積極運用でも低コスト 投信「第3勢力」の実力編集委員 田村正之

2016/3/25

市場平均を上回ることを目指す積極運用(アクティブ)型なのに低コスト、という新しいジャンルの投信が広がり始めた。アクティブ型は一般にコストの高さが響いて長期ではインデックス(指数連動)型投信に負けがち。しかし低コストであれば勝てる可能性が高まるとの分析結果が内外でみられる。

 ピクテ投信投資顧問が2月に設定した新しい低コストのアクティブ型投信に個人投資家から注目が高まっている。ピクテが発売したのは「iTrust世界株式(i世界株式)」など3本。世界株を対象にしたアクティブ型投信では信託報酬が2%近いものも多いが、i世界株式は0.96%と半分弱だ。

 発売後1カ月強がたち、ネットでは投信に詳しい投信ブロガーなどから「そそられる」「低コストアクティブという黒船がやってきた」「情報提供が充実している」など、新規アクティブ投信では珍しく評価の声が増えている。販売金融機関の数も当初の3社から7社に拡大してきた。

コストが成績を左右

 新規設定投信は運用実績のなさが不安視されることも多いが、i世界株式と成績がほぼ連動するマザーファンドは2007年から運用実績があり、今年3月23日までの平均で指数(配当込み)を年平均で2.03%上回っている。投資家の手元に残るのは信託報酬を控除した資産だが、この成績が続くなら0.96%の信託報酬を控除した後でも指数を超過できることになる。

 運用者の腕で平均を上回ろうとするアクティブ投信だが、実際には長期では平均に負けることが多いとされる。モーニングスターの調べ()では、「国内株式・大型ブレンド」に属する投信はアクティブ型全体では5年でも10年でも、「定説」通りにインデックス型に負けている。

 しかし低コストアクティブに限ると勝率が高くなり、10年では62%がインデックス型に勝っていた。米国の類似の調査では、10年で見た勝率は低コスト投信が29.7%、高コスト投信が9.9%。全体的に日本より低いものの、やはり低コスト投信の優位性が相対的には目立つ。つまりアクティブ型がインデックス型に負けやすい大きな理由は、運用の腕というよりもコストの重さにあることが改めて認識できる。

 ピクテの萩野琢英社長は「アクティブ投信のアルファ(平均を上回る力)は実際に存在する。それが打ち消されてしまわないように、ネットを最大限活用することで思い切ってコストを引き下げた」と話している。

 低コストでも平均を上回ろうとする試みの一つがスマートベータ(賢い指数)と呼ばれる運用手法。「高配当」「最小分散」「高企業価値」など様々な切り口で銘柄を選ぶ。一定のルールに基づき機械的に運用するのでこちらもコストは低い。

 3月だけでも、4日に大和住銀投信投資顧問が信託報酬0.27%の日本株、31日のDIAMアセットマネジメントが同0.76~0.97%の日本株、先進国株、新興国株の3本と、スマートベータ投信の設定が続く。

 これまで投信は「低コストのインデックス型」「高コストのアクティブ型」という二大カテゴリーが「神学論争」のように優位性をめぐる対立を続けてきた。「低コストアクティブ」という「第3勢力」の台頭は投資家に新たな選択肢を与えている。

米バンガードの低コストアクティブ、長期で好成績

米バンガードのアジアパシフィック運用部門統括責任者ロドニー・コメジス氏

 米国で「低コストアクティブ」を多数運用しているのが巨大投信会社、バンガードだ。同社はインデックス型投信の世界最大の運用会社だが、実は資産の3割がアクティブ型。すべて低コストだ。「低コストアクティブ型投信」の意義や、投信を通じた資産形成のあり方を、このほど来日したアジアパシフィック運用部門統括責任者ロドニー・コメジス氏に聞いた。

 ――バンガードのアクティブ型投信は好成績で知られています。

 「投信評価会社リッパー社によると、15年末現在で同種のアクティブ型投信の平均に比べ、バンガードは株式投信では過去5年では91%、過去10年では97%が勝っている。債券投信では過去5年で86%、過去10年で95%の勝率だ」

 ――なぜそんなに成績がいいのですか?

 「まず第一は低コストであること。バンガードのアクティブ型株式投信の総経費率(信託報酬より幅広く経費全体を合算した数値)は年0.27%。同種のアクティブ型投信の平均である1.04%を大きく下回っている。アクティブ型投信のアルファ(超過収益)を稼ぐ力はそれほど強いものではなく、低コストでないと、アルファが食われてしまう」

 「加えてバンガードのアクティブ運用は、外部の第三者の運用会社の中から、優れた運用手腕を持つ会社と良好な関係を築き、各部門で優れたファンドマネジャーを徹底して選別している。そしてその運用に対する確かなチェックの仕組みを持っている」

資産の中心はインデックス型で

 ――低コストアクティブ投信なら資産運用の中心に位置付けていいですか?

 「資産の中心(コア)と一部(サテライト)を分けるのがコア・サテライト戦略。サテライト部分で全体の成績の上積みのためにアクティブ型を選ぶときに、低コストアクティブを選ぶことが賢明な選択になるだろう。やはりアクティブ型には市場平均に負けるかもしれないというリスクが存在するので、コアはインデックス型でいいのではないか」

 ――日本では、株式では下がったときに買う「逆張り派」が多い一方、より初心者が多い投信の分野では、上昇期にみんなでどっと買い、下げ局面では売ってしまうという残念な行動が長期的に見られます。

 「残念ながらそれは米国でも同じだ。どうしても高いときに買って安いときに売りがちだ。だからこそ専門家のアドバイスが必要だ。群集心理に惑わされないためにも、定額で買い続けるドルコスト平均法は有効な手段だ」

 ――日本では情報技術(IT)、新興国、シェールガスなど特定のテーマ型投信が次々に現れ、投資家は乗り換えていきます。

 「米国でもテーマ型を追う動きは見られるが、お薦めできない。長期的に資産を増やせる方法を考えるべきだ。株や債券などの投資対象に通貨やデリバティブ(金融派生商品)を何階にも積み重ねて投資する高コストの投信も日本で人気と聞くが、あまり良いこととは思えない」

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