被災地支援は「忘却との闘い」 大野和士指揮都響のいわき公演
東日本大震災や東京電力福島第1原子力発電所事故により、多くの人が避難生活を送る福島県いわき市。東京都交響楽団は2月26日、いわき芸術文化交流館アリオスで、同市内の小中学校に通う児童・生徒のためのコンサート「ボクとわたしとオーケストラ」を開いた。被災地の子供たちを励ますために2012年から始めた。5回目の今回は音楽監督で仏国立リヨン歌劇場首席指揮者も兼任する大野和士さんがマエストロを務めた。
公演には小学校15校約1650人と中学校14校約1450人が招待された。この中には双葉町立双葉南小学校と双葉北小学校の2校がいわき市で開校した双葉町立南北小学校のように、震災や原発事故で移転を余儀なくされた学校の子供たちも多く含まれる。彼らは世界でもトップレベルの演奏が始まると真剣な表情で聴き入っていたが、軽快な「ラデツキー行進曲」では手拍子をとるなど全身で演奏を楽しんだ。合唱では全員が大きな声で歌い、オーケストラと客席が一体となって会場に響き渡った。
大野さんはこれまで、被災者のために病院や学校などでミニ演奏会の活動を続けてきたが、オーケストラを率いての大掛かりな公演は今回が初めて。演奏を聴いた子供の一人は「震災から時間がたっているのに気にかけてくれる人がいてくれてうれしい」と感想を話した。大野さんは「そんなふうに言ってくれて、こちらの方が涙が出るくらいうれしい」と感激していた。震災からまもなく5年。「続けていくことがいちばん大事、忘却との闘いだ」と被災地支援への思いを新たにしていた。
(映像報道部 斎藤一美)
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