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住宅ローンの借り換え、金利固定や期間短縮を

2016/3/26

日銀によるマイナス金利政策の導入を受けて銀行の間で住宅ローン金利の引き下げ競争が続いている。変動金利型ローンに比べて金利の低下ピッチが速いのが固定金利型ローンだ。返済負担の軽減や金利上昇リスクの回避に向け、低金利の固定ローンを生かした借り換えを考える好機だ。

「3年でこんなに金利が下がるとは」と驚くのは東京都内の出版社に勤務する男性(39)。2013年4月に都内でマンションを購入、3000万円を35年の全期間固定2.25%で借り入れた。

しかしマイナス金利導入後、住宅ローン金利は急低下(グラフA)。男性は「今すぐ借り換えても数百万円は負担が減るが、今後まだ下がるかも」と悩む。

「同じぜいたくな悩みを抱える人が急増中」と住宅ローンアドバイザーの淡河範明氏は話す。借り換えは審査などの手続きに1カ月ほどかかる。ただし手続きがすんでいれば実際の借り換えまで半年ほど待ってくれることも多い。「早めに手続きをすませ、金利情勢を見ながら少し待つのも選択肢」(淡河氏)だ。

■銀行ごとに特色

住宅ローンの金利タイプは大きく3つ。同じ水準が続く全期間固定型、当初の一定期間は固定でその後は原則変動になる当初固定型、半年ごとに金利が見直される変動型だ。

現在、金利が全般に低いのは三井住友信託銀行。3月の当初10年固定は0.5%、当初30年固定は1.15%だ。信託銀行は審査が厳しめとの見方も多いが、打診する価値はある。

銀行間で金利競争が特に激しいのは当初10年固定型だ。大手3行はいずれも現在、同じ0.8%(最優遇の場合、以下同)まで下がっており、借換先の候補にする人も多い。

ただ注意点がある。当初10年の金利が横並びであっても将来、金利に差がつく可能性がある点だ(図B)。住宅ローン金利は通常、定価ともいえる「基準金利」があり、そこから一定幅を割り引いたうえで適用する。割引後の水準は「適用金利」といい、大手3行の0.8%というのもこの適用金利にあたる。

例えばみずほ銀行では全期間にわたり一律1.85%割り引かれる。一方、別の大手行では割引幅が当初10年は2.3%と大きいが、11年目以降は1.4%に縮小する。基準金利そのものもみずほ銀のほうが低い。

仮に両行とも将来11年目に基準金利をそれぞれ1%引き上げるとしよう。みずほ銀の適用金利は1.8%、もう一方は2.7%になる。割引方法と基準金利の違いで将来、大きな金利差がつく可能性がある。

■60歳時の残高考慮

ではどんな借り換え方法が適切か。住宅ローン金利はこれまで固定型の方が変動型より大幅に高かったが、最近は金利差が縮まっている(グラフA)。「低金利の恩恵を長期間、確実に得られる固定型を中心に考えるべきだ」とファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏は助言する。

まず重視したいのは収入が減る60歳時のローン残高を減らすことだ。借り換えの効果を試算したのがグラフC。3年前に固定2.25%(35年)で借りた冒頭の39歳男性がモデルだ。

全期間固定の低さが目立つ三菱東京UFJ銀行で1.47%で借り換えれば、残り32年間の総返済額(元本と利息の合計)は現在のローンより423万円減る。数十万円の諸費用を考えても軽減効果は大きい。毎月返済額は10万3000円から9万2000円に減る。

このケースで男性が60歳になる時点の残高を計算すると1124万円。できればもう少し圧縮したい。

例えば期間を25年に縮めると、より低い金利(1.39%)が適用される。毎月の返済額は現状より約8000円上がるが、総返済額は現在より620万円減らせる。60歳時の残高は520万円に縮む。

いま変動型で借りている人は将来の金利上昇リスクの軽減を重視したい。グラフDは3年前に変動0.875%で借りた設定で今後の総返済額を試算した。

金利がより低い別の銀行の変動型(大手行で0.6%強)へ借り換えるのも選択肢だが、淡河氏は「長期では2%程度の金利上昇は見込んでおく方が安心」とみる。例えば6年目以降に金利が1%上がっただけでも総返済額は一挙に3419万円に増える。

リスクを減らすには固定金利への借り換えが得策だ。例えば期間を2年縮めて三井住友信託銀行の当初30年固定(1.15%)に借り換えれば総返済額は3285万円で確定する。「金利上昇時に繰り上げ返済が可能なほど余裕資金がある人は別として、固定金利に換えてリスクを減らす好機」(深田氏)といえそうだ。(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2016年3月23日付]

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