ハイレゾ対海外勢「1万円切り」イヤホンのベスト

日経トレンディネット

moxpad MO-X6(ワイズテック) 実売価格/4980円
moxpad MO-X6(ワイズテック) 実売価格/4980円
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5000~1万円の価格帯にあるイヤホンは選びがいがある。高音質をウリにする製品が出てきたり、目新しいブランドが次々に登場していることがその理由だ。

2015年のトレンドとして、スマホや携帯音楽プレイヤーなどで、高音質を楽しむ「ハイレゾ」の浸透が進んだ。ハイレゾ対応の条件となる再生周波数帯域の上限(高音域)は40kHz。以前、このスペックを満たしたモデルは1万~数万円の製品に限られていた。

ところが、2015年夏ごろから、1万円以下でも40kHzの基準を満たすモデルが続々登場してきた。つまり5000~1万円でもハイレゾ音源に対応したイヤホンを選べる下地が整ったというわけだ。

またイヤホン専門店では海外ブランドを多く扱っているが、こうしたブランドが選択肢に入るのも5000~1万円の価格帯の面白いところだ。

そこで今回、定番製品から海外ブランドまで、実売価格で税込み5000~1万円のイヤホンのなかから、ネットや実店舗で人気のあるモデルをピックアップ。それらを実際に聴き比べて評価した。製品選びにあたってはヘッドホン・イヤホン専門店の「e☆イヤホン」にも協力していただいた。

なお、音質評価にあたっては、iPhone 6のイヤホンジャックを利用。ハイレゾ音源の相性チェック用には外付けのポータブルアンプOPPOのHA-2を接続。クラシックからロック、ジャズ、アニソンに至るまで、全8ジャンルの音源を用意して聴き比べた。そしてiPhone付属イヤホンと比べた音質を、5つ星で比較評価。最後に総評とベストバイ製品も紹介する。

ケーブルが外せるマニアック製品

ワイズテックの「moxpad MO-X6」は5000円前後という低価格ながら、リケーブル(ケーブル交換)対応というマニアックな仕様で登場した、e☆イヤホン推薦のダイナミック型[注1]製品。9mmドライバー[注2]を採用するほか、イヤーピースは耳の奥まで挿入できる3段重ね構造の「トリプルフランジ型」と通常タイプが付属している。2種類を使い分けられ、音の変化を楽しめる作りだ。

[注1]ダイナミック型はイヤホンの最も一般的な駆動方式。音声信号をボイスコイルを通じて振動板に伝えて音を鳴らす構造
[注2]ドライバーはイヤホンの音を鳴らすための機構で、大まかな音傾向を決める構造。現在はダイナミック型ドライバーとBA型ドライバーの2種類が多い
【音質の傾向】
今回の評価はトリプルフランジのイヤーピースで行った。トリプルフランジ型としては、高域を徹底して美しく聴かせる「美音系」。J-POPや女性ボーカルの歌声は抜群だが、低音はかなり控えめ。生楽器、特に小編成のクラシックには抜群に合う。なお、イヤーピースを標準タイプに交換すると重低音が鳴るが、音の解像感は数段落ちる。

【5つ星評価】
■高音 ★★★★★
■低音 ★★
■細部の表現力 ★★★
■空間再現力 ★★★★

【合う音楽ジャンル】 女性ボーカル、J-POP、クラシック
【ハイレゾ音源との相性】 ○

香港発・J-POPに合うイヤホン

VSONIC VSD1(コペックジャパン) 実売価格/4980円

「VSONIC VSD1」は、専門店e☆イヤホン推薦の、香港VSONIC社による低価格カナル型(耳栓型)イヤホン。ダイナミック型ドライバーのシンプルな構成ながら、イヤホンノズル部が可動式になっており、耳へのフィット感を向上させている。耳掛けで装着もできるイヤーチップも付属する。

【音質の傾向】
音のアタックが鋭く、メリハリを鋭く付けることで解像感を向上させているタイプ。低域の情報はぼやけ気味だが、ボリュームたっぷりに気持ちよく聴ける。J-POPやアニソンの音楽では、ボーカルの歌声とバックバンドの演奏の鳴らし分けも鮮明。クラシックを聴いても、ステージ上の弦楽器は個々の音を分離して鳴っており、空間の見通しも優れている。

【5つ星評価】
■高音 ★★★★★
■低音 ★★★★
■細部の表現力 ★★★★★
■空間再現力 ★★★★★

【合う音楽ジャンル】 J-POP、アニソン、クラシック
【ハイレゾ音源との相性】 ◎

ソニーのハイレゾ入門機

h.ear in MDR-EX750(ソニー) 実売価格/8800円

「h.ear in MDR-EX750」は、ソニーが2015年秋から展開する新ブランド「h.ear in」シリーズのカナル型イヤホン。長らく定番だった「MDR-EX650」(5280円)の後継機種にあたる。小型高感度の9mmドライバーユニットを採用し、再生周波数帯域は5~40kHz。ハイレゾスペックに準拠する。

【音質の傾向】
高域の伸びと低音のパワー感を兼ね備えた、力強く明瞭なサウンド。ハイレゾ対応らしく、華やかな高域情報を持つ。通常音源でも、シンバルの音の繊細さが再現されるなど、聴きどころも豊富だ。低音も沈み込むエネルギーがあり、クラブ系など今どきの音楽にもマッチする。中域の情報は並で高音が突き刺さるように感じるときもあるが、ジャズの艶やかな鳴りも再現できるなど、音源を聴き込むほど発見がある。

