目線のまま撮る動画 アクションカメラ、広がる楽しみ
小型でタフ、高機能品続々 市場規模は5割増
スキー場でゲレンデを滑り降りる様子や、自転車でのツーリングの風景。動画共有サイトをのぞくと、趣味のアウトドアの様子をその人の目線で撮った動画が数多く見つかる。これを手軽に撮影できるのが「アクションカメラ」。人気に火を付けた米ゴープロに加え、ニコンなど国内勢が発売を表明するなど参入メーカーが増え、活況となっている。
ヨドバシカメラマルチメディアAkiba(東京・千代田)のカメラ売り場。最近、面積を広げているのがアクションカメラだ。数センチメートル角の小さな箱形や細い筒状など、手のひらに載る小さなビデオカメラが7社10機種以上そろう。本体重量は100グラム前後と軽い製品が多く、重さを気にせず様々なところに取り付けることができる。
都内の男性会社員(33)は「ソニーの新製品が気になる」と売り場担当者に熱心に製品情報を尋ねていた。ソニーは手ぶれ補正機能を強化し、従来機種より小型化した新製品を4日に発売したばかり。すでに米ゴープロ製の「ヒーロー」シリーズを使っており、釣りで水中に沈めて魚を映したり、釣った魚をさばく様子を撮ったりしていると話す。動画は友人らとネットで共有して楽しんでいる。
新しい機種を買おうとしているのは、水中で動く魚を撮影したいからだ。「1秒間に撮れるフレーム数が少ないと、動きが素早い魚はほとんど映らない。フレーム数が多くスロー再生も可能なカメラを探している」。ヘルメットの側頭部などに装着するため、四角い形状のヒーローより、筒状の機種の方がよいというのも理由。動画編集にも挑戦したいという。
アクションカメラ市場はゴープロが切り開いた。スマートフォン(スマホ)と比べても小型で、アウトドア活動などの際に身につけて撮影できる。手で持つのとは異なり、両手が空くため、スキーや自転車にのめり込みながら撮影できる。活動中の臨場感ある動画が簡単に撮れるため、2010年の日本本格発売を機にじわじわ人気が広がった。
後発ながらゴープロの人気を脅かすようになってきたのがソニーのアクションカムシリーズだ。撮影した映像をリアルタイムで手元の液晶画面に表示することができる。別の男性会社員(35)は「釣りに行ったとき、水中に沈めたカメラの映像がその場で見られる」と話す。
利用者の増加を受けてカメラメーカーのニコンも参入を表明。米国で今春発売する「キーミッション360」は360度の全方向を高画質で撮影できる。またリコーが18日に発売予定の「WG-M2」は204度の超広角撮影が可能で、防水性能や耐衝撃性能にも優れる。
家電量販店などのアクションカメラ売り場では、自転車などの乗り物やスポーツ用品など様々な場所に取り付ける器具、水中に持ち込める防水ケースなど多彩なアクセサリーも並ぶ。
原動機付き自転車(原付きバイク)のミラーにカメラを取り付ける製品を探しにヨドバシを訪れた男性会社員(42)は「便利になった」と話す。かつてはバイクに大きなビデオカメラを搭載。そのための器具も一つ一つ手作りしていたという。
この男性は幅広い用途に使っている。サイクリングやスキーなどのほか「友人と八ケ岳での観光ガイドの講座を撮影したことも」。立ち乗り電動二輪車のセグウェイの使い方を教える映像などを乗りながら簡単に「自撮り」することもできる。
運動しているときの光景や料理の場面などを目の横や頭、胸元などに取り付けて簡単に撮影できるアクションカメラ。一緒に出かけた友人と臨場感ある映像を共有したり、講座としてネットで公開したりと楽しみも様々だ。撮れた動画を見て改めて気付く楽しみも多そうだ。
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ゴープロ登場以降、アクションカメラ市場は拡大が続く。英調査会社フューチャーソース・コンサルティングによると、2014年の世界の市場規模は前年比44%増の約760万台となった。ビデオカメラ販売が伸び悩む中、成長市場としてメーカー各社が注目している。
もとは機能を絞り込んで気軽に動画撮影できる、小型・安価で楽しみ優先の製品だったが、高画質・高機能を望む声も増加。国内メーカーも製品開発に力を入れる。個性的な製品の登場で利用者の裾野が広がりそうだ。
(企業報道部 小河愛実)
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