隠れ赤字に気づかない 大ざっぱすぎる家計管理家計再生コンサルタント 横山光昭

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「もう少しお金を増やすには、投資などで運用をしたほうがいいでしょうか?」と相談に来たのは、結婚3年目のJさんご夫婦。会社員のご主人(35)、パート勤務の奥さん(33)の2人暮らしで、お子さんはまだいらっしゃいません。毎年貯蓄は少しずつ増えていて、家計管理の改善法というよりは、資産運用について教えてほしいと意気込んでいらっしゃいます。

ただ、Jさん夫婦の家計の状況を確認してからでないと資産運用はお勧めできませんので、毎月の収支などを伺いました。しかし、Jさんご夫婦が把握している支出は家賃ぐらいで、食費がいくらなのか、日用品にどのぐらいお金を使っているのかなどはわからないと言います。毎月の家計の収支について、ほとんど把握していないのです。

何を根拠に貯蓄が増えていると判断しているのかをお聞きしたところ、「通帳の残高を年末にチェックし、前年末より増えているかどうか」を基準にしているとのこと。おおよそ、毎年50万円前後、残高が増えているそうです。

家計管理の方法を聞くと、夫婦それぞれの小遣いは4万円で、それ以外の収入は共有の口座に入れ、生活費に充てています。夫に支給されるボーナスも共有口座に入れ、やりくりしていると言います。

毎月の収支は赤字の月もあれば黒字の月もありますが、「最終的に年間通して増えていればいいと思う」とJさん。ですが、今後お子さんを望んでおり、子どものためのお金も準備したいし、貯蓄ももっと増やしたいそうです。それなら、支出見直しに取り組みにくい年ベースの家計管理から、月ベースの家計管理に変えていくほうが好ましいでしょう。

年ベースで家計をとらえることの欠点は、期間が長すぎて無駄な支出に気づきにくくなりがちなところです。支出を管理する期間は短いほうが管理がきちんとでき、無駄な支出も見えやすくなります。

お二人も例外なくおおざっぱな家計管理で、毎月の収支が赤字の月があっても、いつのまにかボーナスで補填されているため、なんとなくやりくりできている感覚になっています。

赤字になる月は、小旅行のための娯楽費や友人との交際費がかさむ月だということ。毎月の収入の中から出しているのか、ボーナスから出しているのかが曖昧になっているため、月の収支が見えにくく、家計の健康状態を把握しにくくなっているのです。

資産運用を考える前に、まずは家計の状況を整えることが貯蓄を増やす近道です。そこで、家計管理を月ベースに変えていきました。これまで年ベースだったので毎月の支出額は定かではないそうですが、ヒアリングの結果、毎月1万5000円程度の赤字が出ている家計なのではないかと予想しました。

交際費、娯楽費については、友人ご夫婦との食事会代1万円、夫婦で楽しむ外出代5000円と毎月最低限かかるものについては毎月の収入から支払い、それ以外に臨時でかかる交際費、娯楽費はボーナスから支払うというルールをつくりました。さらに、ご本人たちが最近気になっているという格安スマホに変更したことで、通信費も1万円に下がりました。

交際費、娯楽費について毎月、予算を決め、それ以外は特別支出扱いにすることで、交際費は2万8000円、娯楽費は4万3000円、通信費は1万2000円削減できました。合計8万3000円もの削減です。

もともと1万5000円の赤字という試算でしたから、6万8000円を毎月余らせることができる計算です。加えて、特別支出の交際費、娯楽費は、年間40万円の予算としました。計画的に使わないとすぐに足りなくなる金額ですが、この中で収めるよう努力したいというご夫婦の希望額です。

夫のボーナスの手取りが年間100万円ほどでしたから、予定通り支給されれば60万円は残ります。月の残りと合わせると、1年間で141万円ほど貯蓄できる家計となります。もともとは毎年50万円ほどの貯蓄ができる家計でしたが、91万円ほど貯蓄額を増やせる見込みとなりました。実際には計画通りいかないこともあるでしょうが、少なくとも今までよりは貯蓄額を増やせる家計になったのは間違いないでしょう。

年単位で家計を管理しているという人は、実は結構多くいらっしゃいます。ぎりぎりの収入で生活しているご家庭よりは、多少ゆとりがある暮らしをしているご家庭に多いですね。

ただ、子どもの出産・進学などで支出項目や生活スタイルが変わると、1年の貯蓄額はすぐにマイナスになってしまいがちです。今後、家族構成などに変化がありそうなご家庭には向いていません。

また、年単位で見る家計管理は、ボーナスがあってこそ何とか回っているという場合が多いことを覚えておきましょう。必ず支給されるという保証があるわけではないボーナスをあてにするよりは、月々の収入の範囲内で家計をしっかり見ていくほうが、揺るがない家計をつくることができるのです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は3月23日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『おひとり』を不安0で生き抜く女子貯金」(祥伝社)。
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