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BCGの特訓

あなたは一生「作業屋」で終わるか、リーダーになるか ~ブレークスルーは3つのマインドセット~

木村亮示/木山聡 ボストン コンサルティング グループ(BCG) パートナー&マネージング・ディレクター

2016/3/16

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●なぜマインドセットが重要なのか

 先に、学校の優等生タイプほどチェックボックス・メンタリティーに陥り、スキルをコレクションする方向に目がいきがちだと書いたが、その原因は受験勉強的なメンタリティーだけではない。スキルの習得に集中するほうが、わかりやすいしスマートに見えるからだろう。

 前回で説明した成長を加速し持続するための3つの要件、(1)マインドセットを持つこと、(2)個別のスキルを習得すること、(3)スキルの使い方を磨くことのうち、スキルの使い方を磨くプロセスは、個別スキルを習得することに比べて泥臭いし、どれだけ頑張れば成果が出るのかもわかりにくい。

 ましてやマインドセットと言われても、それがどんなものか、はっきりしないし、目に見える成果に直結しているようには思えないだろう。

 しかし、だからこそマインドセットが重要だと言えるのだ。

 ビジネスパーソンはどの企業でも、働くにつれて求められる役割が変化する。あわせて、求められるパフォーマンスの質も変化する。

 新入社員に(特に日本企業において)求められるのは、作業者としてのパフォーマンスが中心であることが多く、この頃はリーダーについていく「フォロワー」だ。スキルだけで貢献できるのは、この段階のみと言っていい。主にリーダーから与えられた指示に従って仕事(作業)をするので、スキルを習得して作業効率が上がることが成長となる。

 しかし、スキルマニアの人たちは、そのまま一生「作業屋」、あるいはフォロワーであり続けたいのだろうか。

 他人の答えで仕事をするフォロワーから、自分の答えで仕事をするリーダーになりたいのであれば、ひとつ壁を越えなくてはならない。

 そして、その壁を越えるために必要なのが、3つのマインドセットなのである。それぞれ詳しく見ていこう(図1-3)。

●他者への貢献に対する強い思い――マインドセット(1)

 非常に逆説的ではあるが、「成長したい」というのが主たる動機で仕事をしている人は、十分な成長が見られない傾向がある。

 彼ら、彼女らの「成長したい」という思いの背景には、褒められたい、給料を上げたい、または、成長を実感して自分が満足したい、などの理由があり、主体はあくまでも「自分」だ。

 しかし、本来、成長は“手段”にすぎない。成長が目的になると、壁に突き当たったときに乗り越えるための力が出ない。自分の成長は自分だけのものなので、自分があきらめてしまうとその頑張りが続かないからだ。

 自己成長が好きな人は、プライドが高いことが多く、失敗し続けながらも挑戦を繰り返すという「泥臭いこと」を避けてしまいがちである。あともう少しの頑張りでブレークスルーなのに……というところであきらめてしまう。

 一方、うまくクライアントの役に立てなかったときや十分な貢献ができなかったときに、「クライアントの役に立ちたい」「成果を出したい」「貢献をしたい」という気持ちが強い人ほど、自分自身の力の足りなさにいらだちを感じ、成長したいという思いを持つ。こうした「クライアントの役に立てるようになるために成長したい」という気持ちが、一番強い成長の原動力になるのだ。

 我々コンサルタントに持ち込まれる相談は、基本的に難しい話ばかりだ。クライアント単独で解決するのが難しいからこそ依頼を受ける。それなのに、一緒になってあきらめてしまっては意味がない。

 正解が見えないなかで、何度もチャレンジをするのはとても苦しい。そうした苦しいときに、足を止めてしまうのか、それとも頑張れるのか。結局その違いは、「役に立ちたい」「成果を出したい」という気持ちがどれだけ強いかに尽きる。

●何度もチャレンジを継続できる折れない心――マインドセット(2)

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 学校の勉強や資格試験であれば、過去の問題をある程度解けば、出題のパターンがわかるし、成功(合格)への近道も見えてくる。しかし、ビジネスではそうはいかない。存在するすべてのパターンを学ぶことはできないのだ。

 前提条件はどんどん変化するし、そもそもどんな前提条件が存在しているかわからず、不安なまま走り出さなくてはならないことが多い。実地経験を積むことでしか学べないので、近道は存在しないのだ。「近道は存在しない」と認識するところがスタート地点だと言える。

 「こっちの道を行けば近い」とわかっている経路ばかりを通ったり、「自分ならできる」とわかっていることだけをやったりしていては、成果につながらないばかりか、成長することなどできはしない。

