胆管・胆のうがんの実力病院 手術で根治探る(日経実力病院調査)

名古屋大学病院(名古屋市)の胆管がん手術。難しい手術は20時間に及ぶこともある
名古屋大学病院(名古屋市)の胆管がん手術。難しい手術は20時間に及ぶこともある
胆管・胆のうがんは自覚症状がほとんどなく、進行した状態で見つかることが多いがんだ。他のがんに比べ、亡くなる人の割合は高い。日本経済新聞の「実力病院調査」によると、手術の症例数が多い病院はがんが広がった患者でも積極的に受け入れて根治の道を探り、後進育成や内科と協力した治療に力を入れていた。

胆管は肝臓でつくられ、消化吸収を助ける胆汁の十二指腸までの通り道だ。胆のうは胆管から枝分かれして胆汁を一時的にためる袋状の臓器で、食事をすると収縮して排出する。

国立がん研究センターによると、2015年に胆管・胆のうがんにかかった人は推定約2万7千人で、このがんによる死亡者は同1万9千人だった。同年の全てのがんでは98万人に対し37万人。胆管・胆のうがんは罹患(りかん)者に対し、死亡者が多い。

血液検査で検出する方法は確立されておらず、自覚症状も乏しい。体に黄疸(おうだん)が出るなどして、進行した状態で見つかるケースが大半だ。このため5年生存率は約2割と他のがんに比べ低い。

胆管は大きく分けて肝臓と胆管のつなぎ目の「肝門部領域」とそれ以下の「遠位」がある。肝門部領域は消化器系のがんの中で最も手術が難しいとされる。がんが残らないように手術では肝臓の半分以上と胆のう、胆管、周辺のリンパ節を切除する。残った肝臓と胆管をつなぐ再建術も必要となる。

一方、胆のうがんは早期発見なら胆のうだけを切除する。進行すると肝門部や十二指腸、膵臓(すいぞう)など広範な切除が必要になる。

今回の調査で「手術あり」が177例と全国1位だった名古屋大病院(名古屋市)は肝門部領域の手術が5割を占め、うち約半数が最も進行が進んだステージ4だ。梛野(なぎの)正人消化器外科1診療科長は「進行しすぎて他で手術できないと言われた患者もできるだけ手術する」と話す。

通常、胆管の近くを並んで走る肝動脈や門脈までがんが広がった場合は手術をあきらめる。ただ同病院は肝動脈などもまとめて切除し、術後につなぎ直す手術をこれまでに100例以上手掛けた。「いずれも繊細で重要な血管で、非常に高度な技術が必要」(梛野科長)。全国でも手掛ける病院は数えるほどという。

静岡県立静岡がんセンター(静岡県長泉町)の若手外科医は胆管がんの絵を描き手術に備える

手術が141例で全国2位の静岡県立静岡がんセンター(静岡県長泉町)は、肝門部領域の手術を行うのは上坂克彦副院長ら2人に限定している。難易度が高いためだ。

同領域より下の遠位にできたがんでは、膵臓や十二指腸も切除するのが一般的だ。遠位が膵臓内を通っているためで、切除後に直径2ミリほどの膵臓内の膵管と小腸をつなぐなどの再建術も含めると6時間を超す手術になる。縫い付けが不十分だと膵液が漏れ、付近の血管を溶かして出血、死に至る場合もある。上坂副院長は「頻繁に手術している病院で治療すべきだ」と指摘する。

後進育成にも力を注ぐ。若手には患部を撮影したコンピューター断層撮影装置(CT)の画像をもとに、手術のたびに胆管など臓器とともに切除予定の場所などを手描きさせる。「正確な手術をするには、絵を描き頭の中で手術のイメージを固める必要がある」(上坂副院長)

「がんはどれぐらい広がっているんだ」「手術に耐える体力は患者にありそうか」。神奈川県立がんセンター(横浜市)は毎週、消化器外科と同内科の医師が集まり患者の治療方針を決める。森永聡一郎・消化器外科部長は「内科と外科で意見を戦わせた方が医療の質が上がる。監視の目が多くなり、医療事故も防止できる」と話している。

術後の抗がん剤は有効か 標準治療へ臨床試験進む

胆管・胆のうがんでは手術後に抗がん剤を使って再発や他の臓器への転移を抑える補助療法は標準治療とはなっていない。このため有効性を確認しようと名古屋大病院(名古屋市)が中心となり、約50病院が参加して臨床試験を進めている。

手術を受けた約250人の患者が対象。術後に抗がん剤「ゲムシタビン」を投与した患者と、投与しなかった患者の経過を比べる。年内にも結果がまとまる予定だ。

胆管・胆のうがんが再発・転移し、手術できない場合は抗がん剤で治療する。ただ新薬開発はあまり進んでこなかった。ゲムシタビンは2006年の承認で、胆管・胆のうがん向けの抗がん剤では23年ぶりだった。12年に承認された「シスプラチン」と合わせ、現状ではこの2剤を併用するGC療法が最も実績のある抗がん剤治療となっている。

(次回は22日に卵巣がん、頭頸部がん、急性白血病、大腿部骨折のデータを公開する予定です)

調査は(1)症例数(診療実績)(2)医療の質や患者サービス(運営体制)(3)医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
▼診療実績 厚生労働省が2015年11月に公開した14年4月~15年3月の退院患者数を症例数とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1584病院のほか、導入準備中やそれ以外も含め全国の計2942病院を対象にした。症例数の前の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
▼運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の前に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
▼施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目などを比べた。15年9~10月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。
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