働けなくなった…に備える保険 ただし心の病は対象外

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契約はしたものの、細かな内容はよく知らない――。生命保険や損害保険の契約者の中には、こんな人も少なくないだろう。だが、保険は契約条項ひとつで受けられる補償が大きく変わる上、新たなサービスも続々と登場している。本コラムでは、生命保険と損害保険を交互に取り上げ、保険選びの上で知っておきたい知識を解説する。今回は、就業不能保険について見ていこう。

現役世代の不安の一つが病気やけがで働けなくなり、収入が途絶えてしまうこと。しかし、長期の就業不能をカバーできる保険商品は少ないのが現状だ。ライフネット生命の就業不能保険「働く人への保険」、日立キャピタル損保の長期就業不能所得補償保険「リビングエール」(図(1)参照)の2つの商品を比較しながら、就業不能保険の機能を検討してみたい。

※1=申込時点の年収により設定できる月額に上限 ※2=「長期就業不能所得補償保険契約の継続に関する特約」を付帯して自動継続 ※3=支払対象外(免責)期間が始まる直前12カ月における被保険者の所得の平均月間額 ※4= 保険期間5年・支払対象外期間(免責)180日・支払対象期間65歳の例。5年後の自動継続後の保険料7200円(5年ごとに更新)

「働く人への保険」は一定額の給付金をもらえる一方、「リビングエール」は所得の損失に備える。そのため、契約後に収入が下がると、前者は契約時に決めた給付額が受け取れるが、後者だと保険金額より給付が下回る可能性がある。

就業不能の定義も異なる。前者は「いかなる職業においても、全く就業ができないと医学的見地から判断される状態」だ。後者は「疾病および傷害により、次のいずれかの事由によって、いかなる業務にも全く従事できない状態」として(1)治療のために入院している(2)入院せず医師の治療を受けている(3)所定の後遺障害に該当──の3要件を挙げる。

いずれの保険も、うつ病等の精神障害は給付対象外になっている。

掛け過ぎは新たなリスクに

「働く人への保険」は保険期間と支払対象期間が共に65歳までで、免責期間180日のみだが、リビングエールは複数項目から選べる。

どんな時にもらっているのかという具体例も気になるところだ。双方とも傷病を特定していないため、骨折や切迫早産、がん、難病と原因は多岐にわたる。給付の期間も1~2カ月程度の給付後に回復した事例、長期の闘病で数十カ月の給付後に回復した事例、死亡のために給付終了となったものなどまちまちだ。

暮らしに潜むリスクは「起こる確率は高いが、持ち出し金額は小さい」「ちょっと痛い出費ながら単発で済む」「長期にわたる支出を覚悟しなくてはならない」など様々。全てを保険で備えようとすれば、何事もない日常生活において恒常的にお金が不足するというリスクを引き起こす。

半年程度の病気やケガであれば、貯蓄や公的保障の高額療養費、傷病手当金などで乗り切り、さらに長引いた時のリスクに絞って保険に加入するという考え方もある。「捨てる勇気」も家計の健全性を保つ秘訣ではないだろうか。

内藤眞弓(ないとう・まゆみ)
生活設計塾クルー。13年間の大手生命保険会社勤務の後、FPとして独立。生活設計塾クルー取締役を務める。『医療保険はすぐやめなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。一般社団法人FP&コミュニティ・カフェ代表。

[日経マネー2016年5月号の記事を再構成]

日経マネー 2016年6月号

著者 :日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)

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