 できるかできないか不明な状況でも足を止めず、あきらめずにやってみないと、成長はできないのだ。

 「不安だ」と思うのは、今の自分ではできないかもしれないと感じるからだ。できないかもしれなくても、その不安に負けずにやってみることで、学ぶことができる。不安に思う気持ちのなかに成長の芽がある。

 そこで足を止めてしまっては、みすみす成長の芽を枯らせてしまうことになる。逆に居心地の良い状況に身を置いている限り、成長は加速しない。

 「最近調子がいいな、うまくいくな」と思ったら、むしろ要注意なのだ。

 ある経営者の方と議論をしていたときのことだ。「最近は経営者受難の時代になりましたね」というこちらの問いかけに対して、「安定した環境だと変化できないでしょう。新しいことにチャレンジするうえでは、最高の環境だと思っていますよ」という答えが返ってきた。

 この経営者の方が、「社内に抵抗勢力がいてできなかったことに着手できる」と前向きに捉えて話をされていたのが強く印象に残っている。

 気持ちのなかの「慣性の法則」をどうマネジメントするか――。「抵抗勢力」は我々一人ひとりの気持ちのなかにも存在する。

 そうやって、自分自身のなかの「抵抗勢力」に打ち勝ち、チャレンジするようになったら絶対にいつかは失敗する。そのときに大切なのは、「やっぱり、やめておけばよかった」と思わないことだ。

 世の中、やってみなければわからないことばかりである。すでにBCG(ボストン コンサルティング グループ)を引退した、ある元パートナーがこう言っていた。

 「若いうちにできるだけ多くの失敗をしたほうがいい。責任が重くなってからの失敗は周りに迷惑がかかる。たくさんの失敗を経験するというのも、若いうちにしかできない経験の一つだ」

●できない事実を受け入れる素直さ――マインドセット(3)

 新卒でも中途採用でも、BCGに入ってくる人は、成功体験を持っている人が多い。自信も持っている。そういった人たちが陥りやすい罠(わな)がある。

 壁にぶつかったとき、無意識とも言えるレベルでまず「マネジャーが悪い」「チームのメンバーが悪い」「データがなかった」など、周りに原因を求めてしまうのだ。「自分にはこの会社は合わない」「向いていない」と、あきらめてしまう人もいる。

 しかし、長期的に成長し成功しているコンサルタントには、失敗したときやうまくいかないときに、まず「自分に原因があるのではないか」と考え、客観的に振り返る素直さや謙虚さが備わっている。そこから改善点を見つけて、建設的により良い解ややり方を追求していくことができる。

 世間一般には、コンサルタントというと、自信満々で理路整然と自説を主張する人というイメージを持たれているかもしれない。しかし、付加価値を生み出し、成果を出し続けるコンサルタントは、実はこうした素直さや謙虚さを持っているものだ。

 壁にぶつかったときに、すぐに人や環境のせいにする人が、そこで成長を止めてしまうのに対し、「どうしたらうまくいくのか?」「何をすれば役に立つのか?」という発想に切り替えて頑張れる人は、失敗や壁さえも糧にして成長を続けられる。

 自分では変えようがない、他人の行動や環境、運にばかり目を向けると、結局立ち止まり、あきらめてしまうことになる。

 一方、自分ができることにフォーカスして、絶えず「どうすれば役に立つのか?」を考えられる人のほうが、長期的に見て成長でき、成果に貢献できる。これは、コンサルティング業界だけではないはずだ。

[2016年2月12日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

木村 亮示(きむら・りょうじ)
BCG東京オフィス パートナー&マネージング・ディレクター
京都大学経済学部卒業。HEC経営大学院経営学修士(MBA)。国際協力銀行、BCGパリオフィスを経て現在に至る。幅広い業界のクライアントに対して各種事業戦略の策定・実行支援、新規事業立ち上げ、トランスフォーメーション(構造的改革)などのコンサルティングを行っている。BCGジャパン 人事/人材チームの総責任者として、コンサルティングスタッフの育成、採用、人材マネジメン卜などを統括している。アジアパシフィックの採用チームリーダーも務める。
木山 聡(きやま・さとし)
BCG中部・関西オフィス パートナー&マネージング・ディレクター
東京大学経済学部卒業。伊藤忠商事株式会社を経て現在に至る。広範な業界のクライアントに対して各種事業戦略、新興国戦略の策定・実行、トランスフォーメーション(構造的改革)、ガバナンス改革等の支援を行っている。BCG中部・関西オフィスの社内マネジメン卜を統括するとともに、BCGジャパン 人事/人材チームのコンサルタン卜育成委員会のリーダーとしてコンサルティングスタッフの育成に携わる。

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