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待機児童、企業も悩む 「保活」を手助け 「復帰遅れる社員いる」7割に 日経調査

2016/3/23

仕事を終えて、勤務先の託児施設に子供を迎えに来た母親(川崎市幸区のFUSO KINDERGARTEN)
新年度の保育園入園を目前に、待機児童問題が過熱している。匿名ブログをきっかけに、国会の議論に発展した。日本経済新聞の主要企業30社への調査では、子が待機児童になり予定していた4月の職場復帰ができない社員がいる企業は7割弱にのぼった。子を持つ当事者はもちろん、戦力として育休復帰者に期待する企業にも大きな損失となるだけに、社員の保育園探し(保活)を支援する企業も増えている。

「働きたい人が育休から復帰しやすく、働き続けやすいように」。三菱ふそうトラック・バスは2月、本社と工場があるJR新川崎駅近くに事業所内託児所「FUSO KINDERGARTEN」を開いた。0歳から2歳の社員の子を15人まで受け入れる。

多くの企業が自社の託児所を認可保育園に入るまでのつなぎと位置づけるなか、同社は在園期間を制限しない。理由の一つは複数の託児所を持つ親会社の独ダイムラーの存在。独本社の人事部には「保育課」があり、託児所の指針も定めているという。親子が通勤時も一緒に過ごせる、親の職場近くに子の居場所があるなどの安心感も重視する。

日本経済新聞が3月中旬、主要企業に実施した待機児童問題の調査(30社が回答)によると、4月に復帰予定だったが子が待機児童になり、復帰できなくなった社員がいると答えたのは20社に達した。受け皿となる事業所内保育所を設けているのは8社。設けていない企業からは「全国の事業所で対応するのは現実的でない」「財政的に難しい」との声が上がった。

待機児童問題に直面する社員を経済面で支援する企業は8社あった。情報システム大手のSCSKは、認可外施設に預けて復帰する社員に保育料の一部を補助。子が認可園に入れない社員の経済的負担を減らし、職場復帰を促す。保育園に入れる地域や、育児支援を得るため実家の近くに転居する社員の引っ越し費用の補助もある。日本生命保険が保育園に子を預ける社員を対象にした金銭補助制度は2014年度、5千人以上が利用した。

みずほ銀行は産休や育休を4カ月以上取得後、子が1歳未満で復帰した社員に、5万円を上限に保育料の半額を補助。三井住友銀行は0歳児を認可外施設に預けて復帰した社員に、認可園の保育料との差額(上限5万円)を出す。

法律が定める最長1年半の育休より早い時期の復帰を後押しするのは「募集枠が大きい0歳児は、入園内定率も1歳児より高い」(渋谷珠紀ダイバーシティ推進室長)ため。「ブランクを短縮でき、本人のキャリアにもプラスになる」点にも期待を寄せる。

保活の知識を深めたり、職場復帰後の働き方を指南したりするセミナーやカウンセリングの取り組みも活発だ。楽天は妊娠中の社員に、同じ自治体で保活した経験を持つ先輩社員を紹介する。

損害保険ジャパン日本興亜は次年度の復帰者に、復帰準備を説く「育休者フォーラム」を07年から実施。10年に所属長の参加も義務づけた。「円滑な復帰には周囲の理解が不可欠」と、キャリアプランを確認し相互理解を図る。

育休社員の復帰をいろんな形で支援する一方、大半の企業が待機児童は「基本的に国と自治体が解決すべき問題」と回答した。「保育園の定員で働ける母親の人数が決まるのは不合理」(住宅大手)という声も。「保育士の処遇問題の解決への取り組み」(日本航空)、「幼保一体化などの迅速な遂行」(丸紅)といった具体策を求める回答もあった。

(南優子、小柳優太)

    ◇     

■「幼保一体化」はどこへ

保育園の待機児童問題が叫ばれる中、幼稚園は2015年5月時点で定員に対し67万人分空いている。両者は役割も開園時間も違い、一律比較は乱暴だが、待機児童の解消に幼稚園を有効利用できないか。

15年4月に国の子ども・子育て支援新制度がスタートした。検討を始めたのはその5年前。最優先課題が「幼保一体化」だった。それぞれ文部科学省と厚生労働省が管轄する。縦割り行政の無駄をなくし、既存施設と人員を有効活用して幼児教育の充実と待機児童解消を狙った。ところが途中で雲散霧消した。

新制度の下で保育機能を持つ認定こども園に幼稚園が移行すれば、当初の思惑も実現できる。だが私立幼稚園約6200園は新制度に移行していない。16年度以降の移行を計画・検討中の園は24%にとどまり、多くは背を向けたままだ。

資金も用地も人員も無尽蔵なら、待機児童問題は簡単に解決する。だが現実は厳しい。限られた資源をどう配分するか。いま一度、幼保一体化の知恵を絞るのも政府や自治体の役割だ。

(女性面編集長 石塚由紀夫)

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