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哀愁の「モルダウ」 ピアノ連弾で再発見

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通常はオーケストラで演奏される哀愁の名曲「モルダウ」。チェコの第2の国歌といわれるこの曲を含む連作交響詩「わが祖国」全6曲に、作曲者ベドジフ・スメタナ(1824~84年)自身の編曲によるピアノ連弾版があった。ピアニストの大石真裕さんと稲島早織さんに、1台2人で演奏するピアノ連弾の奥深い世界を案内してもらった。

東京都心の大石さんの自宅にある練習室。半地下16畳のスペースに3台のピアノが並ぶ。その最も奥に据えられたヤマハのピアノに稲島さんと大石さんが並んで向かい、聞き覚えのある哀愁と叙情に満ちた音楽を奏で始めた。「モルダウ」。クラシックファンでなくても、その曲名と旋律に親しみを感じる人は多いだろう。オーケストラによる管弦楽曲として聴いたことがあるはずだ。それが今、ピュアで硬質なピアノの音色で奏でられている。

「スメタナはピアニストに容赦ない。オーケストラの様々な楽器で演奏されるすべての音をピアノの鍵盤に置き換え、音符を書き込もうとした」。大石さんはピアノ連弾版「モルダウ」についてこう評する。「モルダウ」だけでなく、スメタナは「わが祖国」全6曲をピアノ連弾版に編曲している。「高い城」から始まり、「モルダウ」「シャールカ」「ボヘミアの森と草原から」「ターボル」「ブラニーク」と続く。チェコ国民楽派の先駆者による愛国的ロマン主義の傑作群だ。「全曲通しで70分を超える。どの曲も音数が多い。最高難度の連弾作品です」

大石さんと稲島さんは桐朋学園大学の先輩と後輩の間柄。大石さんは2011~15年にチェコのプラハ音楽院に留学し、研さんの成果を披露する演奏会を15年1月にプラハ市内のスメタナ博物館で開いた。その時の演目がピアノ連弾版「わが祖国」全曲。日本から稲島さんを呼んで2人で弾いた。「大石さんにスメタナゆかりの地を案内され、作品への理解を深めることができた。やはり『わが祖国』は全曲通して弾いてこそ見えてくるものがある」と稲島さんは言う。演奏会はチェコの音楽情報誌にレビューが載るほどの反響だった。帰国後、2人は「わが祖国」全曲をホール録音し、16年1月にCDを出してデビューしたばかりだ。

2人が調べた限りでは、プロがレコード会社から出したピアノ連弾版「わが祖国」の全曲録音の公式CDとしては世界で4枚目という。スメタナが連弾版を作曲した意図はよく分かっていない。「レコードやCDがなかった19世紀の欧州では、オーケストラの演奏を聴くにはコンサートホールへ行くしかなかった。ピアノ1台と演奏者2人で足りる連弾版ならば、自宅やささやかな社交場でも気軽に作品を弾いて聴ける。かなり需要があったのではないか」と大石さんは分析する。

作曲家がオーケストラ作品をピアノ連弾版に編曲した例は意外に多い。作曲者自らが手掛けた例としては、チャイコフスキーの「交響曲第6番〈悲愴〉」、ブラームスの「交響曲第1~4番」全曲、ドボルザークの「交響曲第8番」などがある。マーラーはブルックナーの「交響曲第3番」をピアノ連弾用に編曲している。最初からピアノ連弾版として書かれた作品にはブラームスの「ハンガリー舞曲集」、ドボルザークの「スラブ舞曲集」などがある。ピアノ独奏版ではリストがベートーベンの「交響曲第1~9番」全曲を編曲したのが代表例だ。

オーケストラにとっての難曲の一つ、ストラビンスキーのバレエ音楽「春の祭典」にも作曲者自らの筆によるピアノ連弾版がある。世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチさんと「春の祭典」で共演してCDも出した酒井茜さんは、「2人並んで1台で弾くと、腕がぶつかってケガをしかねないほど激しい曲。血を見るかもよ」と話していた。実際、2014年5月の東京と同年6月のスイスのルガノでのアルゲリッチさんと酒井さんの共演は、連弾ではなく、2台のピアノによるものだった。

オーケストラの演奏会が頻繁に催されてレコードもあふれる時代になると「ピアノ連弾作品は忘れられ、廃れていった」と大石さんは言う。そうした連弾作品に今改めて耳を傾ければ、オーケストラからは得難いクリアで硬質なピアノの響きを通じて、複雑な音の構造がくっきりと浮かび上がり、新鮮な感動がある。「埋もれてしまった連弾作品を発掘して魅力を伝えたい」と大石さん。スメタナの命日の5月12日、チェコで毎年「プラハの春音楽祭」が始まるその日、まずは東京のチェコ大使館で「わが祖国」全曲を再演するのが大石さんと稲島さんの当面の目標だ。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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