「フジコ」Hulu 「配信ならでは」過激さ武器に
インターネットでの動画配信が盛んだ。ドラマやバラエティーなどを中心に各社は意欲的に制作や配信に乗り出している。中でも話題を集めているのが動画配信サイト「Hulu(フールー)」のオリジナルドラマ「フジコ」(全6話)。昨年11月の配信開始後、同サイトの視聴ランキングで上位に。昨年の年間ランキングでも、地上波の人気ドラマに交じり15位に入った。
撮影時、「店の血のりが品切れになった」(戸石紀子プロデューサー)というほど、過激なシーンの連発が人気の要因だ。主演の尾野真千子はすっぴんで血まみれになるなど、体当たりの演技に挑んでいる。殺人や虐待の生々しい映像も多い。リアルな描写が地上波で満足できないドラマファンの心をつかんでいる。
原作は後味の悪いミステリー「イヤミス」として人気の真梨幸子原作の小説「殺人鬼フジコの衝動」。猟奇的なシーンが多く、映像化は不可能といわれていた。戸石氏は「様々な企画の中で最もとがったものを選んだ」と話す。長年テレビドラマを制作してきた経験から、制約の多い地上波では「絶対できない作り」を徹底的に意識したという。
制作方法にもそれが表れている。テレビの連続ドラマの場合、撮影前に台本が全て出来上がっていることはまれだ。一方、本作では半年以上かけて台本を仕上げてから撮影に臨んだ。CMも放送時間の制約もないため、「いいシーンをカットせずに必要なだけ使うことができた」(戸石氏)のも動画配信ならではの利点といえる。
Huluは日本テレビの子会社が運営するが、今回は月曜夜9時の恋愛ドラマ制作などの実績があるフジテレビ系列の共同テレビに依頼。主人公は幸せを求めながら満たされない飢えから凶行に及ぶ側面もある。戸石氏は「女性としての葛藤をにじませるためには、共同テレビの制作陣が一番ふさわしいと思った」と話す。局に縛られない制作環境が作品に深みを与えた。
過激なシーンは多いが、単なるスプラッターに陥っていないのは、1人の女性の人生を丁寧に描いているからだろう。Huluは男性のユーザーが多いが、今作では女性の支持が厚い。「共感して思わず泣いてしまった」という声も届くという。(赤)
[日本経済新聞夕刊2016年3月9日付]
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