2000円超えも! オススメ高級レトルトカレー
ご当地レトルトカレー最前線
「1000円を超えるような高価格のカレーは、自分へのご褒美やプレゼント用として買っていく人が多い」というのは、西浅草にリニューアルオープンした、常時、数百種類のレトルトカレーを取りそろえる「カレーランド」の猪俣吉章さん。実際、ボーナスの時期やお歳暮シーズン、父の日のころによく売れるという。
「時には『値札シールを剥がさないでください』と言われることもあります。高額なレトルトカレーは珍しいので、贈り物として面白く思う方は多いですね」(猪俣さん)
猪俣さんによれば、高額なレトルトカレーはお店をはじめた2013年頃からあったそうだが、最近増加傾向にあるという。「もともとレトルトカレーを扱う企業から『試してみたい』という声を聞くことは多かったのですが、ここ最近、増えてきています」(猪俣さん)
なぜ増えているのか。あるカレーの製品がそのきっかけではないかと猪俣さんは分析する。そのカレーは茨城県産の高級黒毛和牛を使った「常陸牛(ひたちぎゅう)ビーフカレー」。価格は2000円を超える。
素材を茨城県産にこだわり抜いた「常陸牛ビーフカレー」
猪俣さんによると、数百種類のレトルトカレーがならぶカレーランドでも、2000円を超えるカレーはこれだけだという。「2000円を超える常陸牛ビーフカレーがヒットしたことで、多くの企業が高額レトルトカレーが消費者に受け入れられると実感したのではないでしょうか」
常陸牛とは茨城県の限られた生産者が飼育した牛の中で、さらに肉質の優秀なものだけが認定される高級ブランド。その常陸牛を角切りにしたものが、ごろごろと入っている。内容量250gのうち、150gが常陸牛。煮込むのに最適なモモ肉を使用している。
よく締まった赤身と霜降りの脂肪のバランスがとれた肉を、ふんだんに使用していることを実感するのは、ルーを食べた時だ。煮込む過程でほろほろと崩れた牛肉がルーに混ざり、食べ応えがある。細かく刻んだ野菜の食感も残っていた。
常陸牛に限らず使用している野菜、調味料などもすべて茨城県産にこだわっているという。
「メインとなる具材だけでなく、それ以外の素材もなるべく地域のものを使おうとするレトルトカレーは多いです。しかし供給が止まってしまうリスクやコストの関係から、そのことを明示するのは避けているところが多い。この常陸牛ビーフカレーは野菜はもちろん、ルーに使用するワインやしょうゆなども茨城県産にこだわっている。素材のうち1つでも欠けると生産が止まってしまうため、いつでも手に入るとは限らないんです」(猪俣さん)
薄切りの霜降り肉が上品「松阪牛ビーフカレー」
高級和牛ブランドとして広く知られる松阪牛。「松阪牛ビーフカレー」は、その松阪牛専門の老舗レストラン・まるよしが手がけたレトルトカレーだ。
「ネームバリューのあるブランド牛なので、贈り物として買われる方が多い。辛さも控えめなので幅広い層から人気です」(猪俣さん)
「常陸牛カレー」が大きめの肉が入った食べ応えのあるものだったのに対し、この松阪牛ビーフカレーはじっくり煮込んだ薄切りの霜降り肉が入った上品な仕上がり。「スライスしたものを使うことで、角切りの肉を使うよりも牛肉のうまみがカレーに出やすくなる」(まるよし・広報担当者)
ルーには肉のうまみがじっくりと染みこんでいるだけでなく、甘くまろやかで奥行きがある。どこか懐かしさのある、和風のカレーだ。肉の量が多いわけではないためたくさん食べたい場合は物足りないかもしれないが、「それほど量は多くなくてもいい」という人にはおすすめだ。
まるでエビのポタージュ「"BOSO"伊勢海老カレー」
最後は鴨川シーワールド(千葉県・鴨川市)内の「レストラン オーシャン」で販売されているメニューをレトルトにした「"BOSO"伊勢海老カレー」。伊勢エビの漁獲量全国第1位を誇る千葉県のご当地レトルトカレーだ。
鴨川シーワールド内のレストラン オーシャンでは、房総半島の漁港で水揚げされた海産物や収穫された農産物を積極的に使用し、『房総の魅力を「味」で伝える』をコンセプトにしたメニューを多数開発している。同レストラン初のプライベートブランド商品として発売されたこのカレー、ルーがポタージュ状に近く、封を開けると伊勢エビとトマトの香りが漂う。スパイシーなカレーの風味は控えめで、海老のスープのようでもある。
外箱の写真と比較するとエビの身は小ぶり。しかし、香り高いルーからはエビをふんだんに使用していることが想像できる。
また、レストラン オーシャンの総料理長が監修したアレンジレシピもついている。レシピのメニューは野菜スープ、カレードリア、カレーパスタの3種類。「私もパスタに絡めてスープパスタのようにして食べることがあります。ちょっともったいなく感じますが、湯煎やレンジで温めるだけのレトルトカレーに、あえて一手間を加えるぜいたくもあると思います」(猪俣さん)
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これだけのお金を出すのであればレストランで食べられるのでは、という声もあるかもしれない。だが、猪俣さんは「自分の好きな時に、こっそり贅沢できるのがレトルトの醍醐味」だという。
「いつでも誰でも気軽に食べられるのが、レトルトの良いところ。一人でお店で行って高級カレーを食べるよりずっと手軽です。それにレストランで食べる時は空間やサービスにもお金を払っていると考えると、単純にプレミアムなレトルトカレーを食べたほうが、より高級なカレーを食べているとも考えられるのではないでしょうか」
新年度がはじまったばかりのこの時期、新たな環境で生活をスタートさせた人もいるだろう。「お近づきの印」にレトルトカレーをプレゼントしてみるのもいいかもしれない。もちろん新しいシーズンに向け、がんばる自分へのご褒美にも。
(取材・文 小沼理<かみゆ>)
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