大腿部骨折の実力病院、手術24時間体制で(日経実力病院調査)

東戸塚記念病院(横浜市)は来院から24時間以内の手術を目指している
東戸塚記念病院(横浜市)は来院から24時間以内の手術を目指している

大腿部骨折は骨盤と太ももの継ぎ目の股関節付近で起きることが多い。骨が弱くなった高齢者が転倒したときなどに発生しやすく、患者の増加が見込まれる。日本経済新聞の「実力病院調査」で病院が骨折後24時間以内に手術できるよう体制を整え、治療後のリハビリなどで地域で連携を深めていることが分かった。

大腿部骨折は男性に比べ女性の患者が多い。閉経後にホルモン分泌が低下し、骨の密度が下がってもろくなる骨粗しょう症になりやすいためだ。

2つに大別され、骨盤のボール状のへこみにぴったりと収まった「骨頭」の下のくびれた部分が折れるのが頸(けい)部骨折。それより少し膝よりの股関節外で起きるのが転子部骨折だ。いずれも再び歩けるように手術するのが一般的だ。

頸部骨折では折れた骨頭を外し、金属などでできた人工骨頭に置き換える手術が多い。臀筋(でんきん)というおしりの筋肉を切開し、そこから人工骨頭を入れてはめ込む。転子部は折れてもくっつきやすいため、通常は手術で太ももの横側を切り、金属製の板や太いネジ、クギなどを使って骨折部を固定する。

5日たつと危険

今回の調査では、東戸塚記念病院(横浜市)が「手術あり」で387例と全国1位だった。山崎謙院長は手術が多い理由を「麻酔科の医師や看護スタッフなどと協力し、24時間以内に手術できる体制が整っているため」と説明する。

大腿部は骨折したらできるだけ早く手術すべきだとされる。5日以上たつと手術しても歩きづらくなり、身体機能が衰えて死亡率が高まるという報告がある。同病院は心臓病や腎臓病など合併症がなければその日のうちに手術する。24時間以内の手術の割合は全体の7割という。

済生会熊本病院(熊本市)は手術翌日から歩行のリハビリを始める

頸部骨折では100歳以上であっても人工骨頭に置き換える。「手術せずにくっつくのを待つ場合に比べ、痛みに数カ月も苦しまなくて済む」(山崎院長)。一方、70歳以下ではネジで留める骨接合術や骨盤側にも部材を使う人工関節を選択する。活動的な人が人工骨頭にすると、ゆるみが出て再手術になる可能性があるためという。

339例と九州地区で最も手術が多かった済生会熊本病院(熊本市)は、頸部骨折の手術で臀部ではなく、正面から人工骨頭を入れる術式を採用する。股関節の構造上、前からはめ込むのは難易度が高いが、安楽喜久・整形外科部長は「筋肉を切らずに済み、傷も小さくなる。寝たままでも消毒しやすい」と話す。

患者情報を共有

熊本市内は手術、リハビリテーションと役割が異なる病院の連携が密なことで知られる。大腿部骨折の患者情報を共有するシステムを構築、2カ月に1回は市内約30施設の担当者が集まって治療計画の見直しなどを行う。済生会熊本病院は術後2~3日でリハビリ病院と転院時期を相談し、1~2週間で移ってもらう。

兵庫県立淡路医療センター(兵庫県洲本市)は淡路島の中核病院で、整形外科には島内最多の7人の医師を置く。手術にはベテラン医師が必ず立ち会い、金属器具を使う場所などを複数の目で確認する。金属が骨を突き破る「カットアウト」や、人工骨頭のずれによる細菌感染を防ぐためだ。

相澤病院(長野県松本市)は「手術なし」が73例と比較的多かった。寝たきりや認知症が進んだ患者は手術を避けている。例えば認知症が重度の場合、再骨折を防ぐための注意事項を守るのは難しく、痛みを訴えることも少ないためだ。

補助器具を使って骨の結合を待ち、痛み止めを投与してリハビリを行う。小平博之外傷・関節センター長は「積極的にリハビリをすれば、手術しなくても歩けるようになる」と話す。

高齢化で患者増加、「片足立ちで予防を」

厚生労働省などの統計によると、大腿部骨折の患者は2010年で約18万人。患者の大半は65歳以上で、高齢化に伴って30年には30万人に達すると推計されている。

日本整形外科学会などがまとめた診療ガイドラインの策定委員長を務めた総合南東北病院(福島県郡山市)の松下隆外傷センター長は「骨粗しょう症でなければ、転んだ程度で大腿部は折れない。50歳を超えたら骨密度がどれぐらいかを測定し、自分の骨の状態を把握すべきだ」と強調する。

早めに骨粗しょう症治療を始められれば、あごの骨の壊死(えし)などの副作用を伴うことがある強い薬を使うのを遅らせることができるという。松下センター長はスクワットと片足立ちを毎日行うことも推奨する。筋力を高めてバランスを調整する力も改善し、転倒などを防ぐためだ。「片足で3分以上立っていられれば問題はないとされる。自分のバランス力の測定と訓練を兼ね、取り組んでほしい」と話している。

調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
▼診療実績 厚生労働省が2015年11月に公開した14年4月~15年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1584病院のほか、導入準備中やそれ以外も含め全国の計2942病院を対象にした。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
▼運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の前に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
▼施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目などを比べた。15年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。
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