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ペット残して逝けない 「後を託す」サービスも増加 130万人のピリオド(7)

2016/3/14

ペットと暮らす特別養護老人ホームの入居者(神奈川県横須賀市の「さくらの里山科」)

高齢者にとって、犬や猫などのペットは癒やしを与えてくれる家族のような存在だ。それだけに「自分が先立った後が心配」と、ペットが行き場を失うことを不安に思う人も少なくない。そんな高齢者の思いをくみ、最期までペットの面倒を見るサービスが広がっている。

「私の手にしがみついて寝る佑介の顔を見ると、幸せを感じる」。沢田富与子さん(72)は、10歳の雄猫、佑介と神奈川県横須賀市の特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で暮らす。

ホームは2012年4月の開所時から、入居者と犬猫との共同生活を認めている。4階建ての2階部分が「ペット可」の居室フロア。現在、入居者が一緒に連れてきたり、飼い主が死亡してホームで引き取ったりした犬6匹、猫10匹がいる。100人の入居者のうち、40人が犬猫と暮らしている。

一人暮らしの沢田さんは、生まれたばかりの佑介を自宅に引き取り、育てていたが、持病が悪化したことから13年9月、佑介とともにホームに入居した。

13年施行の改正動物愛護管理法で、飼い主はペットが命を終えるまで責任を持って飼うことが義務付けられた。一人暮らしや子供が独立した高齢者にはペットとの生活に安らぎを感じ、飼い続けたいと考える人も多い。しかし、「年齢や体力を考えると、とても最期までは世話をしきれない」と、飼うのをあきらめる人も多いとされる。

ホームでは、入居者が亡くなった場合、残されたペットの面倒を最期まで見る。「ホームのペット」として費用を負担し、世話を続け、ペットが亡くなった後は、火葬をして施設裏手の庭にある専用墓地に埋葬する。

「いつ自分がいなくなっても安心」と沢田さん。ホームの若山三千彦施設長は「介護を受けている人でも、ペットと暮らす喜びを味わってもらいたい」と話す。

万一の場合、信託制度を使って新たな飼い主にペットの世話をしてもらうサービスもある。

行政書士らでつくるファミリーアニマル支援協会(本部・東京)は、「ペット信託」を手掛ける。飼い主(委託者)が家族や友人など信頼できる人(受託者)と信託契約を結ぶ。飼育費などを信託財産として専用口座に入れておき、飼い主が死亡したり施設に入ったりした場合、決めていた新たな飼い主などにペットを引き渡し、飼育費を支払うよう委託する。

受託者は契約通りに飼育をする義務があり、ペットが適切に飼育されているか、飼育費が適正に使われているかなどをチェックする信託監督人を置くことができる。

前橋市に住む住谷春也さん(85)は昨年7月、妻(47)とペット信託の契約を結んだ。信託財産は300万円で、地元金融機関に専用口座をつくった。

住谷さんは猫と犬をそれぞれ2匹飼う。夫婦に子供はない。ペット信託契約を結んだのは「自分たちがいなくなると、残されたペットが殺処分される恐れがある」(住谷さん)からという。

これまでの契約数は数十件。同協会の理事で行政書士の松田美幸さんは「信託財産は相続財産とは別なので、ペットのために確実に財産を残せる利点がある」と話す。

飼い主の死亡に備えて、ペットを信頼できる施設に託す費用などを保障する保険も登場した。

アスモ少額短期保険が昨年4月から扱うペットの飼い主向け少額短期保険「ペットのお守り」(保険期間1年)。飼い主が死亡した場合、ペットを託せる身内などへ死亡保険金を最高300万円支払う。84歳まで加入でき、90歳まで更新可能だ。

契約数は累計で50件程度。契約者は「40~60代の女性がほとんど」(飛田浩志社長)で、「面倒を見てくれる人がおらず、早めに手当てをしておこうという人が目立つ」(同)という。

ペットフード協会によると、犬の平均寿命は14.85歳、猫は15.75歳。60~70代で飼い始めれば、自分の死後も生きる可能性は高い。面倒を見られなくなった場合、どうするのか。対応策を考えておく必要がある。

  ◇    

全国犬猫飼育実態調査によると、犬猫の年代別飼育率では50代が最多で60代が続く。ただ、高齢化で飼い主がやむを得ずペットを手放すケースが目立つ。東京都は14年度に飼い主から約200匹の犬猫を引き取った。理由は「高齢化」が25%で最も多く、「病気」や「死亡」が次ぐ。高齢化にかかわる理由が7割近い。

自治体は原則、引き取った犬猫を殺処分する。ただ動物愛護管理法の改正で、飼い主の自己都合による依頼を拒否できるようになった。高齢者が飼い主を見つけるのは難しく、行き場のないペットが増えている。

こんな中、需要が膨らんでいるのが「老犬・老猫ホーム」だ。飼い主や、ペット専用の信託や保険で世話を受託した人が預けられる。環境省によると、飼い主から犬猫を引き取り終生世話をする施設は44施設(14年4月)。法改正前の前年4月の20施設から倍増した。

(大橋正也)

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