本当に忙しいから? やらない理由を考えてみよう

日経DUAL

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皆さん、こんにちは。子育て支援の代表取締役、熊野英一です。アドラー心理学をベースに「自分を<勇気づける>ことの大切さ」と「他者を<勇気づける>ことの素晴らしさ」をお伝えします。

「よし、心機一転!今年こそ…」と、ダイエットなり英会話なり資格取得なり何か目標を立ててはみたものの、いつの間にか「今は仕事が忙しいから、子どもがもう少し大きくなったら…」と実行は先延ばしに。きっと誰しもがこんな経験をしたことがあるでしょう。

今回は私達が自分自身に言い訳をすることで、克服すべき課題から逃げようとする心のカラクリを見ていきたいと思います。

英会話、ダイエット… できないのはなぜ

・時間に追われていて、会社の机の上の整理ができず書類が山積み
・通勤時間は英語の勉強に充てるって決めているけれど、ついスマホを見てしまう
・理性では良くないとは分かっているけれど、毎日のように子どもを感情的に叱ってしまう
・すぐに始めればいいのに、いつも仕事を締め切りギリギリまでためている…

皆さんも、似たような悩みを一つくらいはお持ちではないでしょうか。仕方ないですよね、忙しいでしょうから。スマホでの情報収集も必要。子どもは何度言っても言うこと聞かない。仕事もなんだかんだ言って、なんとか締め切りは守れている。でも、本当にそうでしょうか。

「あたま(理性)では分かっている」けど「(感情が言うこと聞かず)○○できない」と考えると、なんだか納得感が高いようですが、アドラー心理学では全く逆に考えます。意識と無意識、理性と感情、心と身体、のように人間を分割して、相互が矛盾していると捉えることはしません。むしろ、それらは密接不可分な一体であるとする「全体論」という考え方です。

「全体論」に加えて、下記のアドラー心理学の理論を総動員して考えてみましょう。

・自己決定性:人間は環境や過去の出来事の犠牲者ではなく、自ら運命を創造する力がある
・認知論:人間は自分流の主観的な意味付けを通して物事を把握する
・目的論:人間の行動には、その人特有の意思を伴う目的がある
・対人関係論:人間のあらゆる行動は、相手役が存在する

私達は、本当は「I will not ~(~しようとしない)」「I don’t want to ~(~したくない)」と思っている物事を、なんらかの言い訳をつくり出して、「I cannot ~(~したくてもできない)」という言い方に変えて、自分をだましているのです。

できない、難しいと感じたら、ひと呼吸

本来、あなたの目前にある困難・課題は、自分の責任で対処すべき、あるいは対処できるものがほとんどのはずです。それにもかかわらず、あたかもその困難・課題の原因は自分ではコントロールできない外部の環境や周囲の人にあると、その責任を転嫁して「だから、できなくても仕方ない」と言い訳することを、アドラーは「人生のウソ」と呼びます。

もし、何かができない、難しいと感じたら、ひと呼吸を置いてみましょう。自分で自分にウソをついていないか、言い訳をつくり出していないか、考えてみるのです。そして、もし「なんだ、私はそもそも○○したくないんだ」と気づけば、まだその時機ではないと冷静に判断でき、しばらくそのことを横に置いたっていいわけです。そのようなことはたいてい、他人の目が気になって、やりたくもないのにしなければいけないような気になっていただけのことだったりするのです。

わざわざ自分や周囲の他者に言い訳をしつつ、一方では心の中で「三日坊主な自分」「意志の弱い自分」を責めて自己嫌悪に陥る。そんな「人生のウソ」から卒業して、より建設的な行動をすべく、自分を勇気づけて一歩を踏み出してみませんか。建設的な行動を選択するための大前提は「自己受容=ありのままの自分を受け容れる」ということです。言い換えれば、「不完全な自分を認める勇気を持つ」ということです。

他者比較して言い訳に逃げることから卒業する

「ありのままの自分を認める=現状維持に甘んじる」ではありません。
「ありのままの自分を認める=ダメな自分を自己否定する」でもありません。

「ありのままの自分を認める=他者比較に基づく言い訳に逃げることから卒業する」ことです。
「ありのままの自分を認める=自分の力で課題を解決するためのスタートラインに立つ」ことです。

アドラー心理学の理論を理解・実践できるようになると、あなたは自分で自分のことを「勇気づける」ことができるようになります。「勇気」とは、あなたが、自分に課せられた困難を自分の力で克服するチカラのことをいいます。そうです、アドラーは、あなたに「精神的に自立すること」を求めているのですね(だからこそ、アドラーの考えは子育ての指針としてもピッタリ!なのです)。

【参考文献】『アドラー子育て・親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~』(熊野英一/アルテ)、『アドラー心理学教科書-現代アドラー心理学の理論と技法-』(監修:野田俊作、編集:現代アドラー心理学研究会/ヒューマン・ギルド出版部)、『7日間で身につける! アドラー心理学ワークブック』(岩井俊憲/宝島社)

熊野英一
フランス・パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を創業、代表取締役に就任。2012年、日本初の本格的ペアレンティング・サロン「bon voyage有栖川」をオープンし、自らも講師として<ほめない・叱らない!アドラー式の勇気づけ子育て>を広めている。2016年4月「アドラー・子育て 親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~/アルテ刊」を発刊。日本アドラー心理学会 正会員。

[日経DUAL 2016年2月10日付記事を再構成]

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