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田部京子さん ロマン派ブラームスを弾き語る

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NIKKEI STYLE

日本を代表する実力派ピアニスト、田部京子さんがドイツ音楽の深遠な森に分け入っている。2015年11月にベートーベンの後期三大ソナタのCDを出したほか、3月にはブラームスとベートーベンの作品を中心にしたリサイタルを開いた。リハーサルの日、得意のドイツ・ロマン派、ブラームスの魅力を弾いて語った。

心の奥底に秘めた悲しみと憧れ。静かな祈りの時間に訪れるほのかな希望の光。田部さんが弾くブラームスの「主題と変奏 作品18b」からはそんな感慨が聴き手に伝わる。20代の青年ブラームスが自作の「弦楽六重奏曲第1番第2楽章」をピアノ独奏用に編曲した作品だ。もとの旋律に変化を加えて何度も繰り返していく10分余りの長大な変奏曲。憂愁の美しさをたたえる冒頭の主題は、映画やテレビCMにも使われたので、聴いたことのある人も多いだろう。

3月11日の夜、東京・銀座のヤマハホールで開かれた「田部京子ピアノ・リサイタル ピアニッシモ(pp)~祈りと希望~」。その名の通り「ピアニッシモ(とても弱く)」のような弱い音を中心とした静かな曲が演目に並ぶ。1曲目のG・カッチーニ作曲(吉松隆編曲)「アヴェ・マリア」は、透き通った繊細な音色で悲しみを慰めるような、甘美な旋律が静かに奏でられる。短調の悲しみの和音が、波一つ無い湖面に落ちる水滴のように広がる。

吉松隆作曲「プレイアデス舞曲集」からシベリウスの「樅(もみ)の木」、グリーグの「抒情小曲集」の小品、ドビュッシーの「月の光」へと続く。研ぎ澄まされた硬質な音色で、弱い音を慈しむように悲しみや郷愁のメロディーを奏でていく。

作曲家の吉松隆さんが隣に座っていた。現在第9集まである彼の「プレイアデス舞曲集」は、第1集から田部さんの演奏でCDにしてきた。「彼女はデビューして間もない頃からいきなりシューベルトの最晩年の最高傑作『ピアノソナタ第21番(遺作)』をCD録音した。若いのに変わっているというか、おもしろいピアニストだと思ったね」と吉松さんは評する。

超絶技巧の派手な曲を弾く技術を当然持ち合わせていながら、彼女はかすかな弱い音の変化を捉え、繊細に表現すべき作品の分野を切り開いてきたといえる。細やかな表現であるとともに、作品全体の構成や響きの構造も浮かび上がる。そしてそこには歌がある。

前日のリハーサルでも聴いたブラームスの「主題と変奏 作品18b」からリサイタルの後半が始まった。非常に遅いテンポだ。秘められた悲しみが旋律となって変化しながら、交響空間を何周もゆっくり大きく旋回していく。その演奏スタイルは、弾く人というよりも聴く人だ。完璧な暗譜と自在な指さばきを当然とした上で、自ら紡ぎ出す単色の交響世界をじっと聴いている。

「演奏家」の中で聴く人といえば指揮者。「指揮をしたことはありませんが、きっと気持ちがいいんでしょうね」と田部さんは言う。彼女はブラームスの交響曲を聴いて彼のピアノ曲に開眼した。「ブラームス特有の内声と重層的な響き、縦と横の響きをどうピアノ1台で表現するか」。加えて「多くの歌曲も書いている作曲家なのでやっぱり歌が大事」と話す。

ブラームスの室内楽作品を弦楽奏者とともに演奏する際には「ブラームスの重層的な響きをピアニストの自分が全部1人で引き受けているかのような醍醐味を感じる」と言う。バイオリンなど弦楽器よりもピアノの方が同時により多くの音を鳴らせるからだ。「本当にオーケストラを指揮しているかのようです」

現代最高のシューベルト弾きの一人と評されるほど、ブラームスやメンデルスゾーンを含めドイツ・ロマン派の作曲家の作品を得意としてきた。しかし、いま関心を強めているのは、ロマン派の源流に位置する古典派のベートーベンの作品だ。

リサイタルの最後の演目は、最新CDにも入っているベートーベンの後期三大ソナタの一つ「ピアノソナタ第31番」。柔軟で細やかな表現の中から優美な旋律が紡ぎ出される新鮮な演奏だ。第3楽章でふと浮かび上がる「嘆きの歌」の旋律が、深い悲しみの感情を呼び起こす。その後に訪れる希望の光のようなエンディング。この華々しい場面でも清楚(せいそ)で素朴な雰囲気を失わない。技術を誇示して荒々しく弾く演奏とは一線を画す独特のスタイルといえる。独特なのに正統という不思議な安定感もある。古典派の構築性を確保しつつ、ロマン派的な作曲家個人の内面性にも迫る表現だ。

東日本大震災から5年後の3月11日、悲しみの中から希望を見いだそうとした公演だった。7月には都内と千葉県佐倉市で「ドイツの思い出を訪ねて」と題したリサイタルを開く。ベルリン芸術大学・大学院に留学したドイツ時代の原点を見つめ、思い出のベートーベン、メンデルスゾーン、シューマンの曲を弾くという。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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