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ペット禁止なのに隣人が飼育 家主が法的対応も

2016/3/29

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Aさんは動物アレルギーがあり、ペット禁止の賃貸マンションに住んでいた。だがある日、隣部屋のBさんがこっそり猫を飼っているのを見てしまった。家主を通じて飼育をやめるように働きかけたが、Bさんは開き直り、飼い続ける姿勢をみせる。改めて家主に相談するつもりだが、どんな対応策があるのだろうか。

賃貸借契約では「ペット禁止規定」を盛り込む例が多くあります。この禁止規定は通常、有効とみなされます。ペット禁止は隣人へ迷惑をかけたり、建物を汚したりすることを防ぐ点で合理性があるからです。

禁止規定があるのにBさんが猫を手放さないという契約違反は、法的に債務不履行と呼びます。この違反を理由に家主は法的手段に訴えることができます。ただし、賃貸借契約を解除し、Bさんをマンションから立ち退かせるには一定の条件があります。

Bさんが債務不履行状態なのは確かですが、法テラスのスタッフ弁護士の浅川剛志さんは「解除が認められるのは契約違反だけでなく、借り手と貸し手の信頼関係の破壊があるか否かが問題になる」と話します。単に規定に違反しただけでなく、互いを全く信用できないほどに関係が悪化していたのかということです。

一般には「飼育をやめてと何度申し入れても無視した」とか、「猫の騒音や悪臭などで害が出ている」といった事実が積み重なることで信頼関係の破壊とみなされる場合が多いですが、具体的な条件はケースバイケースです。

猫の飼育で建物に傷や汚れがついた場合、家主がBさんに損害賠償請求をすることも考えられます。賠償請求できる損害は「猫の飼育という契約違反行為と相当因果関係がある範囲」と浅川さんはいいます。

例えば、柱を猫がひっかいてできた傷など飼育によってもたらされたと明確にわかる損害で、その原状回復に要した修理費などが考えられます。ただ、住宅という物への損害が基本であり、精神的な苦痛に対する慰謝料までは認められない例が多いそうです。

Aさん自身が直接、法的手段をとる余地もあります。ひとつはBさんに対して損害賠償を求めることです。AさんとBさんの間には契約関係はないですから債務不履行ではなく、相手の故意や過失で損害を受けたという不法行為に基づいて請求します。

家主がBさんに適切な対応をとっていない場合、Aさんが家主へ損害賠償請求することもありえます。ペット禁止規定を置いた家主は本来、借り主にペットのいない住環境を提供する義務があるのに違反している、つまり債務不履行があると考えられるからです。

ペット禁止規定は小さな取り決めにすぎないと軽視する人もいますが、契約である以上は違反した際に法的責任を問われかねないことを覚えておきましょう。

[日本経済新聞朝刊2016年3月23日付]

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