地震保険、特約で補償上乗せ 保険料負担に注意

東日本大震災から5年。未曽有の大災害をきっかけに地震保険への関心が高まる中、補償を特約で上乗せする商品が増えている。地震保険の保険金は最大で建物の価値の50%にとどまり、自宅の再建には不十分な面があるからだ。ただし補償を上乗せする分だけ保険料は増えるため、どの程度まで家計で負担できるかをよく考えよう。

まず地震保険の基本的な仕組みを確認しておこう。地震保険は建物や家財が地震・噴火による火災の被害を受けたり、揺れで壊れたりしたときに補償する。津波による被害も対象だ。単独では加入できず火災保険とセットで入る。官民共同で運営するので、どの損害保険会社と契約しても補償内容や保険料は同じだ。

地震保険の加入者は増えている。損害保険料率算出機構によると、火災保険の新規契約時に地震保険にも加入した件数の割合は2014年度で59.3%。東日本大震災が発生した10年度(48.1%)と比べて10ポイント以上増えた。「地震が発生しても家計破綻につながらないように保険で備えることは大切」とファイナンシャルプランナー(FP)の清水香氏は指摘する。

火災保険金の50%

ただし地震保険だけで補償が十分とは限らない。保険金は被害の度合いに応じて出るが、火災保険で契約する額に対し30~50%と決まっている。火災保険金が2000万円なら最大で1000万円だ(図A)。地震保険の制度は1964年の新潟地震をきっかけに始まり、主な目的は被災者の当面の生活を支えること。保険金の使い道は自由だが、例えば戸建てを再建するには不十分な場合が多い。

そこで注目を集めているのが、地震の際の補償を上乗せする特約だ。主契約の火災保険に追加する商品で、主に2つのタイプがある。1つは被災時に地震保険と同額の保険金を出す「地震危険等上乗せ特約」(表B)。地震保険は火災保険金の最大50%を補償するので、合計で100%になる。図Aでは1000万円を追加で受け取るため、自宅の再建に必要な費用を賄える計算だ。

この特約は東京海上日動火災保険が生損保一体型で先行し、02年6月から扱っている。昨年10月には損害保険ジャパン日本興亜が販売を始めた。いずれも地震による火災のほか、損壊や埋没、津波による流失などを補償する。

ただし建物の耐震性が高かったり、高台にあって津波の被害を受けにくかったりするなら、もう1つの「地震火災費用特約」が選択肢になる。補償の上乗せ対象を地震などによる火災に限って、地震保険金とは別に火災保険金の最大50%を補償する。

火災保険にはもともと「地震火災費用保険」という仕組みがあり、自動付帯しているのが一般的。条件をみたせば建物・家財の5%程度を補償するのが主流だ。特約はこの比率を50%まで引き上げられるようにして、地震保険金と合わせて100%を補償する。AIU損害保険に続き、昨年10月から三井住友海上火災保険なども扱い始めている。

持ち家がマンションでも特約の上乗せは検討する余地がある。建物の再建に必要な全額を受け取るのは難しい場合がほとんどとみられるが、生活費に充てたり、住めなくなっても返済義務は残る住宅ローンの負担を軽くしたりすることも見込めるからだ。

比較的少ない保険料負担で地震に備えたい人は少額短期保険(ミニ保険)が一案だろう。SBI少額短期保険の「地震補償保険リスタ」は、火災保険や地震保険に加入しなくても入れるのが最大の利点。世帯人数によって異なるが、東京都内の木造で保険金900万円の場合、保険料は年3万8550円だ。

税制優遇に注意

もちろん上乗せ特約やミニ保険に加入する際は、保険料の負担と見合うかどうかを考慮する必要がある。図Aでは年間保険料が合計で7万円弱になる。上乗せ特約の保険料は3万6000円と地震保険料の約2倍。地震火災費用特約の三井住友海上などでも0.7~0.9倍(都内の場合)が目安と決して小さくはない。しかも保険料は掛け捨てが基本だ。

保険料負担が増えたことで子どもの教育費や老後資金の準備に支障が出ると本末転倒になりかねない。FPの平野敦之氏は「新築直後で住宅ローン残高が多く預貯金は少ない人、自営業など震災で地域経済が悪化すると収入に大きな影響が出やすい人は検討してもいい」と話す。そのうえで「住宅ローンの残高が火災保険金額の半額以下まで減った場合などに特約を見直す手もある」と助言する。

税制優遇の有無にも注意しよう。地震保険料は所得税で5万円、個人住民税で2万5000円を上限に課税所得から差し引ける。地震危険等上乗せ特約の保険料も控除できるが、地震火災費用特約は対象外が多い。(藤井良憲)

■賃貸住まいなら 家財保険にセット
賃貸物件に住むなら、家財への地震保険が選択肢になる。建物の補償をどうするかは家主の責任だからだ。入居者は家財にかける火災保険とセットで地震保険に加入できる。保険金額は地震による家財の損害状況に応じて決まる。建物の地震保険と同じで、火災保険金の50%が受け取れる上限だ。
ミニ保険でも地震被害の補償が付く商品がある。東京海上ミレア少額短期保険の家財保険は年保険料が9500~1万2000円程度の場合で通常の火災、水ぬれ、破損などに250万~500万円の補償がある。地震で建物と家財が全損になれば、地震災害費用として一律20万円を受け取れる。

[日本経済新聞朝刊2016年3月9日付]

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