表参道でアイリッシュ・ダンス 若者の支持集める力
米国の舞踊団体「トリニティ・アイリッシュ・ダンス」が7月、来日ツアーを催す。これに先立ちメンバーの一人が来日し、3月20日に東京の代々木公園と表参道で開かれた「聖パトリックの祝日」にちなむアイルランドのイベントとパレードに参加した。U2やエンヤらポピュラー音楽の大物アーティストを輩出したアイルランド。彼らケルト民族の音楽やダンスが日本で根強い人気を持つことが印象付けられた。
「私の故郷はダブリン。アイルランドではなくて米オハイオ州のダブリンです」。トリニティ・アイリッシュ・ダンスのメンバー、コートニー・ディアンジェロさん(19)は屈託のない笑みを浮かべてこう話す。ダブリンという都市があるくらい、多くのアイルランド人が移民として米国に渡った歴史がある。米国でのケルト文化の蓄積も厚いのだろう。だが彼女は「ほかにはない斬新なダンスも見せたい」と伝統に縛られるだけではないトリニティの性格も指摘する。
「念願かなって1月からトリニティで活動を始めたばかり。7月の来日ツアーが楽しみです」とコートニーさんは言う。7歳からアイリッシュ・ダンスを始め、トリニティの芸術監督マーク・ハワード氏にスカウトされた。世界選手権でトップ10に入るなど注目を集める若手ダンサーだ。彼女が参加する来日ツアーは7月8、9日のオーチャードホール(東京・渋谷)や同10日の神奈川県民ホール(横浜市)をはじめ8都市9公演開かれる。
この日、コートニーさんは代々木公園の野外ステージで女性6人組アイドルグループ「ゆるめるモ!」とともにダンスを披露した。アイルランドにキリスト教を広めた聖人の命日「聖パトリックの祝日」は3月17日だが、これにちなんで東京で開かれる恒例の「アイルランド・フェスティバル」に彼女は参加した。
彼女は東京で最もおしゃれなストリートといわれる表参道でのパレードにも参加した。日本人やアイルランド人、アイルランド系の米国人らの楽隊がケルトの伝統音楽をはじめ様々なサウンドを鳴らして表参道を行進した。一国の祭りながら、歩道からあふれそうなほどの見物客を集める人気は驚異ともいえる。
パレードでも彼女は得意のタップダンスを実演して見せてくれた。参加した様々な楽隊の音楽に合わせてステップを踏んで踊った。表参道のアイリッシュ・ダンス。新鮮な光景だ。アスファルトを踏み鳴らす姿がブランド街に溶け込む。伝統のステップに違いないが、どこかポップな乗りが醸し出される。
16世紀、イングランド支配下のアイルランド。監視兵の目を盗んで、テーブルの下の床をコツコツと足で踏みたたき、踊りのリズムを楽しんだのがアイリッシュ・ダンスの起源という。為政者の強権に対するカウンターカルチャーの伝統。U2のような大物ロックバンドを輩出し、ポップカルチャーの一翼を担い、世界中の若者の支持を集めるアイルランドの音楽やダンスの原動力は、この反骨精神にあるのかもしれない。
(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)
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