急性白血病の実力病院 高齢者へ「ミニ移植」広がる(日経実力病院調査)

移植に向けてドナーから骨髄採取する(札幌市の札幌北楡病院)
移植に向けてドナーから骨髄採取する(札幌市の札幌北楡病院)

血液のがん、白血病が速く進行する急性白血病。最近は治療法が発達し、不治の病ではなくなってきた。日本経済新聞の「実力病院調査」によると、症例数の多い病院は免疫力が弱まった患者への感染症対策を徹底。体力が低下した高齢者の選択肢を増やそうという動きもみられた。

白血病は赤血球や白血球、血小板などをつくる骨髄内の造血幹細胞に異常が起き、白血病細胞となって増殖することで起きる。白血球が減って免疫力が低下、感染症にかかりやすくなる。赤血球や血小板も減少し、だるくなったり、血が止まらなくなったりする。年間約8千人が亡くなる。

急性白血病は経過が早い悪性の病気だ。白血病細胞の種類によって「骨髄性」と「リンパ性」に分かれる。治療では抗がん剤でこの細胞を減らし、症状が安定した「寛解」状態に持っていく寛解導入療法が第1段階だ。その後、抗がん剤を変えて寛解を保つ地固め療法、再発を防ぐ維持療法に移るのが一般的だ。

免疫力が低下、感染症対策を徹底

今回の調査で「手術なし」の治療が全国最多の572例だった広島赤十字・原爆病院(広島市)。成人に多い骨髄性の場合、診断当日のうちにイダルビシンなどの抗がん剤を点滴し、入院しながら10日間投与を続ける。白血球などを正常につくれるようになるまで病院で観察するため、入院期間は1カ月ほどになる。

退院後も外来で11カ月、定期的に抗がん剤を投与する。さらに3年間経過をみて、再発しなければ完治だ。寛解率は70歳未満では90%で、70歳以上で70%。5年生存率は60%という。

広島赤十字・原爆病院(広島市)は患者の体調をこまめにチェックする

同病院では通常の1.7倍の量の抗がん剤を使う。高い効果を期待できる一方、免疫機能などのダメージも大きく、感染症を招きやすいため対策を徹底している。

そもそも白血病は「一般的に治療中の感染症がきっかけで亡くなるケースがとても多い」(許泰一血液内科部長)。あらかじめ患者の体内にカビなどが入り込んでいないか検査。抗がん剤投与後は週2回、便や尿をチェックして体調の変化を確認する。土日も専門医が常駐し、発熱など異変があれば即座に対応。無菌室は47床分ある。

リンパ性は再発の可能性が高く、投与期間はより長くなる。「手術なし」が2番目に多かった札幌北楡病院(札幌市)は骨髄性とは別の抗がん剤も組み合わせて寛解状態を目指す。

1週間の抗がん剤投与と約1カ月の体力回復期間は入院して寛解を保ちつつ、地固め療法を数回繰り返す。その後も外来で2カ月おきに抗がん剤を投与し、全体の治療期間は2年ほどになる。

通院治療も可能

同院内科の小林直樹部長は「顕微鏡でがん細胞が確認できなくても再発することがあり、完治したと判断するのは難しい」と粘り強く付き合う必要があると説明する。

高齢患者への対応も課題だ。大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)は65歳以上が患者全体の3割を占める。強い副作用に体が耐えられないため、多くのケースで抗がん剤の量を減らして投与する。自宅での療養を希望する患者は、入院せず週1回の通院で済むよう調整することもある。その場合、経口抗がん剤や輸血で治療を続ける。

抗がん剤が効かない場合や再発予防に向けては、造血幹細胞の移植が選択肢になる。広島赤十字・原爆病院は65歳以下、札幌北楡病院は60歳未満を主な対象とする。抗がん剤や放射線で白血病細胞をゼロに近づけ、免疫機能も抑えるという移植受け入れのための準備があり、一定の体力が必要なためだ。

高齢者には事前の抗がん剤を減らす「ミニ移植」が広がる。体への負担を軽減し、たたき切れなかった白血病細胞は移植した細胞の力でなくそうという方法だ。札幌北楡病院は移植全体の約5割を占め、治療成績も通常の移植に近い。

移植には親族や全国の登録バンクの中から、型が一致する細胞を見つける必要がある。同病院の小林部長は「骨髄、臍帯血(さいたいけつ)バンクの普及で移植を選択できる患者が増えている」と話している。

がん細胞を「狙い撃ち」、副作用少ないが高額

がん化した細胞を「狙い撃ち」するタイプの治療法も広がっている。通常の抗がん剤は健康な細胞まで傷つけてしまうが、白血病細胞だけに効く薬であれば副作用の軽減が見込めるためだ。

急性リンパ性白血病は患者の3分の1で「フィラデルフィア染色体」に異常がみられる。このタイプの場合、白血病細胞を選んで攻撃する分子標的薬「イマチニブ」などが有効で、大阪市立総合医療センターや広島赤十字・原爆病院などが採用している。

札幌北楡病院は体の免疫機能を使ってがん細胞を集中攻撃する「樹状細胞ワクチン療法」も取り入れている。まず体外で患者の樹状細胞を培養し、白血病細胞の目印を認識させる。体内に戻すと司令役となってリンパ球に目印を教え、攻撃させる仕組みだ。

副作用が少なく、再発予防の効果も期待されるが、保険が適用されない自由診療となる。費用は1回200万円ほどかかる。自由診療を行うと、同じ病院で受けた保険診療部分も原則、自己負担となる。このため主な対象は他の病院の患者としている。

調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
▼診療実績 厚生労働省が2015年11月に公開した14年4月~15年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1584病院のほか、導入準備中やそれ以外も含め全国の計2942病院を対象にした。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
▼運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の前に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
▼施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目などを比べた。15年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。
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