小麦を抜いて体調改善 「グルテンフリー」健康法

日経ヘルス

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テニスプレイヤー、ジョコビッチ選手やハリウッドセレブも実践していると話題の「グルテンフリー」。最近では、グルテンフリー食品を目にすることも増えてきたが、そもそもグルテンフリーとは何だろうか。また、どんな人に有効なのだろうか。グルテンフリーに詳しい医師に聞いた。
(イラスト:毛利みき)

小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質、グルテン。「グリアジン」と「グルテニン」という2種類のたんぱく質を水でこねることによって形成される。粘りや弾力があり、パンやパスタのもちもち食感のもとになっている。

グルテンは、パンやピザ、パスタ、うどん、ラーメン、お菓子のほか、カレールーなどの加工食品や、天ぷらやフライの衣にも含まれる。これらをはじめ、グルテンを含む食事をとらない健康法がグルテンフリーだ。

小麦アレルギーとは別物

日本でもグルテンフリーを実践する人が増えているが、きちんと内容を理解されていない面もある。誤解の一つが、小麦アレルギーとの混同だ。

治療の現場で患者にグルテンフリーを薦めるスクエアクリニック(神奈川県川崎市)の本間良子院長は、「小麦アレルギーは、食べるとすぐに顔が腫れるなどのアレルギー反応が起こる。グルテンによる不調はこういったアレルギー症状とは別のもの」と説明する。

本間院長によると、慢性の不調に悩む人の中には、小腸がグルテンに過敏に反応する「グルテン過敏症」や、グルテンを消化しにくい「グルテン不耐症」の人たちがいる。こういった人たちがグルテンをとると、「小腸の粘膜に問題が生じ、必要な栄養素が十分に吸収されなかったり、不要な毒素が取り込まれたりする。これが慢性的な不調を呼ぶ」(本間院長)。

[右]食べ物は胃で消化されたあと、小腸に達して吸収が行われる。小腸粘膜の細胞と細胞のつながり具合が程良いレベルだと、不要な毒素や細菌が体内に入らないようにしながら必要な栄養素をきちんと取り込む [左]グルテンに敏感な「グルテン過敏症」やグルテンの消化が難しい「グルテン不耐症」の場合、グルテンをとると小腸粘膜の細胞と細胞のつながりがゆるむ。不要な毒素が入り込み、炎症が起こって小腸の粘膜が壊れやすくなる(図版:三弓素青)
(イラスト:毛利みき)

グルテンによる不調は多岐に渡る。「便秘や下痢、橋本病やリウマチといった自己免疫疾患、副腎疲労、抑うつ症状、PMS(月経前症候群)、片頭痛、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など、さまざまな不調につながる。毒素が入り込めば、肝臓に負担もかかる」と本間院長。グルテンの入った食事をとらないことで、これらの症状を抑える、それがグルテンフリーだ。

「生きるのに必要なものを取り込む場所の問題だから、症状も多岐に渡る」(本間院長)のだが、その幅広さが「グルテンフリーのわかりづらさにつながっている」(スクエアクリニック・本間龍介副院長)のも事実だ。

やせる効果はある

わかりづらさはこんなところにもある。例えば、ネットで「グルテンフリー」を検索すると、「グルテンフリーダイエット」に関する記述が多数登場する。「ダイエット」という言葉から、「やせられるの?」と思う人も多いかもしれない。だが、この「ダイエット」(diet)は、食事法という英語本来の意味で使われている。

では、やせないのかというと、そうではない。「グルテンフリーを実践すると、実際に体重がすとんと落ちる人が多い」と話すのは、新宿溝口クリニックの溝口徹院長だ。「グルテンによって小腸の粘膜が傷むと、絶えず出続ける炎症物質の影響により、脂肪合成が高まる。つまり太りやすく、やせにくい状態になる」(溝口院長)。グルテンを含む食事をやめれば、「炎症が鎮まり、脂肪が蓄積しにくくなる」(溝口院長)という。

3週間抜いて反応を見る

では、自分がグルテンに敏感なタイプかどうかをどうやって判断すればいいのだろう。現在、国内には保険で受けられる検査はない。そこで、本間院長が薦めるのは、「3週間グルテンを抜いてみる」こと。「困っている症状が良くなればグルテンが原因だったとわかる」(本間院長)。グルテンに弱いとわかったら、「その後もずっとゼロにするのが理想だが、食べたい場合は、連日食べないようにするといい」と溝口院長。

「不調があると、薬をのむ、サプリをのむといった足し算の対処ばかり。引くことも試してください」。本間龍介副院長からの提案だ。

■この人たちに聞きました

本間良子院長
スクエアクリニック(神奈川県川崎市)。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学病院総合診療内科入局。日本抗加齢医学会専門医、米国抗加齢医学会フェロー、専門は、内科、皮膚科。著書(監修)に『「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい』(SB新書)などがある
本間龍介副院長
スクエアクリニック副院長。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。日本抗加齢医学会専門医・評議員、米国抗加齢医学会フェロー。自身がかつて「副腎疲労」に苦しんだ経験を生かし、日本では数少ない副腎疲労の外来診療を行っている
溝口徹院長
新宿溝口クリニック(東京都新宿区)。1964年神奈川県生まれ。福島県立医科大学卒業。横浜市立大学病院、国立循環器病センターなどを経て、2003年より現職。栄養学的アプローチで精神疾患のほか、多くの疾患の治療を行う。近著に『2週間で体が変わる グルテンフリー健康法』(青春出版社)がある

(ライター 柳本操)

[日経ヘルス2016年4月号の記事を再構成]