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工事は続くよどこまでも 新宿駅はなぜ分かりにくい? 田村圭介・昭和女子大学准教授に聞く

2016/3/25

新宿駅南口。右手前の低層ビルがJR新南口と高速バスターミナルが一体化した「バスタ新宿」。4月4日の開業予定

 1日の利用者が日本で最も多い新宿駅。4月には南口にバスターミナルができ、ますます機能が拡充する。だが、新宿駅は複雑だ。地下空間は時に「ダンジョン(地下ろう)」といわれるほど。新宿駅はなぜ、分かりにくいのか。渋谷駅や東京駅など、駅の構造分析で知られる昭和女子大学の田村圭介准教授に聞いた。

■西新宿や新宿西口駅… 「新宿」とつく駅が10ある

奥に見える高層ビルがJR新宿ミライナタワー。JR新南口構内とミライナタワーにまたがる商業施設「NEWoMan(ニュウマン)」は3月25日に第1期がオープンする

 ――3月に『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』(SB新書)をゲームクリエーターの上原大介さんと出版しました。新宿駅の1日の利用者数は世界最大で、ギネスブックにも認定されているとか。

 「調べてみると、2007年度の数字が使われているようです。新宿駅のピークだった年で、14年度は352万人に減っています。JR各線と小田急線、京王線、東京メトロ、都営地下鉄、西武新宿線の乗降者数です」

新宿駅の地下を抜き出した「新宿ダンジョン地下マップ」。上原大介氏作成

 「新宿駅の特徴は、地下に広大な空間が広がっていること。駅でみると、新宿駅には西新宿駅、都庁前駅、新宿西口駅、新宿三丁目駅が地下でつながっています。これらの乗降者数も加えると実に390万人と、横浜市の人口よりも多い。私はこれを大新宿駅と名付けました。アメーバのように横に広がっていることが、新宿駅を分かりにくくしている一因です」

 ――確かに、新宿駅周辺には、「新宿」とつく駅が多いですね。

 「全部で10あります。新宿駅、西武新宿駅、新宿三丁目駅、東新宿駅、新宿御苑前駅、西新宿駅、西新宿五丁目駅、新宿西口駅、新線新宿駅、南新宿駅です。新宿駅だけでもJR、小田急、京王、メトロ、都営とあるのに、迷わないわけがない」

 ――新宿駅西口と新宿西口駅、なじみのない人が聞いたら間違えそうですね。西新宿駅と西新宿五丁目駅もややこしい……。

都営大江戸線には「新宿西口駅」がある。新宿駅西口と間違えやすい

 「ヨドバシカメラのテーマ曲で『新宿西口駅の前』という歌詞があります。『新宿西口、駅の前』という意味でしょうが、都営大江戸線新宿西口駅ができたことで意味合いが変わってしまいました。新宿西口駅の前には現在、ビックカメラがあります」

 ――ヨドバシカメラに確認したところ、「新宿西口駅の前、カメラはヨドバシカメラ」という歌詞だそうです。ただし秋葉原では「新宿西口駅前と、アキバのヨドバシカメラ」とアレンジしているそうです。いずれにせよ、ややこしさを象徴する話ですね。

■東西を渡る通路は3本だけ 地下の内装に工夫を

 「新宿駅が分かりにくいもう一つの理由が、東西を渡る通路が少ないことです。中央連絡通路と北連絡通路は改札内にあり、通り抜けできません。改札外を通るなら北側のメトロプロムナードという地下道か角筈(つのはず)ガードという狭いトンネル、もしくは南端にある甲州街道まで歩く必要があります」

新宿駅の東西を結ぶ角筈ガード。薄暗く天井が低い通路になっている。角筈はこのあたりの古い地名

 ――「東京ふしぎ探検隊」では以前、「構内に大空間 新宿駅、東西通路が変える人の流れ」(12年11月9日公開)という記事を書きました。JR東日本では2020年を目指して、北連絡通路を拡幅して、通り抜けられるようにするようです。でもそれまでは苦労しそうですね。改札内も「西口」と「中央西口」があるなど、分かりにくいこと極まりない。

 「今回、一緒に本を書いた上原大介さんは、丸ノ内線のホームで迷いました。出る改札を間違えたのです。丸ノ内線のホームには両端に改札がありますが、どちらも同じ内装で、見分けがつかない。思い込みで出てしまうと大変です。色を変えるなど工夫が必要だと思います」

JR新宿駅の中央西口改札前には「8差路」がある(『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』より。田村圭介氏提供)

 「JRの改札内にも、『魔の8差路』と名付けた場所があります。中央西口改札の手前にあって、そこに立つと、8つの選択肢があるんです。ホームにつながる階段、出口に向かう改札、小田急や京王への乗り換え専用の改札などです」

■新宿駅の工事、サグラダ・ファミリアより長い?

 ――以前、「新宿南口、線路上に巨大ターミナル 『大新宿駅』が実現」(12年10月26日公開)でも書きましたが、新宿は東口と西口で街の性格が大きく違います。街の成り立ちの違いも複雑な構造につながっているのでしょうか?

 「そう思います。新宿の地下を解析していくと、『田』『ラ』『み』という文字が浮かび上がってきました。『田』は西口で、副都心として幾何学的に開発されていった様子がうかがえます。『ラ』は駅の地下で、ラの左下の部分の通路がつながっていないところがポイントです。『み』は東口で、甲州街道の尾根筋に街が発展してきた歴史が垣間見えます」

新宿駅の地下は「田」「ラ」「み」の形になっている(『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』より。田村圭介氏提供)

 ――渋谷駅と比べると、新宿駅にはどんな特徴が見えましたか。

 「渋谷駅は立体的というか、球体のような構造をしています。これに対して新宿駅はアメーバのように横に広がっているイメージでしょうか」

 「渋谷駅の地下は周りの建物とそれほど連結していません。一方で新宿駅の地下は通路と建物、地下街がつながっていて、街と溶け合っている印象です」

 ――渋谷駅もそうですが、新宿駅でも工事が長く続いています。終わらない工事も新宿駅の「ダンジョン感」を高めているのではないでしょうか。

 「南口にはようやく高速バスターミナル、通称『バスタ新宿』が完成しましたが、東西通路の工事は20年まで続きます。さらには西口でも再開発が予想されていて、新宿駅は完成形がまだ見えてこない状況です」

 「スペインのバルセロナにあるガウディの『サグラダ・ファミリア』は、工事開始が1882年で2026年までの完成を目指しています。一方で新宿駅は1885年に誕生して、2020年代で完成するか分からない。新宿駅はサグラダ・ファミリアより長く工事するかもしれないのです」

 ――迷うのも当然、ということでしょうね。

(河尻定)

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