トリンドル玲奈、海外小学校生活を支えた3匹のネズミ
三匹のねずみに癒やされる、思い出の指人形
箱の中に、3匹のねずみがいるんです。このねずみ、実は下から指を入れると、ほら、動くんです(笑)。かわいいですよね。こんなぬいぐるみ、なかなかないと思う。
これは小学4年生の冬、家族でウィーンに行った時に、父の友人からいただいたもの。その方はウィーンの自然史博物館のショップで働かれていて、そこで売られていたものらしいです。
もらったときは、「カワイイ!」と思いましたね。日本のぬいぐるみとはまたちょっと雰囲気が違うので、「外国のモノはカワイイな」と子どもながらに思った記憶があります。しかもよく見ると、けっこうちゃんと作られてるんですよ。ヒゲがあって、尻尾があって……。
このぬいぐるみを見ると、いろんなことを思い出します。たとえば小学5年生で、単身ウィーンに行った時のこととか。
ねずみたちと過ごした、小学生の寮生活
私、生まれはウィーンなんですけど、日本やフランス、米国などを転々としていたので、ずっとオーストリアに住んだことがなかったんです。でも、小学6年生に上がるタイミングで、日本から家族でオーストリアに行くことになった。私はそれを聞いて、現地校の進級時じゃないと友達ができないと思い、「先に行く」と向こうに行ったんです。小学5年生の9月に、一人で寮に入った。
そしたら、みんなが話しているドイツ語がわからなくて友達はできないし、想像していた寮生活とも違って、ホームシックに……。
寂しかったですねぇ。母にもらったテレホンカードで日本に電話をかけるんですけど、つい、いっぱいかけちゃうから、すぐに使い切っちゃう(笑)。そんな時期にも、このねずみたちと一緒だったような気がします。
それから今まで、引っ越すたびにねずみたちを連れてきて、今も一人暮らしの棚にいます。もし妹が、この記事を見たら、びっくりするかもしません。一応、このねずみは私と妹に、ともらったものなので。「完全に自分のものにしてるな」と思うはず(笑)。
だけど、こういうふうにずっと持っているものがあるっていうのも、いいですよね。本当に、この箱にたくさんの思い出が詰まっているので。
●トリンドル玲奈、私の物語●
子どもの頃の私の夢は、看護師さんでした。女性らしい仕事という感じがしたし、人を助けたいという思いもありましたね。その一方で興味があったのが、今のお仕事なんです。
でも、モデルというと華やかなイメージがあるので、自分には無理だろうな、と思っていました。だから高校生になってスカウトされた時は、うれしかった。すぐに「がんばってみよう」と思いました。
モデルを始めた頃はいろんな方との出会いが楽しかったんですが、最近は女優というお仕事も始めたので、ひとつのものをみんなで創り上げていくのが楽しいと思うように。去年の映画『リアル鬼ごっこ』(園子温監督)くらいから、特にそう感じるようになりましたね。監督もそうでしたけど、役者さんも、芝居に命を懸けているような熱い方々。本当にたくさんの刺激を受けました。
今年6月には、『任侠野郎』という映画が公開されます。蛭子能収さん主演、私は組長役(笑)。自分でもどうなるのか想像できなかったんですけど、楽しかったです。蛭子さんが本当に明るくてすてきな、かわいらしい方でしたし。
ずっと趣味がなかったんですけど、2年くらい前に歌舞伎を初めて見て、好きになりました。劇場の雰囲気も好きだし、目に入ってくるもの、聞こえてくるもの、香りなども、全部が美しい。今年に入って見た、宝塚歌劇団も良かったですね。歌舞伎とはまた全然違う、華やかな夢の世界。ハマって、そのうちグッズを買ったりするようになるかもしれません(笑)。
休学して時間がかかってしまいましたが、去年の秋には、大学も卒業しました。お仕事との両立は大変でしたけど、今考えると、楽だったなと思います。行くといろんな勉強ができるし、大学に所属しているという、守られた感じがあったので。
今後は、モデルのお仕事をがんばりつつ、お芝居でも、いろいろな役をやって、うまくなっていきたい。表現力が身につくと、もっと楽しくなる――その繰り返しだと思うので。少しずつステップアップしながら、自分なりにお仕事をしていきたいと思っています。
1992年、オーストリア・ウィーン出身。高校2年生の時にスカウトされ、09年にデビュー。『ViVi』などの専属モデルやCM、バラエティー番組で活躍。12年には日経トレンディが選ぶ「ヒット商品ベスト30」に選出された。また同年、ドラマ『黒の女教師』で女優デビュー。15年の映画『リアル鬼ごっこ』(園子温監督)でカナダのファンタジア国際映画祭・最優秀女優賞を受賞した。同年10月には日本テレビ『いつかティファニーで朝食を』で連続ドラマ初主演した。
(構成 泊貴洋)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。