海外からも心待ち、日本の桜とお花見
インバウンドサイト発 日本発見旅
8月に「来年の桜はいつ咲く?」と問い合わせが
もうすぐお花見の季節ですね。最近は、日本人と同じようにお花見を楽しむ外国人観光客の姿があちこちで見られるようになりました。
「japan-guide.com」では2009年から「桜リポート」というページを開設し、毎年3月後半(時には2月の河津桜も)から5月の連休過ぎまで、全スタッフで桜前線を追いかけて取材をしています。
ユーザーからも毎年多くの問い合わせがあり、最も早い人は前年の8月に「来年の桜はいつごろ咲きますか?」と質問してくるほど。笑い話のようですが、欧米の人たちにとって春はイースター休暇があり旅行シーズンでもあるので、せっかく日本に行くのならお花見をしたい、早く情報を知りたいという気持ちからなのでしょう。
普段はシャイな日本人が…「お花見」の意外性
外国人もお花見が好きなのには、いくつか理由があります。
美しい桜の風景が見られるのはもちろんですが、「お花見」という文化にもひかれているのです。満開の桜のもと、お弁当を広げたり、宴会を始めたり……。真面目でシャイなイメージがある日本人が、戸外でお酒を飲んで賑やかに過ごしているシーンは外国の人にとってはインパクトがあるらしく、そんな日本人を見るのが楽しくもあるようです。
リラックスして気持ちが大きくなると、外国人との垣根もグンと低くなり、言葉は通じなくても「一緒に楽しみましょう!」という雰囲気になるので、旅行者にとっては日本の人たちと触れ合うチャンス。彼らは旅先でのこうした触れ合いも意外に求めているものなのです。
お花見スポットには露天商なども出ているので、日本の屋台フードを味わったり、ローカルなお土産品を見たりするのも、楽しい体験になっているそうです。
満開の期間が短い、はかなさも魅力
夫が日本で初めてお花見をしたのは1996年。当時は2人ともカナダのバンクーバーに住んでおり、彼の日本での短期語学留学と私の帰省が重なった4月、私は張り切って桜の名所に案内しました。ところが彼はお花見の光景を不思議そうに眺めるだけ。なぜこんなに人が集まり、異様に盛り上がっているのだろう? と思っていたようです。
ところが、「桜は満開になってからわずか数日で散ってしまう」と話した時、彼の目の色が変わるのが分かりました。お花見に盛り上がる理由に納得したのでしょう。
それからは、彼が桜にハマりました。バンクーバーにはかつて日本から寄贈され植樹された桜がたくさんあるので、戻ってからは毎年、桜観測日記をつけ始め、専門書を読んで桜の種類にも詳しくなっていきました。その経験がサイトにも生かされ、今では独自に開花予想情報まで出しているほどです。桜リポートは今年で8年目。外国人旅行者にも行きやすいスポットを中心に、枝垂れ桜や八重桜など種類の解説やお花見のマナーなども含めて情報発信しています。
私自身は取材に同行しながら、桜の様々な状態に名前をつけて最後の最後まで桜をめでる日本人の心に、改めて感銘を受けています。花がすみ、花明かり、桜吹雪、花いかだなど、美しい名称のなんと多いことか。今年もまた各地からの開花ニュースに心躍らせつつ、北から葉桜の便りが聞かれるまで楽しみたいと思っています。
外国人ゲストを連れていくならここがおすすめ
京都や富士山周辺など外国人観光客が好む名所はたくさんありますが、都心から行きやすい場所を中心に、桜のおすすめスポットをピックアップしてみました。
新宿御苑(東京都新宿区)……桜の種類が多く開花時期が異なるので、観賞できる期間が長い。ロケーションもよい。飲酒・アルコール類持ち込みは禁止。
小石川植物園(東京都文京区)……比較的人が少なく、都内では穴場的スポット。ここも飲酒は禁止。
国営昭和記念公園(東京都立川市)……広大な公園なので、混み合う時期でもゆったり楽しめる。開花は都心より少し遅い。
熊谷桜堤(埼玉県熊谷市)……川沿いの土手約2kmに渡る桜並木は圧巻。都内からも行きやすい。
花見山(福島県福島市)……個人所有の山を一般公開。素晴らしい景観だが近年人気が高まりたいへん混雑しているので、注意事項を守って出かけてほしい。
ジャパンガイド(株)取締役。群馬県生まれ。海外旅行情報誌の編集者を経て、フリーの旅行ライターとなり、取材等で訪れた国は約30カ国。1994年バンクーバーに留学。クラスメートとしてスイス人のステファン・シャウエッカーと出会い、98年に結婚。2003年、2人で日本に移住。夫の個人事業だった、日本を紹介する英語のウェブサイト「japan-guide.com」を07年にジャパンガイド株式会社として法人化。All About国際結婚ガイド、夫の著書『外国人が選んだ日本百景』(講談社+α新書)『外国人だけが知っている美しい日本』(大和書房)等の編集にも協力。
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