チャートで読む株式相場 移動平均は75日と200日で

確定申告の業務で大忙しだった「たいきちマネー相談所」もようやく一息ついたようです。夕方、藤志郎と利子がケーキを手土産に株式投資の相談に訪れると、アルバイトの新衣紗がなぜか虫眼鏡を持って出てきました。
大学で金融を勉強中の初野新衣紗(はじめの・にいさ=上)と父の藤志郎(とうしろう=中左)、母の利子(りこ=中右)、隣に住むファイナンシャルプランナー・税理士の有賀鯛吉(ありが・たいきち=下)

 りこ かわいそうに。申告書類の見過ぎで目が疲れちゃったのね。

 にいさ そうじゃなくて、鯛吉さんの手相を見てあげたのよ。恋愛運をね。

 とうしろう パパの金運も見てほしいな。株式相場があまりにも乱高下するから、買いのタイミングが難しくて。

 たいきち 売買のタイミングを探るなら、過去の値動きを参考にするチャート分析という方法がありますよ。

 とうしろう その値動きが荒いから困ってるんだ。

 たいきち 毎日の動きではなく、一定期間の株価の上げ下げをならした「移動平均」をみてください。例えば直近5日間の日々の終値を足して5で割れば「5日移動平均」。5日、25日、75日、200日などの種類があります。週単位の終値を平均した13週、26週、52週といった移動平均もよく使われます。

 にいさ 恋愛運も期間によっていろいろだしね。

 たいきち 日々の移動平均値を線でつなぐと移動平均線が描ける。相場の上げ下げにかかわらず、5日よりも25日、25日よりも75日、75日よりも200日の移動平均線のほうが動きが緩やかになって、長期的な傾向が分かりやすくなる。どれを目安にするかは、想定している投資期間によって変わるよ。

 りこ 私なら配当金を何回かもらいたいから、投資期間は2~3年かしら?

 たいきち 数年単位で考える中長期の投資家というわけですね。野村証券チーフ・テクニカル・アナリストの谷晶子さんに聞いたら「75日と200日」の組み合わせを勧めていました。株式投資は「安く買って高く売る」のが大切です。下がってきた200日の移動平均線がだんだん横ばいになり、そして上昇に転じるタイミングで買うのが一つの選択肢です。

 にいさ 75日の移動平均線は?

 たいきち 75日の移動平均線は200日に比べて期間が短いから、上がりやすく、下がりやすいことは分かるよね。だから株価が大底から上昇局面に入るときの移動平均線をみると、75日線が200日線を下から上につき抜けるところがある。これを「ゴールデン・クロス」といって、株価上昇のシグナルとされているんだ。

 とうしろう ゴールデン! いい響きだなあ。

 たいきち 一方、株価が天井圏にあるとき75日線が200日線を上から下につき抜けると「デッド・クロス」といいます。株価が下降局面に入った可能性が高いとされています。ただし移動平均線は日々の株価より遅れて動く性質があります。相場の動きがとてもはやい場合、ゴールデン・クロスやデッド・クロスが出てから売買すると、相場の流れに乗り遅れることがあります。

 りこ 移動平均線だけじゃなくて、チャートの形をみると相場の先行きを占えると聞いたことがあるわ。

 たいきち そうですね。チャートには様々な形があります。例えばやや左に傾いた「W」字を描けば「二番底」といって相場が底入れする可能性があります。3つ並んだ安値のうち真ん中が最も安い「逆三尊底」も同じです。チャート分析は個別銘柄にも利用できて、インターネットではチャートの各パターンになっている銘柄を無料で検索できるサイトもあります。

 りこ せっかくだから「ローソク足」についても聞きたいわ。

 たいきち 株価の始値、終値、高値、安値をすべてひとつの記号で示し、形状がロウソクに似ています。記号の太い部分を実体といって、始値より終値が高くなれば白い「陽線」、始値より終値が安くなれば黒い「陰線」となります。高値と安値それぞれと実体を結ぶ線が「ヒゲ」と呼ばれます。取引1日ごとの「日足」、1週間ごとの「週足」、1カ月ごとの「月足」などがあるんですよ。

 にいさ ローソク足でも相場の先行きが読めるの?

 たいきち そうだよ。例えば相場の安値圏で前日の陰線を包み込むような長い陽線が出ると「包み線」といって、強気のシグナルなんだ。前日に下げた流れを受けて安く始まったけど終値は前日の始値より上げている。それだけ買いの勢いが売りの圧力より強くなったというわけなんだ。逆に高値圏で前日の陽線を包む陰線が出ると弱気のサインとされている。

 りこ ヒゲはどんなことを示す場合があるの?

 たいきち 例えば株価の安値圏で長い下ヒゲが出れば、株価上昇のシグナルとされています。売りに押されていったんは安値を付けたけど、そこから一気に買いが入って株価を戻したということだからです。この反対の理屈で、高値圏で長い上ヒゲが出たら株価下落を警戒したほうがいいとされています。

 とうしろう なるほど。チャート分析は便利だな。

 たいきち ただしチャート分析はあくまで判断材料の一つです。株式取引では企業業績や経済・金融政策、投資家の動向など総合的に考えることが大切です。

■経験則は江戸時代から
野村証券チーフ・テクニカル・アナリスト 谷晶子さん
株価の天井圏のシグナルである「三尊天井」の経験則は、すでに江戸時代の米相場にありました。米国では同じシグナルを人間の上半身になぞらえて「ヘッド・アンド・ショルダー」といいます。相場を動かす投資家心理には古今東西で共通するものがありますから、それをテクニカル分析でつかめば相場の大きな流れに乗って売買することもできます。
テクニカル分析の初心者はまず移動平均線を重視するといいでしょう。中長期の投資家であれば、関心のある銘柄について業績などに問題がないか確認したうえで、200日と75日の移動平均をみて売買のタイミングをはかる手法を勧めます。「ゴールデン・クロス」「デッド・クロス」はそれぞれ株価の大底、天井からはやや遅れますから、リスクを取って早めに売買する選択肢もあります。(聞き手は表悟志)

[日本経済新聞朝刊2016年3月12日付]

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