しかし、本来、成長は“手段”にすぎない。成長が目的になると、壁に突き当たったときに乗り越えるための力が出ない。自分の成長は自分だけのものなので、自分があきらめてしまうとその頑張りが続かないからだ。
自己成長が好きな人は、プライドが高いことが多く、失敗し続けながらも挑戦を繰り返すという「泥臭いこと」を避けてしまいがちである。あともう少しの頑張りでブレークスルーなのに……というところであきらめてしまう。
一方、うまくクライアントの役に立てなかったときや十分な貢献ができなかったときに、「クライアントの役に立ちたい」「成果を出したい」「貢献をしたい」という気持ちが強い人ほど、自分自身の力の足りなさにいらだちを感じ、成長したいという思いを持つ。こうした「クライアントの役に立てるようになるために成長したい」という気持ちが、一番強い成長の原動力になるのだ。
我々コンサルタントに持ち込まれる相談は、基本的に難しい話ばかりだ。クライアント単独で解決するのが難しいからこそ依頼を受ける。それなのに、一緒になってあきらめてしまっては意味がない。
正解が見えないなかで、何度もチャレンジをするのはとても苦しい。そうした苦しいときに、足を止めてしまうのか、それとも頑張れるのか。結局その違いは、「役に立ちたい」「成果を出したい」という気持ちがどれだけ強いかに尽きる。
●何度もチャレンジを継続できる折れない心――マインドセット(2)

学校の勉強や資格試験であれば、過去の問題をある程度解けば、出題のパターンがわかるし、成功(合格)への近道も見えてくる。しかし、ビジネスではそうはいかない。存在するすべてのパターンを学ぶことはできないのだ。
前提条件はどんどん変化するし、そもそもどんな前提条件が存在しているかわからず、不安なまま走り出さなくてはならないことが多い。実地経験を積むことでしか学べないので、近道は存在しないのだ。「近道は存在しない」と認識するところがスタート地点だと言える。
「こっちの道を行けば近い」とわかっている経路ばかりを通ったり、「自分ならできる」とわかっていることだけをやったりしていては、成果につながらないばかりか、成長することなどできはしない。
できるかできないか不明な状況でも足を止めず、あきらめずにやってみないと、成長はできないのだ。
「不安だ」と思うのは、今の自分ではできないかもしれないと感じるからだ。できないかもしれなくても、その不安に負けずにやってみることで、学ぶことができる。不安に思う気持ちのなかに成長の芽がある。
そこで足を止めてしまっては、みすみす成長の芽を枯らせてしまうことになる。逆に居心地の良い状況に身を置いている限り、成長は加速しない。
「最近調子がいいな、うまくいくな」と思ったら、むしろ要注意なのだ。
ある経営者の方と議論をしていたときのことだ。「最近は経営者受難の時代になりましたね」というこちらの問いかけに対して、「安定した環境だと変化できないでしょう。新しいことにチャレンジするうえでは、最高の環境だと思っていますよ」という答えが返ってきた。
この経営者の方が、「社内に抵抗勢力がいてできなかったことに着手できる」と前向きに捉えて話をされていたのが強く印象に残っている。
気持ちのなかの「慣性の法則」をどうマネジメントするか――。「抵抗勢力」は我々一人ひとりの気持ちのなかにも存在する。
そうやって、自分自身のなかの「抵抗勢力」に打ち勝ち、チャレンジするようになったら絶対にいつかは失敗する。そのときに大切なのは、「やっぱり、やめておけばよかった」と思わないことだ。
世の中、やってみなければわからないことばかりである。すでにBCG(ボストン コンサルティング グループ)を引退した、ある元パートナーがこう言っていた。
「若いうちにできるだけ多くの失敗をしたほうがいい。責任が重くなってからの失敗は周りに迷惑がかかる。たくさんの失敗を経験するというのも、若いうちにしかできない経験の一つだ」
●できない事実を受け入れる素直さ――マインドセット(3)
新卒でも中途採用でも、BCGに入ってくる人は、成功体験を持っている人が多い。自信も持っている。そういった人たちが陥りやすい罠(わな)がある。