美肌菌を増やしてツルツルたまご肌に 朝の水だけ洗顔
ツルツルの肌とガサガサの肌は、なにが違うのか。その答えの一つが肌の「菌」にあるとわかってきた。
人の肌には常に7~10種類の菌がいる。最近の研究で、この菌のバランスと肌状態が密接に関わっていることが明らかになった。
肌の常在菌には、美肌菌と悪玉菌がある。健康な肌では、悪玉菌は美肌菌の働きで一定量以下に保たれている。しかし悪玉菌が増えすぎると、皮膚の水分を保つバリア機能が低下し、乾燥や肌荒れの原因となる。実際にアトピー性皮膚炎の人の皮膚では、悪玉菌が通常の肌よりも増え、肌フローラが乱れていることが確認されている。
一方、「美肌菌である表皮ブドウ球菌は、保湿力のあるグリセリンに似た成分を作り、肌の水分をしっかり守る。さらに、抗菌ペプチドを作って、悪玉菌の増加を防ぐ。この二つの作用で、炎症を抑えて肌荒れのない潤いのある肌を保ちます」と、東京女子医科大学東医療センター皮膚科講師の出来尾格医師は話す。
「美肌菌を増やすには、洗いすぎないこと」(出来尾医師)。そこで今回は出来尾医師が薦める、美肌菌を増やす洗顔法を紹介する。
肌には美肌菌と悪玉菌がいる
肌に表皮ブドウ球菌の出す抗菌ペプチドや、弱酸性に保つアクネ桿菌があれば、悪玉菌の増殖は抑えられる。また、表皮ブドウ球菌が出すグリセリン類似成分がバリア機能を強化し、肌の水分を保つため、自然としっとりとしたツルツルの肌になる。
美肌菌は毛穴や角層に、アクネ菌は主に毛穴の中に存在する。水洗顔では、皮膚の表面に付いた汚れ、アカ、汗だけが落ちるが常在菌はほとんど残る(上の図の左)。美肌菌の増殖が自然に促され、皮膚の水分を守るバリア機能も壊れない。「美肌菌も悪玉菌も残るけれど、美肌菌が抗菌ペプチドを出して悪玉菌の働きを抑えるため、自然に肌の調子が整う」と、出来尾医師は話す。
洗顔料で洗顔すると、界面活性剤が肌表面の常在菌をきれいに洗い流してしまう(上の図の右)。朝に洗顔料を使った後、夜に再び洗顔すると、復活した美肌菌がまた洗い流されるため、肌質も改善しにくい。一度流された菌が元に戻るまでに、12時間かかるといわれる。
日々のスキンケアは、朝は水洗顔、夜のみ洗顔料がベストだ。実際に、3日間朝の水洗顔をした人の肌を出来尾医師が調べたところ、表皮ブドウ球菌、つまり美肌菌が増えていたという。
ひどい乾燥やベタつき、肌荒れを繰り返している人は、3日間の肌断食もお薦めだ。コスメを使うのが美肌菌を乱す原因になることも。コスメも使わず、3日間水洗顔だけで過ごすと、美肌菌が本来の状態に戻るため、なめらかでツルツルな肌になる。
朝の水だけ洗顔
1.水だけで顔を洗う
水だけで丁寧に顔全体をすすごう。38℃くらいのぬるめのお湯でもOK。生え際やあごの裏まで水をいきわたらせるようにすすぐのがコツ。
ニキビのある人は、ニキビの部分とベタつく部分だけ手持ちの洗顔料で洗おう。しっかりと泡立てた泡をのせ、泡が広がらないように気をつけてすすぐ。
2.タオルで水気を取り、保湿ケアを
洗顔後はゴシゴシこすらず、タオルで軽く押さえるようにして水気を取る。乾燥が気になるなら、手持ちの化粧水などで保湿してもOK。乾燥肌などの悩みが深い人は美肌菌の繁殖を邪魔しないコスメを選ぼう。
夜の洗顔と保湿ケア
夜はきちんとメイクを落とすことが必要。手持ちのメイク落としや洗顔料を使おう。泡で肌を包むようにして洗う。
1.メイクを落とし、洗顔料で洗う
夜は、手持ちのメイク落としや洗顔料でしっかり汚れやメイクを落とそう。スクラブ洗顔は避けたい。
2.クリームなどの保湿剤で保湿する
菌たちがスムーズに繁殖できるように、潤いを補う手持ちのクリームや乳液などを使う。乾燥がひどい人は、菌の繁殖を妨げないコスメを使おう。
出来尾 格医師
慶應義塾大学医学部卒業。皮膚科医。自身がアトピー性皮膚炎であることから皮膚常在菌に興味を持ち、研究を始めた同分野の第一人者。現在、自分の表皮ブドウ球菌を培養、肌に戻すアトピー性皮膚炎の治療について研究を進める。
(取材・文 清水すま子、写真 鈴木宏、スタイリング 椎野糸子、ヘア&メイク 依田陽子、モデル 殿柿佳奈)
[日経ヘルス 2016年3月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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