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投資のヒントは「公開情報」にあり(藤野英人) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

2016/3/22

「投資の極意は『時代の方向性』を見極めることだ。そのために私が実践している4つのノウハウがある」

私がこの仕事をしていて感じることは、いかに人は偏見に支配されているか、ということです。「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである」と言ってもいいでしょう。

株式投資が非常に面白いのは前回もお話をした通り、偏見のある人たちが大量に集まるとそれが神になるという不思議です。その際に、「時代の方向性」を見極めるためには今をどのように把握するのかが重要であるというお話をしました。では、最終的にどのようにしたら方向性をとらえられるのでしょう。

私は4つのことを実践しています。

1)各分野のキュレーターを活用する

SNS(交流サイト)などを媒体にしながら、全世界の専門家がそれぞれの観点で情報発信を行っています。東日本大震災で原発の事故があったときに、ツイッターを中心に東京大学の早野龍五教授が刻々と変化する状況に対して、的確に解説をしたことは記憶に新しいでしょう。

このようにネットの情報をまとめてわかりやすく配信する人たちのことを最近はキュレーターと呼んでいます。SNSは各分野のキュレーターが発信する情報をほぼ無料、もしくは格安なコストで得ることのできる手段です。

人工知能(AI)、インターネット、ゲーム、仮想現実、起業、グローバル経済、ロボット工学、国際政治、地政学リスク、バイオテクノロジー、自動運転などいろいろな分野に専門家がいて、積極的に発信をしています。

私自身、フェイスブックやツイッターでの発信を積極的に行っていますが、それ以上に情報を収集しています。SNSの有効な活用法は発信すること以上に「見る」ことだと思っています。よくSNSを「怖い」という方がいますが、個人の情報を表に出して発信をしなければ、ネット上のリスクはほとんどありません。「情報を収集する」ことに集中したら、これほど役に立つものはありません。

2)新聞や雑誌などに積極的に目を通す

新聞や雑誌は有料媒体です。SNSは無料のものが多いですが、玉石混交という欠点があります。最近は新聞や雑誌の「やらせ記事」や「ウソ」が叩かれることが多くなりましたが、それはそれだけ情報の信ぴょう性を強く要求されるからです。SNSであふれるように配信される情報に比べれば、情報の品質はいまだにネットの情報を凌駕(りょうが)しています。

情報の正確さに加え、新聞などを見る意味は網羅性です。どうしてもSNSでは自分の関心の高いところだけをえり好みしてしまうという傾向があります。新聞の場合は、あらゆる分野に記者を配置して、それぞれの記事を編集し、網羅的に世間に伝えていこうという位置付けになっています。もちろんその編集作業に一定の方向性やバイアスも入るわけですが、個人のバイアスよりはマシだと思われます。

3)販売の現場に足を向ける

量販店や百貨店などの売場は、単なるショールームではありません。会社は売り上げを始終モニターし、どうしたら利益を最大化していくかを考えています。

だからその売場こそ、会社の日々の努力のたまものであり、それを私たちは見込み顧客として無料でのぞくことができるのです。よく考えたらすごいことではないでしょうか。

売場にこそ今があり、時代の方向性があるのです。

私が投資の初心者や就活をひかえた学生に勧めているのが、月に1度程度、家電量販店を全フロア眺めることです。例えばビックカメラやヨドバシカメラなどの都市型の大型店は、家電量販店という以上に全分野の商品を網羅的に置いてあります。そして、毎月、それを眺めるだけで店の売場は月次単位で大きく変化しているのがわかると思います。

同様に本屋さんも定期的に足を向けると、並んでいる本の中身が驚くほど入れ替わっているのに気がつきます。本屋で売れている本は時代の気分や雰囲気を反映しています。

4)実際に専門家の話を聞きに行く

私たちはその気になれば、様々な分野の人の講演をほぼ無料で聴くことができます。SNSなどで専門家をフォローしていると、年に何回かは一般の人向けのセミナーを開催しており、無料から数千円で話を聞くことができるのです。

また本を買えば無料で著者の講演を聴けることもあります。専門家の話は時代の方向性を見極めるには非常に有効です。

さらに私は会社の経営者や専門家の話を直接インタビューできるのですが、でもそれは確認作業に近いものです。私の得ている情報のほとんどは公開情報です。各国の情報機関もアナリストの仕事は各国の新聞や雑誌、テレビの情報の分析が中心だと聞いています。

公開情報に時代の方向性をとらえるヒントはあります。4つのノウハウを実践して情報を集め、トレンドをつかんでみてください。必ず投資に役立つはずです。まずは「その気になり、日々努力する」ことから始めましょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏と楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が交代で執筆します。
藤野 英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。「JF中小型オープン」は1年間の上昇率219%を記録。驚異的なパフォーマンスを上げ、「カリスマファンドマネジャー」と呼ばれた。2000年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス創業。CIOに就任。09年取締役、15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。著書に「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社)など多数。

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