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浪人してスキンヘッド… 衝撃(笑劇)の落とし穴

立川談笑

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NIKKEI STYLE

思い返すと恥ずかしい話なんかいくらもありすぎて、自分の人生は大丈夫なんだろうかと少なからず不安になるほどです。そんな中から今回は私自身の実体験の一つをお話しします。この連載での自叙伝シリーズの一環のつもりでもあります。

今を去ること30年も前。高校卒業を間近に控えた春のことです。

大学受験に臨んだ3校の合否は、ふたを開ければすっからかんのゼロ回答でした。総崩れ。うーん。それなりに勉強したんだけどなあ。おっかしいなあ。

しみじみ両親と膝を交えて相談した結果、私は1年間の浪人生活を許されることになりました。ありがたいことです。またその時点で、思うところあって予備校へは通わずに自宅での浪人生活つまり「宅浪」の道を選びました。

「よーし! あすから一日たりとも外出しないで、ひたすら勉強だけをするぞ!」

すっかり求道者の気分で、まずはともあれ頭を丸めようと心に決めました。極真空手の開祖大山倍達師が若き日に山ごもり修行をしたとき、眉をそり落として人前に出られない容貌にして自分を追い込んだ、との漫画『空手バカ一代』での荒行エピソードが頭をよぎったのです。今から考えると出だしからずいぶん方向が間違っています。そっちじゃないー! 志村ぁー、うしろー!

さっそく近所の荒物屋で手ごろな価格のバリカンを買ってきました。私にとって、これが最後の外出ということになります。買い物から帰るとそのまま家の風呂場に飛び込み、素っ裸で鏡と向かい合いました。風呂とバリカンと私。

慎重に額の生え際に刃を差し込み、思い切ってハンドルを握ります。カックーン。あれ、これでいいのかな? もういっちょ、カックーン。鏡の中をのぞけば、うわわあー! 前のところだけが部分的に激しく刈り上げ状態だあ。こんな変ちくりんな髪形の人間はいまだかつて見たことがない。もう絶対に、引き返せない。いや、どこにも引き返せない。危機感MAXのへんてこ頭を抱えて、こうなったらもう前進するしかありません。さらに刈り進めてカックーン、カックーン。見えるところは順手でカックーン。見えない後ろはバックハンドでカックーン。うはは。なんだか慣れたら楽しくなってきた。

ふう。ひとまずモヒカンに仕上げました。鏡を見て堪能します。

「うおおー。アニマルウォリアー!(←※当時人気の外国人プロレスラー)」

これがやりたかった。この段階で本来の目的は完全に見失っています。

ひとしきり満足したら中央のモヒカン部分も刈り落として、いよいよ最終工程へ。T字かみそりでスキンヘッドを目指します。そりゃそうです。素人にまともな丸刈りなんか不可能ですから。がちゃがちゃの虎刈りにしないためには、「原点」=頭皮でそろえるしかありません。

そうだ、目指すのは原点回帰。すべてをリセットして、一からやり直すんだ! 失意のどん底からはい上がれ、俺!

その後、T字かみそりの仕上がりではもの足りず、婦人用の長いかみそりを導入して、堂々の完成。指で頭皮を触ると、上へもツルツル。下へもツルツル。完璧。パーフェクトです。受験勉強の鬼、「ツルツルくん」爆誕!

帰宅した母は私を見て「きゃああ、うああ。あ?」と初めて耳にする音声を発しながらへたへたと座り込みました。うん、そうだ。そうだよね。

スキンヘッドのツルツルくんは、たとえるなら首から上に「やたらと巨大なゆでたまご」が乗っかっていて、さらにそこに目鼻がついたというか、とにかく見た目が強烈すぎます。

身近なところで、いかがですか? 知り合いにスキンヘッドや丸刈りの若い男性がいたら容貌を思い出してみてください。ほぼ間違いなく、ヒゲかメガネを装備しているでしょう。実は彼らは、意識的にせよ無意識的にせよ「ツルツルゆでたまご顔」を避けているのです。人目を意識するにあたって、頭部以外のどこかにアクセントがほしいのです!なーんて、私がただ言ってるだけですが。

「ピンポーン」

その翌日、我が家を訪ねて来たのは、孫らしき幼いお嬢ちゃんの手を引いたおばあさんでした。

「失礼します。私たちは今、ありがたい本当の神様のお話をね…」

と言いかけて宗教勧誘のおばあさんは、私の顔を見るなり

「よろしかったらお聞きに……、うふふ。なりませんよね」

と、あっさり帰りました。きっと私の容貌が圧倒的に仏教っぽかったのでしょう。あるいは、

「ははあん。この妙にツルツルした若者はきっと、右のほほを叩かれたら左のほほを差し出すフェイントからマッハの速さで流れるようなコンビネーションパンチ&キックを10発以上繰り出して寝技で極めにくる人だわ」

と察知されたか。いや、私はそんな人じゃないけど。

これから大学受験浪人としての生活が始まるわけですが、それはまた別の機会に。

これが、受験勉強にまい進するため、とにかく外出できないように、何があろうが人前に決して出られないようにと、自分で頭を剃った時の話でした。

あ、そうそう。特に恥ずかしい思いをしたのは、この数日後のこと。というのも、高校の卒業式があるのをすっかり忘れていたのです。

☆     ☆     ☆

弟子のふたりともいい調子だ。ここからさらに幅を広げていこう。

次、3回目のお題はぐっと角度を変えて、「あこがれ」。

今の時点での将来の夢想でもいいし、過去にさかのぼって思い出目線で語るもよし。「あの頃、みんなのあこがれだった」なんて入口から、有名人を題材にしてもいい。もっともっと自由に、楽しくやろう。

笑二から行ってくれい!

(次回3月30日は立川笑二さんの予定です)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>独演会は4月13日、5月12日の予定。吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は3月25日4月28日、5月29日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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