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35歳、40歳、45歳……。転職市場には、ほぼ5年ごとに潮目の変化があります。特に35歳は大きな分岐点で、転職することで年収が上昇する割合が顕著に低下しはじめます。この転職市場の潮目の変化は、景況はもちろん、業界や専門領域により微妙に異なることもあり、意外な落とし穴になりがちです。

なぜ、たった5年で自分の市場価値が暴落するのか?

たとえばリーマン・ショック以降の時期に、20代後半から30代前半で転職した経験がある人であれば、転職市場での自分の市場価値が、予想以上に高かったと感じた人が多くおられます。

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先日面談させていただいた大手医療機器メーカーで経営企画職をされている39歳のAさんも、5年前に初めて転職活動をした際に、とんとん拍子で複数企業から内定が出たり、好条件の年収額が提示されたり、高根の花だと思っていた企業からオファーがかかるなど、「自分は世の中からこんなに必要とされているのか」と驚いたと振り返っておられました。

ただ、このAさんが、現在の会社の業績悪化に伴い、今年1月以降に転職活動を始められたのですが、5年前とはまったく違う状況にショックを受ける事態になっています。中途採用市場は、当時よりさらに活発化していて、Aさん自身のキャリアもミドルマネジメントとして磨きがかかっているにもかかわらず、です。5年間には、10社応募すれば5、6社は面接に進めていたものが、今回は書類通過すら難しく、結局20社以上応募して面接に進めたのが3社、しかもいずれも最終選考で不採用になってしまったということです。

経営企画が人気職種でポジションの割にライバル応募者が多いという事情や、応募している企業が、知名度が高く規模が大きいという理由も確かにあります。ポジションが上がり、以前より年収水準が上がり、希望年収が高くなったこともあります。ただ、そのどれもが5年前とそこまで決定的な違いがないため、やはり年齢による企業の視線の厳しさが背景にある、とAさんは感じています。

実際のデータを見てみると、会社員・男性の転職前後の年収変化で、「10%以上年収が上がる人」の割合は、30~34歳世代で47.2%いるのに対して、35~39歳世代では44.6%と減少しています。ちなみに40~49歳では40.3%、50~59歳では22.2%と年収増加者は年齢とともに急減していきます。(リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査2014」)

転職後の年収変化は、転職プロセスでの書類選考通過率や面接通過率とも連動するため、掛け算となって、自分の市場価値が急激に低下しているように感じてしまう構造になっています。

転職で年収が上がる人の共通点とは?

転職で年収を高められる人に共通する要素の一つに「受益者としての視点」で転職活動をしない、というポイントがあります。基本的に、「給与」と「働き」は等価交換の契約取引です。

特に、採用する企業側の視点は「この人材は自社でどんな貢献ができるのか」「いくら会社をもうけさせることができるのか」というTakeの予測がまず先にあって、そのバリューがいくらくらいの年収に相当するか、というGiveの算出をする、という傾向が強くなります。また、年齢が上がれば、将来勤続期間やポテンシャリティー(将来価値)の可能性が少なくなるため、バリュエーションがつきにくくなるという側面もあります。

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そのような企業の厳しい目線を意識した上で、自己の価値、つまりその会社への貢献可能性を説明しきれるかどうか、という点で転職後の年収の増減に差が出てきます。多くの企業が求めているのは、その業務の「遂行」を通じて得られる「成果」です。また、マネジメントレベル以上の転職には、どうしても若手のマネジメントを通じた組織成果への貢献や、即戦力として成果の即効性が求められることも多くなります。

中途採用で起こるコミュニケーションギャップの多くは、「個人としての業務遂行で、いくらの年収をもらえる会社か」と考えてくる応募者と、「組織全体の成果をどれくらい高めて利益を上げてくれる人材だろうか」と考える経営者が対面することによって発生しています。どっちもどっちで、自分の都合を優先しているようにみえますが、ミドルの転職を、売り手が多く買い手が少ない市場での「等価交換の売買契約」だと考えると、まず何かを売りたい側が価値をアピールして、買いたい側の気持ちを高めていくという順番のほうが合理的です。

突き詰めていくと、転職活動は「どんな仕事でいくらの年収か」という受益者視点ではなく、「自分が参加することで成果を大きくできる会社はないか」「自分を採用しなければ損をすることになる会社はどこか」という貢献者視点で探したほうが、新たな可能性を発見しやすくなります。

生み出せる成果が明確なほど、チャンスは広がる

専門職やエンジニアの転職の場合、ほぼ間違いなくスキルや経験を生かして転職します。多少、領域や事業、サービスが変化することはあっても、核となる経験をしっかりと生かす転職がほとんどです。また、専門職やエンジニアはスキルや資格など基準が明確なため、ほぼスペックに沿った年収相場が形成されています。

営業やマネジメントなどヒューマンスキルのウエートが高い職種は、会社や商材が変わった瞬間に過去の成功が通用するかどうかが不透明になりやすい性質があります。年収を下げないためには、業界、会社をまたいだ場合の汎用性や通用度を生み出せる成果が具体的にイメージできるように伝えていく必要がありますが、これを語れる人が極めて少ないのが現状です。逆に言えば、その説明能力を磨けば、かなり広い範囲でチャンスが広がるといえます。

「仕事と報酬」は切っても切り離せない重要な要素ではありますが、仕事や人生の価値は、決して報酬だけが決めるものではありません。転職する・しないにかかわらず、自分の人生を豊かにする収入以外の物差しを準備しておくと、いざというときに必ず役立つはずです。

 「次世代リーダーの転職学」は毎週金曜更新です。次回は4月15日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
黒田 真行(くろだ・まさゆき)
ルーセントドアーズ株式会社代表取締役
1965年、兵庫県生まれ。89年、関西大学法学部法律学科卒業、株式会社リクルート入社。2006年から13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。13年、リクルートドクターズキャリア取締役・リクルートエージェント企画グループGMを兼務した後、14年にルーセントドアーズ株式会社を設立。現在は、中途採用市場の積年の課題であった「ミドル世代の適正なマッチング」をメーンテーマと設定し、日本初となる35歳以上のミドルキャリア専門の転職支援サービスを運営している。
35歳以上の転職支援サービス「Career Release40」
http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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