育休後の収入減、家計の危機どう乗り越える

もうすぐ新年度。育児休業を終え、職場に復帰する人も多いだろう。ただ仕事を再開しても家計のやり繰りが厳しくなることがある。短時間勤務で休業前より収入が減る一方で、保育園の利用料など支出は膨らみやすいためだ。職場復帰後の家計の危機をどう乗り越えたらいいのだろうか。

東京都新宿区に住む会社員Aさん(33)は昨年8月、長女が1歳の時に職場復帰した。勤務時間は午前9時から午後4時までと1時間短縮。残業代もなくなり、給与は出産前に比べ月10万円ほど減った。一方、認可外保育園の利用料が月3万円、子どもが病気の際に頼むベビーシッター代など支出は膨らんでいる。「毎月の収支は赤字で貯金を取り崩している」と話す。

勤務時間短縮響く

育休明けに勤務時間を短縮したり残業が減ったりして、収入が減る人は多い。企業の人事マネジメントに詳しいヒューマンテック経営研究所(東京・中央)の藤原伸吾所長は「8時間勤務を6時間にすると、給与・賞与も勤務時間の短縮分に合わせて25%減るのが一般的」と話す。

一方、職場復帰後に支出は増えやすい。共働き夫婦から家計の相談を受けることが多いファイナンシャルプランナー(FP)の吹田朝子氏は「出産前に比べ、家計全体の支出が3割程度膨らむケースが目立つ」と話す。

復職後に負担する可能性のある費用は、まず保育園の利用料。広さやスタッフなどが国の基準を満たす認可保育所の料金は、自治体や世帯年収、子どもの年齢などによって異なる。厚労省の調査では0歳から6歳までの全国平均で月2万491円だが、世帯年収が高いと5万円以上になるケースが多い。

認可外保育所も平均は最も高い0歳児で月4万8475円だが、保育料は各事業者によって様々だ。家計の負担は一般的に認可保育所に比べて重くなりやすい。

保育園の預かり時間を超えて仕事をしたり、子どもが病気で登園できなかったりする際にベビーシッターを利用すれば費用が発生する。全国保育サービス協会の調査によると、1時間当たりの平均料金は全国で1594円(会員の場合)。病児保育には割増料金がかかる例がある。

家事代行サービスの費用も見逃せない。業界大手、ベアーズ(東京・中央)の高橋ゆき専務は「小さい子どもがいる共働きの家庭で、週に1、2回程度利用する例が目立つ」と話す。家事代行を利用しなくても「総菜の購入や外食が増え、食費が増える家庭が多い」(吹田氏)。

こうした家計の危機にどう対応したらいいだろうか。FPの国松典子氏は「復職後に食費などの変動費が増えることを予想して、毎月一定程度支出する電気代や携帯電話代など固定費を見直しておこう」と助言する。

例えば生命保険料。同じ死亡保障でも、保険金を一括して受け取る定期保険を年金形式でもらう収入保障保険に変更するのが一案になる。「月々の保険料が半分程度になることが多い」(国松氏)

子どもの世話を頼むなら、民間以外のサービスを使う手もある。例えば自治体が子育てを支援したい人と支援を受けたい人を仲介する会員組織「ファミリー・サポート・センター(ファミサポ)」の利用金額は、1回700円前後が目安だ。ただ日時や内容によっては対応できない場合もあるので、事前によく確認することが必要だ。

中長期的視点で

子どもが病気の際に発生する病院への交通費やベビーシッター料金などは、月々の生活費から捻出すると、支出の変動が大きくなり管理がしにくい。こうした緊急時の費用は「生活費とは別にあらかじめ予備費を分けて管理しておくといい」と吹田氏は話す。緊急時は予備費から支出し、少なくなったらボーナス時などに補填する。

中長期的な視点で考えることも大切だ。復帰直後にかさむ子どもの費用は、子どもの成長とともに少なくなるのが一般的。保育園は認可でも認可外でも、3歳以降は料金が下がる例が多い。ベビーシッターも「3歳以降は子どもが病気をしにくくなることもあって利用が減る」とポピンズ(東京・渋谷)の轟麻衣子取締役は話す。

子どもに手がかかる時期は育児に専念し、いずれパート・契約社員として再就職を考える人は多い。こうした働き方ももちろん選択肢だ。一方、国松氏が転職サイトの調査をもとに試算したところ、60歳まで正社員で仕事を続ける場合の合計収入は、いったん仕事を辞めてパート・契約社員として働く場合と比べ約8000万円多くなる可能性がある。「どちらが自分の人生設計や家計の状況に合っているかをよく考えよう」と国松氏は助言している。(川本和佳英)

■育児で給与減でも年金減らない特例
会社勤めの人は育児で給与が減っても年金額が減らない特例が2つある。1つ目は月収が減った場合に厚生年金の保険料も下がる特例。育児以外の理由で基本給などが減る場合より、保険料が下がる条件が緩和されている。2つ目は月収が減って支払う保険料が減っても、将来受け取る年金は出産前の高い給与をもとに計算するという特例。パートや契約社員も条件を満たせば利用できる。
子どもが3歳になるまでの期間が対象。会社に申し出て事業主から年金事務所に申請することが必要なため、復職後の給与が減った場合は確認しておこう。申請を忘れても2年以内なら認められる。

[日本経済新聞朝刊2016年3月23日付]

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