寝酒がダメな理由

日経ナショナル ジオグラフィック社

2016/4/5
PIXTA
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ナショナルジオグラフィック日本版

今回は寝酒を取り上げてみたい。「百薬の長」から「史上最悪の合法ドラッグ」まで酒ほど毀誉褒貶の激しい嗜好品もないだろう。では睡眠にとって酒とは吉か凶か? その問いに対する答えは至ってシンプルである。

「晩酌はよいが、寝酒はダメ」

このように回答すると必ず出てくる第二の質問は、

「晩酌と寝酒はどう違うのか?」

「寝酒でなく晩酌をしているつもりだが」

酒好きの一人として、分かります、その気持ち。諦めきれない諸氏のために少し譲って「睡眠に悪さをしない晩酌」の楽しみ方を解説すると、

「晩酌は就寝の3~4時間前に終えてください」

ここで多くの方はガックリと肩を落とす。就寝の4時間前なんてまだ仕事中の人も少なくない。悠々自適のリタイア世代でもなければこんな早い時間帯で「晩酌」を終えるのは難しい。しかし実際のところ、就寝の少し前まで飲み続けていたのでは睡眠への悪影響は避けられないのである。

「眠れないときにどうするか」の各国比較。10カ国, 35327人を対象にしたSLE-EP (SLEep EPidemiological) Surveyのデータから。 (提供:三島和夫)

それにしても日本人は寝酒が諦めきれない人種らしい。世界の先進国、新興国10カ国の「眠れないときにどうするか」調査を行った結果をご覧いただきたい。日本人は眠れなくても「医者には相談したくない」「カフェインを控える工夫もしない」「やるのは寝酒」。これだけ教育水準の高い国なのに、一体どうしたことか……。日本人の睡眠軽視、寝不足自慢、酒に対する寛容さ(無防備さ)は今回のテーマではないので先に進もう。

さて、アルコールが睡眠に与える具体的な影響だが、晩酌にもいろいろなパターンがあるので、いくつかのケースに分けてご説明しよう。

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「リバウンド」で深夜に目が覚める