日本の現在の若手社員は、保守的で安定志向、挑戦心も足りないとよく言われます。
「どの世代の人も悩んだり、思い煩うことが多いでしょうが、今与えられた仕事を全身全霊で取り組むことです。私は鹿児島大学を卒業して京都の焼き物の会社に入った。研究室に配属され、新しい焼き物、ファインセラミックスをお前が考えろと。しかし、この会社は給料を遅配するような『ボロ会社』だった。同僚は早く辞めたいと、私も毎日悩んでいた。結局辞める機会を失って、ここでやるしかないと決めたんです。寮にも帰らず、研究室で朝昼晩と自炊して開発に没頭していた。そしたら、自分でも驚くほど新素材、新製品の開発がうまくいった。宇宙のどこかに『知恵の蔵』というものがあって、神様が一生懸命努力している自分のために(知恵を)授けてくれているのではないか、そう感じたんです」
シャープなど電機大手が経営難に陥っています。会社の再建要請とか、今後も舞い込んでくるのではないでしょうか。
「いやいや、来ても受けません。やる気はありません(笑)。トップの方から経営のご相談を受けることはありますが、再建してくれというのではありません」
日本のリーダーなどビジネスパーソンは、中国など海外と比べて競争力が落ちているとの指摘もありますが。
「中国など海外の方々の原動力は自分の本能の中の欲というか、そんなものがモチベーションになっているケースが多い。しかし、日本人は『世のため人のため』というか、利他の心で、努力している人が少なくないと思います」
今も「利他の心」と自らを厳しく律していますが、「祇園で遊ぼうかな」とは思われないですか。
「祇園にはお付き合いで行くことはあります。しかし、自分から遊びに行くことはありませんよ(笑)」
1955年鹿児島大工卒。59年に京都セラミック(現京セラ)、84年には第二電電(旧DDI)を設立。2005年から現職。「盛和塾」で経営者指導に力を注ぐ。84歳
(代慶達也 京都支社 太田順尚)