【5つ星評価】
■高音 ★★★★★
■低音 ★★★★★
■細部の表現力 ★★★★
■空間再現力 ★★★★★

【合う音楽ジャンル】 J-POP、ダンス系、ジャズ
【ハイレゾ音源との相性】 ◎

1万円切りハイレゾイヤホンの先駆け

HP-NHR11(ラディウス) 実売価格/9980円

ラディウスの「HP-NHR11」は2015年5月の発売以来、「再生周波数帯域5~40kHzまでのハイレゾ対応製品が1万円以下で入手できる」と話題になったイヤホン。13mm径ドライバーを搭載し、High-MFD(high magnetic flux density system)構造により感度を高めた設計だ。

【音質の傾向】
ズンズンと響かせる重低音の響きと、ハイレゾ対応らしい印象的に伸びる高域を持った派手なサウンド。特にディープな低音を求めるクラブ系は気持ちよく、情報量もある。低音重視なら、ロックも十分に合う。クラシックなどの静かな音源では中域が重低音に埋もれてしまい汎用性には欠けるが、低音志向のサウンドが好みならイチオシだ。

【5つ星評価】
■高音 ★★★★★
■低音 ★★★★★
■細部の表現力 ★★★★★
■空間再現力 ★★★★

【合う音楽ジャンル】 クラブ系、ロック
【ハイレゾ音源との相性】 ◎

ネットで評判の英国イヤホン

RHA S500(ナイコム) 実売価格/6380円

6000円台の価格帯で「音のいいイヤホン」としてネットで注目を集めているのが英国RHA社の「S500」だ。超小型のアルミニウム合金のボディーにマイクロダイナミックドライバーを搭載。イヤーピースは通常タイプの他に、耳奥まで挿入できる2段重ねのダブルフランジ型シリコンイヤーピースも付属する。

【音質の傾向】
金属の素材感がしっかりと出た、臨場感あるサウンドが特徴。高域は響きを付けながらパワフルに鳴らすタイプなので、特に女性ボーカルの歌声を楽曲の中で引き立ててくれる。低音はリズムの刻みが強めに現れ、空間の生々しい響きが伝わってくる。ジャズやクラシック、生楽器系の音楽も、弦楽器のディテールが強めに現れるなど、その音色にマッチした。

【5つ星評価】
■高音 ★★★★★
■低音 ★★★★
■細部の表現力 ★★★★
■空間再現力 ★★★★

【合う音楽ジャンル】 女性ボーカル、ジャズ、クラシック
【ハイレゾ音源との相性】 ○

ハイレゾ・高機能で注目を集める機種

SE-5000HR(ソフトバンクセレクション) 実売価格/8800円

「SE-5000HR」は、ソフトバンクセレクションが2015年11月に発売して以来、「1万円以下でハイレゾの基準を満たすコスパ高イヤホン」として注目を集めているモデル。ドライバーユニットを含むハウジング部を独立させたフォルムに、金管楽器をモチーフにしたデザインを採用。マイク・リモコンを搭載し、スマートフォンにも合う。

【音質の傾向】
音数の多い音源の情報をストレートに引き出し、同時に音のリズムの刻みも正確に効かせた歯切れのよいサウンド。J-POPやアニソンを聴いても音の分離具合が抜群で、中域は艶たっぷりに鳴らすので、ボーカル、ジャズとも相性がよい。空間の奥行きと立体感が表れ、ピアノの音色も美しい。低音については締まった上質なもので、必要十分だ。

【5つ星評価】
■高音 ★★★★★
■低音 ★★★★
■細部の表現力 ★★★★★
■空間再現力 ★★★★★

【合う音楽ジャンル】 J-POP、アニソン、ジャズ
【ハイレゾ音源との相性】 ◎

総評とおすすめ製品は?

冒頭でも説明した通り、5000~1万円の価格帯のイヤホンは「ハイレゾ」と「海外ブランド」が2大キーワードとなっている。

まず、ハイレゾ対応なのが、ソニーのh.ear in MDR-EX750、ラディウスのHP-NHR11、ソフトバンクセレクションのSE-5000HR。いずれもキレのよい高域再生を特徴とする。価格はいずれも9000円前後で、今回紹介したモデルの中では高額な部類に入る。

いずれも価格に比べて十分過ぎるほど高音質だが、ハイレゾ対応らしいサウンドにまとめ上げたソニーのh.ear in MDR-EX750、重低音志向でクラブ系との相性もよいラディウスのHP-NHR11、オールマイティーに高解像志向のサウンドを追求するSE-5000HRと、音質の狙いどころが異なるのが面白いところだ。

海外ブランドから選出した3モデルは、いずれも5000~6000円台とやや購入しやすいものが中心。専門店の扱いが中心になるだけあって、ユニークな顔ぶれがそろった。

香港VSONIC製のVSD1と英国RHA製のS500は、それぞれイヤホンの構造と素材にも特徴がある。どちらも繊細な高域再生ができる実力派で、ハイレゾ対応の製品とは異なる音のよさがある。

ワイズテックのmoxpad MO-X6は、標準のイヤーピースでは低音は出ないが、付属の別タイプに交換すれば低音再生をカバーできるのが面白い。イヤホンマニアが注目するリケーブル(ケーブル交換)に対応し、購入後にもケーブルを買い替えて音質チューンが可能と、マニア好みのツボを押さえている。1万円以下でこれだけ遊べるモデルが出てきていることからも、イヤホン市場の裾野が広がっていることを実感した。

折原のイチオシ

SE-5000HR(ソフトバンクセレクション)

選ぶのに悩んだが、ソフトバンクセレクションのSE-5000HRを推したい。ハイレゾ対応のスペックはもちろん、音楽ジャンルを問わない高音質さと万人向けのチューンが素晴らしい。次点はVSONICのVSD1。実売約5000円の低価格だが、素直にその音のよさに驚いたモデルだ。

(ライター 折原一也)

[日経トレンディネット 2016年2月5日付の記事を再構成]

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