昨年受け取った保険の満期金 確定申告どうなる?

長年かけていた保険が満期になった際、受け取った満期金は「一時所得」と分類されます。サラリーマンのAさんは、昨年、保険が満期になり、奥様と一緒に街中の保険の相談窓口に行ってみたそうです。Aさんとのやりとりを再現してみましょう。

A:「最近、便利になりましたよね~」
飯田:「何がです?」
A:「街中でも保険のこと、相談に乗ってくれるんですよね」
飯田:「保険の相談窓口ってやつですか?」
A:「ええ。実は、去年、保険が満期になったんですよ」
飯田:「ふ~ん」
A:「それで、嫁と一緒に聞きに行ってきたんです」
飯田:「そうなんや~」
A:「色々と勉強になりました」
飯田:「それはよかったですね」
A:「具体的にどうするかは、まだ決めれてないんですけどね」
飯田:「保険の満期金を受け取ったら、お給料と合わせて一時所得で申告しないといけないんですけど、それは済ませられたんですか?」
A:「その説明は、保険の人にも聞きました。計算してもらったんですけど、ぎりぎり20万円を超えなかったんです」
飯田:「あっ、そしたら申告はしなくってもいいってことなんですね」
A:「はい! こっちのお金も20万円以下に抑えられたし……」
飯田:「えっ、こっちのお金?」
A:「あっ、副業サイトで稼いだお金です」
飯田:「それが20万円以下やったってこと?」
A:「はい。確か、副業は収入の金額ではなくて、給与所得以外の『所得』が20万円以下やったら確定申告しなくていいんですよね」
飯田:「う~ん。まあ、そこだけ読めばそうなんですけど……」
A:「えっ、間違ってるんですか?」
飯田:「給与所得以外って、理解してます?」
A:「???」
飯田:「給与所得以外っていうのは、アルバイトで稼いだ所得のことだけをいうんと違うんですよ」
A:「え~、どういうことですか?」
飯田:「お給料以外の所得を全部合計して、20万円を超えるかどうか判断せんとあかんってことなんです」
A:「ってことは……?」
飯田:「アルバイトと満期保険金の一時所得とを合計したら20万円超えますよね」
A:「はい……。それって、申告せんと黙ってたら、どうなるんですか?」
飯田:「まあ、いつになるかはわかりませんけど、『申告するの忘れてませんか?』って税務署からおたずねがあるかもってことですかね」
A:「ええ~~」

生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金などを受けとった場合、一時所得が課税されます。

・一時所得=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)

一時所得は長い期間に発生した所得であるという考え方から、他の所得よりも課税が緩やかになるような計算方法になっています。実際に受け取った一時金から、今まで掛けていた保険料を差し引いて、そこからさらに50万円を控除した金額を一時所得としているのは、そういう理由です。

さらに、税金の計算をする場合は、その一時所得の金額の2分の1に税率をかけるという計算になっています。

さて、このコラムでサラリーマンの副業について書いた「副業するなら 収入と所得の違いを把握(2015年12月15日)」はたくさんの方が読んでくださっていたことからもわかるように、20万円を超えないようにしながら副業をすることに関心をお持ちの方がたくさんいらっしゃるようです。

ここでもう一度、給与所得者の方で確定申告をしなければならない人の定義を確認しておきましょう。

国税庁のホームページ→税について調べる→タックスアンサー→所得税→給与所得者と確定申告→「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」と進みましょう。

No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(前略)2 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人(後略)

「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額」という部分に注目してください。確定申告書を見ていただくとわかるのですが、所得金額には利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類があります。

お給料以外に何かしらの所得を得た場合、給与所得以外の所得一つ一つが20万円を超えるかどうかではなく、給与所得と退職所得以外の8種類の所得の合計金額が20万円を超えるかどうかが、確定申告が必要かどうかの判断基準になるのです。

サラリーマンの方に関する案件については税務調査という形でお宅にお伺いするのではなく、「お尋ね」のはがきを出し、税務署に来てもらって、期限後申告もしくは修正申告書を提出していただくことになります。

そんなことにならないよう、昨年、給与以外になにかしらお金を手にした覚えがある方は、今月15日までの間に再度確認をされることをお勧めします。

「え~、そんなん、先に言うといてもろたらちゃんと申告したのに……」。税務署が呼び出しをすると、そんなことをおっしゃる納税者の方がたくさんいらっしゃいました。

日本は申告納税制度をとっています。毎年1月1日から12月31日までの所得金額を合計して、申告が必要な人は翌年の3月15日までに申告するということが法律で決められているのです。

昨今、確定申告に関する情報はインターネットなどで手軽に入手することができるようになりました。けれども、その際、どうしても自分に都合のいいように解釈しがちです。そんな中、「えっ? ホントにそうなの?」「あれっ、これって大丈夫なのかしら?」と思うことがあるかもしれません。

その際の判断基準は、あくまで自分自身です。心の内にある“良心”の声を聴くことが、正しい申告と納税のために大切なのではないかと思います。

飯田真弓(いいだ・まゆみ) 税理士。産業カウンセラー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生。26年間国税調査官として7カ所の税務署でのべ700件に及ぶ税務調査に従事。在職中に心理学を学び認定心理士の資格を取得。2008年に退職し12年(社)日本マインドヘルス協会を設立し代表理事に。関西弁でテンポ良い税務調査の講演やメンタルヘルス研修(ワークショップ)は「眠くならない!」と好評。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』(ともに日本経済新聞出版社)。DVDに『税務調査に選ばれる企業の共通点』(H&W)他。facebookに「税務署は見ている」研究会(https://www.facebook.com/zeimushohamiteiru)。
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