しいところです。そんなニーチェ人気とも重なる現象だといっていいでしょう。

イケメン、女体化、ボーイズラブ……萌えるしかない

最後は女子会ノリです。つまり、女子同士が盛り上がるという視点で描かれているということです。6つ子は時々イケメンになって、ジャニーズ系アイドルとイメージがかぶるように工夫されています。しかも最近のお笑いもいけるアイドルです。イケメンとお笑い芸人の両方を意識させるキャラ設定になっているわけです。これは今一番人気がある男子像ですから。

下ネタや性の描き方も、まるで男子の秘密を覗き見るかのような雰囲気にしてあります。その他、ストレートにボーイズラブを描いたり、「じょし松さん」という女子会設定のネタまではさんできます。

女子会というのは、男子を「主体」ではなくあくまで「客体」にすることで、愛着の対象にしてしまう点が特徴です。つまりネタなのです。そして、あたかもアクセサリーやペットのように扱うのです。

フランスの哲学者デカルト※は、『情念論』の中で愛について三つに分類しています。愛着、友愛、献身の三つです。これでいうと、友愛が女子同士の友情の愛、献身が本当の恋愛、そして女子会ノリで男子をネタにするのが愛着に当たるでしょう。

※ルネ・デカルト(1596-1650)。フランスの哲学者。疑い得ないのは意識だけであるとする「我思う、ゆえに我あり」という言葉で有名。また、人間の知識は生まれながらに持っている「生得観念」に基づくとする大陸合理論の創始者として知られる。

デカルトによると、愛着においては、「愛の対象を自分以下に評価」し、「愛するものよりもつねに自分を選ぶ」ことになります。月曜の深夜に1人で「おそ松さん」を見るのは、疑似女子会のようなものなのです。

以上のように、「おそ松さん」が受ける要素は満載なのですが、それぞれのキャラクターやストーリーには、そこから学ぶことのできる哲学的エッセンスがまだまだ隠されています。

(ライター 尾崎悠子)

[nikkei WOMAN Online 2016年3月10日付記事を再構成]

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