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復興に向けてひた走る 仙台、5人の「女性戦士」

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NIKKEI STYLE

東京・新宿歌舞伎町のど真ん中、アミューズメント施設などが入るビル7階のライブホールに足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは黒い壁に張られた巨大な『大漁旗』……。

「格好いい!」

東北地方を中心に活動する女子プロレス団体「センダイガールズプロレスリング(仙女)」の選手に地元企業から提供されたものです。今まで見てきたなかでも最高峰の粋(いき)なレスラーの横断幕。選手とそれを支えるファンの「魂」をそこに感じました。

「センダイガールズプロレスリング~あの日を忘れない~」が、東日本大震災から5年目の3月11日に新宿FACEで開催されました。

試合前のあいさつでリングの上に並ぶ仙女所属の5選手。赤いジャージーが4人と、黒いジャージーが1人。その黒い人がなぜか気になります。試合の意気込みを語る新人選手のマイクを突然ひったくり、コーナーポストによじ登って自由気ままにアピールしはじめる黒ジャージーの選手。よく見ると顔に悪魔のような妖しいメークが施されています。そして敵を威嚇するツノなのか、金髪の前髪が額から上に突き出しています。どういうことだ?と思ったら、ぜひ「カサンドラ宮城」で検索してみてください。もう今日から彼女のことが気になって仕方なくなるはずです。カサンドラ選手の暴走(?)により、会場のかしこまった雰囲気が楽しく温かいものに変わりました。ここから試合の始まりです。

センダイガールズは所属選手が5人と、"女性だけの戦隊ヒーロー"みたいだなぁと思います。

リーダーのレッドはもちろん、この日のメーンイベンター、日本女子プロレス界の「横綱」とも称される仙女の代表・里村明衣子(さとむらめいこ)選手で決まりです。

ピンクは第1試合に登場した新人の岩田美香(いわたみか)選手。ニックネームは「美仙女」。ルックスもさることながら、鋭い蹴りと試合中の闘志あふれる目が魅力的です。

黒ジャージー=ブラックのカサンドラ選手は激しいヘッドバンギングとともに第3試合のシングルマッチに降臨。長身をいかしたダイナミックなドロップキック、ミサイルキックが得意技です。

セミファイナルでタッグを組んだ橋本千紘(はしもとちひろ)選手とパートナーのDASH・チサコ選手はそれぞれイエローとブルーでしょうか。

橋本選手はアマレス出身のパワーファイター。明るい性格で"センジョファイブ"のムードメーカー的な存在でもあります。

そしてチサコ選手は2006年の仙女旗揚げから支えてきたテクニシャン。対戦相手である大ベテラン、アジャ・コング選手に圧倒的なパワーで押されても押されても跳ね返します。151cmと小柄なチサコ選手の気迫と粘りに圧倒されます。

メーンイベントの里村選手対朱里(しゅり)選手のシングルマッチはとてつもない名勝負でした。

里村選手は「クラッシュギャルズ」で一世を風靡した長与千種選手の薫陶を受けてデビューし、キャリアも20年超。一方の朱里選手はキャリアこそ里村選手より短いですが、キックボクシングのチャンピオンにも輝いた実力者です。重い蹴りの応酬の末、里村選手がデスバレーボム3連発を決めて激戦を制しました。

今回のイラストは里村選手の必殺技「デスバレーボム」を描かせていただきました。肩に担ぎ上げた相手を脳天から垂直に叩き落す恐ろしいフィニッシュ技です。

全試合終了後、里村選手は再び所属選手をリングに呼び寄せました。

震災後に新たに仙女に加わったのはカサンドラ選手、岩田選手、橋本選手の3人です。「彼女たちに賭けたい。そして旗揚げ以来苦楽をともにしてきたチサコ選手の存在はなにものにも代えがたい」と里村選手は話します。

仙台市に拠点を置くセンダイガールズは、東日本大震災により活動に大きな影響を受けたにもかかわらず、代表の里村選手は「絶対に団体を継続させる」という強い信念を持ち続けていました。

リング上にずらっと並んだ仙女のメンバーが"戦隊ヒーロー"のように見えたのは、里村選手を中心に「もっと東北を盛り上げていくぞ!」という強い気持ちを5人の選手が共有しているからだと思います。

里村選手は「日本にもう一度女子プロレスブームを起こす」と宣言しています。プロレスが注目されている今、女子プロレスも飛躍に向けて駆け出しています。

(この連載は随時掲載します)

 HIROKU./広く。鳥取県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、2010年からプ女子活動をスタート。ブログ「プ女子百景《プロレス女子図鑑》」で、プ女子をモチーフにした必殺技のイラストを公開し注目を集める。『プ女子百景』(小学館集英社プロダクション)を出版。新日本プロレスのサイトや週刊ポストなどでイラストを連載中。プ女子グッズの製作も手掛ける。

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