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その贈与、本当に非課税? 税務署はここを見る

2016/3/13

相続税の節税対策や子供、孫の家計支援のため贈与をする父母、祖父母が増えている。贈与税の基礎控除(年110万円)の範囲内で毎年無税で贈与したり、教育資金や住宅取得資金の贈与の非課税制度を使ったりするなど方法はさまざまだ。ただ贈与の証拠を残さなかったり、非課税制度の適用要件を満たさなかったりすると税務署から指摘されかねない。上手な贈与の仕方をまとめた。

「贈与税の申告をする人が年々増えていることを実感する」。ランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士は話す。贈与税は財産をもらった人にかかり、1年間に贈与された金額について翌年、税務署に申告する。その暦年課税の申告者数は2014年に47万人と、5年前に比べ6割強増えている(グラフA)。

「生前贈与により財産を圧縮し、相続節税につなげようという人が多い」。相続税に詳しい藤曲武美税理士は分析する。特に目立つのが、基礎控除の範囲内で毎年無税で贈与をするケースだ。

例えば親が子供(20歳以上)に1000万円を一度にまとめて贈与すると、贈与税は177万円かかる。一方、毎年100万円ずつ贈与すれば、10年後には無税で1000万円の財産を贈与できたことになる。

■教育目的が増える

基礎控除の範囲内なら申告は不要だが、「生前贈与の証拠を残すためにあえて申告する人が少なくない」(阿保秋声税理士)。こうした例を中心に、納税はしていないが申告だけした人は最近10万人台と高水準が続く(グラフA)。

非課税制度(表C)を利用した贈与も増えている。

教育資金の非課税制度は学校の授業料などに使う目的で29歳までの子供、孫に贈与する場合、一人当たり1500万円までが非課税になる。信託協会によると、関連する商品の契約数は昨年12月末で約15万件と増加の一途をたどっている(グラフB)。

結婚・出産・育児資金の非課税制度は20歳から49歳までの子供、孫に一人当たり1000万円まで贈与できる。住宅取得資金の非課税制度は今年9月までの契約なら1200万円、同10月から来年9月までの契約なら3000万円を20歳以上の子供、孫に贈与できる。

非課税制度は2019年中に終了する予定だが、毎年の贈与を含めてしばらく贈与は活発な状態が続きそうだ。ただ気をつけたいのは税務署の目。「以前は相続税の調査に付随して調べることが多かったが、最近は贈与税自体のチェックが厳しくなっている」と阿保税理士は言う。

税務署に指摘されないで上手に贈与するためのポイントや注意点を表Dにまとめた。

まず基礎控除の範囲内で贈与する場合に大切なのは、贈与する側と贈与される側の意思を毎年、確認しておくこと。最初から毎年渡す合意があったとみなされると、いくら分けて贈与しても税務上は一度にまとめて贈与したとして課税されるリスクがある。あくまで年ごとに決めたことを証明するため毎年、贈与契約書などの記録を残しておくのが望ましい。

「贈与された側が通帳や印鑑などを管理することも大切」(阿保氏)。それがないと一括して贈与したと疑われたり、そもそも贈与がなかったとされたりする可能性が高い。一括贈与をうかがわせる証拠が残っていれば課税される。

非課税制度の活用では適用条件をよく確認することが大切になる。

例えば住宅取得資金の非課税制度では「翌年の3月15日までに物件の引き渡しを受ける」という条件がある。前の年に贈与を受けて住宅購入の契約を結んでいても、工事が遅れるなどして引き渡しが間に合わなければ贈与税がかかる。こうした例は「毎年かなりある」(税務署関係者)。

■税務署から照会も

住宅取得資金の非課税制度を使うには申告が必要だが、これを忘れる人も多い。贈与の翌年の2月1日から3月15日までという期間に申告しないと課税される。

非課税制度を使えない場合も贈与は原則申告が必要なのに、「税務署は贈与を把握していないだろうと思って申告しないケースもある」(阿保氏)。

税務署は登記所(法務局)から定期的に不動産の所有権の名義情報を得ている。所得などの状況から「こんなに多額の物件が買えるはずがなく多額の資金援助を受けた可能性がある」と判断すると税務署は「資産の買入価額などについてのお尋ね」という質問文書を郵送する。

こうしたピンポイントのお尋ねが来たら税務署に目をつけられていると自覚してきちんと回答したほうがいい。無申告とされれば追徴課税されることになりかねない。

贈与税は生活費や教育費を必要な都度、贈与する場合は非課税だ。ただ、もらったお金を使わずに株式投資などの資金に充てると課税対象となる点は要注意だ。

海外に留学する子供や孫へ教育費や生活費を送金する際も慎重にしたい。金額によっては税務署から贈与であると疑われやすいからだ。海外への送金は税務署に把握されやすい。国外送金等調書制度により1回100万円超の海外への送金や海外からの入金について金融機関はその中身を税務署に提出する。

これを基に税務署は使途などについて「お尋ね」を出すことがある。実際に教育費や生活費にかかったことを証明できないと課税される可能性がある。(編集委員 後藤直久)

[日本経済新聞朝刊2016年3月9日付]

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